コミケは戦場って言うけど、そんなでもないよ?
「コミケですわー!」
「相変わらず凄い人だな」
「話には聞いてたけど、本当に満員電車みたい!」
「ん、舐めてると、ケガする。気を付けて」
待ちに待ったコミケ当日。
「私たち今からこの列に並ぶの?」
「まぁ、普通ならな。コスプレ参加者も同じ列に並ぶ」
俺もいつもならこのビックサイトから隣の駅まで続くような長い列に並ぶところだ。前のおじさんがめっちゃ臭いの我慢して炎天下の中数時間ただただ並ぶ。でも、今回は違う、並ばなくていい。
「わたくしたちは今回出店者側で申し込んでありますわ。モンハル自体わたくしのお父様の会社の傘下でして……是非うちのブースで撮影会を行ってくださいとこのとでして」
「ま、つまり公認レイヤーってことだな。お金ももらえるらしいぞ?」
「ん、ものすごい、助かる」
「でもうちらずっとそこで撮影会?するわけじゃないっしょ?」
「こちらがタイムスケジュールになりますわ!」
ふむ、午後に1回顔出すだけでいいのか。
「午前は有名なレイヤーさんにすでに頼んでいるようですわ」
「なるほどね」
「ですので、行きたいサークル等あるようでしたら午前中に行っても……」
「いい、せっかくなら、最初から、コスする」
「だな、最初にいい場所取らないと場所取りめんどくさいんだろ?」
それに、今回は初参加の八重さんもいるしな。高宮さんは過去に来たことあるみたいだし、楓は俺が連れてきたことがあるが、コミケ常連ってわけでもない。今回は空気を読んでみんなで楽しむことに全力を尽くそう。
「それでは行きますわよ?改めて熱中症、盗難には気を付けてくださいまし?コミケは戦場ですわ!」
関係者受付を通り南エリア更衣室を目指す。
「結構、人、いる」
「そうなんだよ、関係者入場と言っても人は結構いるだろ?」
今回は別の仕事が忙しいようで両親ともにサークル参加はしていないが俺は両親の仕事の関係上関係者受付で行くこともある。初めて来たときは関係者多くね?と驚いたものよ。
「では、ここでひとまずお別れですわね。着替えたらまたここ集合ですわよ?」
「おう、わかった」
コスプレ参加者は更衣室を利用しないと行けないし、もちろん男性と女性は分かれている。
「じゃ、楓行くか」
「うん、この時間でもやっぱり更衣室利用者いるんだね」
「それな。俺らが特別ってわけじゃないし、関係者でコスプレしてる人がたくさんいてもおかしくはないが……え?女性いない?」
「うん、ぱっと見分からないよね。でも、あの人もあの人もしっかりとした男性だよ?僕が保証する」
「まじかよ」
楓が言うならそうなんだろうけど、ちょっとドキッとするわ。まぁ、関係者で来るぐらいだし、仕事としてコスプレが出来るくらい完成度が高い人が多いんだろう……その中には女装する人もいるよな、そりゃあ。
「俺らも早く着替えるか」
「そうだね」
っと、着替え完了。他の人たちは鏡とか使ってメイクしてるけど俺らは服を変えるだけだからな、楽なもんよ。ま、それでも、女性陣はもう少し時間かかるとは思うけどね?
