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風雲八重城

「皆で集まるのマジで久しぶりじゃーん」


「ん、久しぶり」


「と言っても俺は、高宮さんと楓はいつもうちに来てたし、セントレアと椎名さんとはゲームで話してたしで、久しぶり感はないんだけどね?八重さんともスマホで毎日連絡取ってたし」


「そうだね、日にちが経つにつれて八重さんから彩雫への電話が長くなっていくの面白かったよ」


「だって、彩雫くんと会えないの寂しくて……」


「あれーゆりっちうちらはー?」


「もちろん、皆にも会えなくて寂しかったわよ?」


八重さんは変わらないな。


「それで、いきなりで悪いかもだけど……彩雫くん私の家に来て?」


「きたー娘さんを私に下さいってやつじゃね?さいだっちチャンスチャンス」


「むー、ずるい、私も、百合ちゃんの家、行きたかった」


「いやいや、ちょっとまて、え?本当になんでいきなり?」


流石に性急すぎないか?


「その、私は今まで家での習い事に興味なかったのに、私から叔母と母に色々と教えて欲しいと頼んだから……その本当に色々とあって、彩雫くんに興味を叔母が持っっちゃって……母も以前から気になっていたようで、今度読んできなさいと、きょうせ、じゃなくてお願いされちゃって……彩雫くんが良かったらでいいんだけど」


……強制?色々と怖いわぁ。でも、確かに八重さんにはお世話になってるし、八重さんのお母さんもいつも娘が入り浸っている友達、しかも男がどんな奴か気になるよなぁ。俺がその立場だったらめっちゃ心配するし。いつまでも逃げているわけには行かない。時が来た、ただそれだけだ。


「……行くか」


「ぷふっ、彩雫、さっきから間が多いね?大丈夫、本当は行きたくないんじゃない?」


「うっせぇ、八重さんいつ行く?」


「じゃあ、今日……」


「今日?!」


性急すぎだろ!


「いやいやいや、それはちょっと心の準備が……」


「あら?彩雫さん行きたいんですわよね?」


「そうそう、学年一かわいくて人気のあるゆりっちの家に行けるとかー行きたくないわけないっしょ?」


「そうだなぁ!」


準備も何もただお世話になっている友達の家に行くだけだ!そう、例え八重さんの家が厳格そうでも!傍から見たら娘がよくわからん男の家に入り浸ってる状況でも!その娘がヤンデレでも!何も問題はない!


「まー何を想像してるかは想像できるけどさーゆりっちのママ普通にいい人だし?安心して大丈夫見たいな?」


高宮さんがいうなら多少は安心できるけどね?懸念点が一つ消えただけであって他にも問題点はあるんだよな。


「え、今から行く?」


「うん、こっちに帰ってくるとき叔母も一緒に返って来たから……」


随分とアクティブな叔母様で……


「僕たちのことは気にしなくていいから」


「そうそう、たまには4人で話すのも悪くないし?」


「ですわ!」




~~~~~




「っし、行くか」


くそ、見慣れたはずの八重さんの家が風雲武城にもくっぱ城にも見える。そんなオーラを纏っている……


「さ、彩雫くん、そんな緊張しなくても大丈夫だよ?も、もしかして本当に娘さんを僕に下さいってやろうとして……」


「しないが?!まだ高校生なのに結婚前提にとか言い出したら怖いって」


「むぅ、私は別にいいのに……」


「はぁ、気が抜けたな。行くか」


「うん!」


中まで入るのは初めてだが……本当にすごい家だ。セントレアの家は大きくてまさに金持ちの豪邸って感じの家だったが、八重さんの家は昔からの名家って感じだ。武家屋敷のような日本家屋は石垣に囲われていて、庭は「ここ公園だっけ?」と思うほどに広い。まぁ、公園にしてはあの盆栽だとか、池にいるきれいな鯉だとか高そうなものがあるから、違和感なんだけどな?


「気を付けてね?あの盆栽とか、買うと1億円以上するから」


「マジかよ、そんなのが普通に庭にあるって俺なら怖くてできないわ」


「こう見えて最新の防犯設備が入ってるから……」


「なるほど」


確かにわかりにくいけど石に偽装されてるカメラがある。


門から数十秒かけて、枯山水のような、分かりやすく言うとケンケンパーする石みたいなやつをなるべく踏んで、砂利の模様が変わらないように進む。


「じゃあいい?」


ふぅ、俺ならできる俺ならできる……よし!


「行く『ガチャ』か?」


「ふぉっふぉっふぉ、来たな?中々愉快な顔をしとるのぉ、だが、ふむ……悪くない顔つきじゃな」


「はぁ、叔母様監視カメラで見ていましたね?」


「ちと、緊張しているようじゃったからな、ばばあなりのジョークよ」


「そういうことにしておきます、ただいま戻りましたお母さま」


「おかえり百合、この時間に帰ってくるということはそちらの方が、例の」


「はい、彩雫くんです」


「三矢彩雫です、やえ、百合さんにはいつもお世話に」


「むふ、百合さんって、っきゃ」


突っこむ余裕はない。


「ふふ、そんなにかしこまらなくてもいいわよ?色々と聞いているだろうけど、所詮は母と叔母ですから」


「いえ、すみません、本来であればもっと早めに来るべきだったのですが」


「とりあえずおあがりなさいな、そこで立って話すのもつかれるじゃろう?詳しい話は座りながらじゃ、この老骨に苦労を掛けんでくれよ?」


「ありがとうございます、失礼します」


「それにしても百合早かったのぉ」


「うん、早い方がいいと思って……」


……ふぅ、いきなりすぎてちょっとテンパったけど何とかなったな。冷静になると色々なものが見えてくる。


八重さんのお母さんは流石というべきか正統派の美人で「あらあらうふふ」という言葉がよく似合いそうだ。だが、そこは八重さんのお母さん。浮かべる笑みはどこか含蓄を含んでいそうでどこか怖さがある。おばあちゃんの方は……湯ばあば?


「それでは、改めて……百合の母の八重桔梗(やえのききょう)と申します」


「叔母の梅じゃ。百合が世話になっとるようじゃのぉ」


「三矢彩雫です。いえ、お世話になっているのはこっちの方です。娘さんには食事を作っていただいたりと遅くまで拘束していますので、本来であればもっと早くにご挨拶に来るべきでした……」


「どうせ、百合が押しかけとるんじゃろう?なんてったって桔梗(ききょう)も今の夫に同じようなことをしとったからな、……まぁその点は同情するがな?」


「でも、やっぱり親としては相手がどんな子か気になってしまうものなの」


それはよくわかる。もし娘が初対面でいきなり「チョリース」とかいう金髪のチャラ男を連れてきたら絶対に許さんしな?たとえ、娘に恨まれようとも引きはがそうとするだろう。


「実際の所、どうじゃ?うちの孫はかわいいじゃろ?」


「まぁ、そうですね」


「料理も美味い、ここまでの器量を持つ奴はそうおらんじゃろ?」


「ですね、いつも助かってます」


「で、お主は百合をどう思っとるんじゃ?結婚するのには中々いい相手だと思うのじゃが」


「そうねぇ、もう新婚のような生活を送っているのならよくわかるんじゃないからしら?」


やばい、三世代で俺を囲いに来てる。下手なこと言うと言質を取られそうだ。


「そうですね、皆、百合さんのことは好きだと思いますよ?椎名さんって言ういつも仲よく遊んでいる人が居るんですけど、三矢くんだけ百合ちゃんの家に行けるなんてずるいって言ってました。あ、もしよければ、今度みんなで遊びに来てもいいですか?」


「うふふ、いいわよ?」


「ふぉっふぉっふぉ、望むなら色々と指導をしてやってもよいぞい?」


「そうですね……セントレアなら望みそうだ」


「ほぉ、であれば今度連れてくるがよい……ふむ、結構じゃな。いやはや、色々と聞いてしまってすまんな。百合は自分のことを全然語らないものでな、気になることを矢継ぎ早に聞いてしまった」


百合さん?もう少し話しよ?


「最低限の話はしてるし……」


「わし、彩雫くんについてしか知らんのじゃが?」


「そうねぇ。鳳花ちゃんは家族ぐるみだし知っているけどそれだけよねぇ。だから、その、椎名さんとかセントレアさんについても詳しく知りたいんだけど」


「やえ、じゃなかった。百合さん本当に何も話してないの?」


「……少しだけ」


「どの程度?」


「と、友達って」


おい、実質何も言ってないじゃん。


「というわけなの……だから色々と気になっちゃってね?」


「そういうわけなら話しますけど……こっちも一つ聞いていいですか?」


「そうじゃな、何でもよいぞ?」


ずっと前から疑問に思っていた。八重家ともあろう大きな家が八重さんという所詮高校生の精神状態に気が付いていないのか?と。友達と言える存在が高宮さんしかおらず、趣味もなく、ただつまらなく日常を生きるだけ。そんな状態に気が付かないのか?と。


でも、八重さんのお母さんやおばあちゃんと会って確信した。少なくともこの2人は気が付かないはずがない。じゃあどうして気が付いたうえで放置していたのか、聞いていいものではないかもしれない。でも、知っておいた方がいい気がする、知りたい。だから、聞く。


「百合さんが悩んでいたことを知っていて放置していたのはなぜですか?」




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