「ごめん、お待たせ!」
「いやー結構手間取ったし」
「……おう、やっぱりみんな似合ってるな」
改めてみるとやっぱりみんな似合っている。実際は頭装備つけるから目立たないだろうけど、今は頭装備を外してるからすごく目立つ。セントレアの金色のロールした髪と金色の装備からくるオーラ、八重さんのスタイルと雰囲気に合わないはずなのになぜか違和感を感じない、もこもこしたかわいい装備、椎名さんの低身長とギャップを感じるめちゃくちゃごつい装備。そして、存在感の鬼、高宮さん。
「ありがと、彩雫くんもかっこいい!」
「そりゃどうも」
「僕は?」
「もちろん、かえでっちも似合ってるし?前も思ったけど、なんか正統派じゃない感じが性格をいい感じに表してる感じ?」
まぁ、こいつの防具トラップ用だからな。マイナーなのにゲームだとしっかりと活かしてくるから……そりゃあ、性格的に似合うよな。オリジナル装備といっても過言ではない。
「おーっほっほ、すでに注目を集めていますわね!こちらで人を集めてしまいますと迷惑ですわ!早速、コスプレエリアに行きますわよ!」
迷惑にならないように縦になって歩いていく。
「なんか、ドラクエみたいで笑えてまじ笑えるし」
「確かに」
さっきからめっちゃ見て笑ってるやつがいるのはそういうことか。そりゃあ笑うわ。真面目なシーンで「エジプトにさぁ行くぞ!」っていきなりやりだしたジョジョを見たときと同じ感覚になるわ。え、なになに?ってなるわ。
「杏華、大丈夫そう?」
「うん、大丈夫。ありがと」
よかった、人の視線苦手みたいだしちょっとした懸念材料だったけど安心した。
「だから、大丈夫、って言った。じゃないと、コスプレなんて、しない」
そりゃそうだ。
「着きましたわよ」
やっぱりこの時間だと人があんまりいないな。皆サークルで新刊買ってるだろうし、今のうちに場所とっちゃお。
「あれ、やぐるまきくさんですか?」
「あら?ななこさんじゃないですの、おひさしぶりですわ!」
「やぐるまきくさんが合わせなんて珍しいですね」
「リア友とコスすることになりましたの!」
「え、リア友なの?!」
「ですわ!」
「初めて見る顔だとは思ったけど……レベル高すぎじゃない!私ななこって言います!」
「コスプレ友達ですわ!」
友達……ジャンプ、マガジンの表紙常連、SNSフォロワー100万人越えのななこさんがねぇ。
「有名なん?まぁ、せれあっちの友達ならうちらも仲良くなれるっしょ!うちは高宮鳳花、鳳花でいいし?」
「鳳花ちゃんね?うん、よろしく!」
「ななこさんまじきれーなんですけど。肌の艶とか張りがだんちじゃん。やばいよ、ゆりっち負けちゃう」
「別に勝負はしてないけど、負けない。彩雫くんは渡さない」
「え、どうしてそうなった?」
「だって、さっきから彩雫くんななこさんと目合わせようとしないし」
「うぐ、いやなぁ、いきなり目の前にいつも見てる人がいたらそりゃあ何話したらいいか分からなくなるだろ?」
「ん、それはしょうがない。オタクは認知されたくない、もの」
「あー八重さん、気にしなくていいよ。彩雫も椎名さんも厄介オタクなだけだから、それに今更彩雫が他の子になびくとも思えないしね?」
「厄介オタクって何だよ、事実だけどさ」
「あっはっは、やぐるまきくさんいい友達だね」
「ですわ!自慢の友達ですの!」
「写真撮ってもいい?」
「大丈夫ですわ!じゃあみんな行きますわよ?」
「「「「「「レッツモンスターハンティング」」」」」」
『ドーーーン』
っふ、決まった。PVで流れた戦隊もののような登場シーンの再現。完璧だ。
「あっはっは、本当に最高!うん、おk!SNSにあげてもいい?」
「大丈夫ですわ!」
「ありがとう。そろそろ私も準備しないと……」
「今回はコスプレ参加しないんですの?」
「するよー。サークル先に見てから企業ブースに戻る途中にやぐるまきくさんを見かけたから話しかけちゃった」
「そうだったんですのね」
「うん、じゃあ私は行くね。みんな楽しんで?じゃあまた」
ななこさんSNSではよく見てたけど実際に話せるとは思ってなかったな。
「すごい、きれいだった、やぐるまきくより、フォロワー多いのも、わかる」
「うぐ、ですわ。わ、わたくしはほら、コスプレ事業の方に力を入れておりますので」
「まーめっちゃいい人だったし?ゆりっちが警戒するくらいの美女なんてマジ激レアっしょ」
「そうですわね、それは認めますわ」
そうだな。認めることは成長の一歩だ。まぁ、俺は露出の違いだと思うけどね?セントレア原作に忠実だけど露出は抑えてあるキャラクターしかやらないからな。俺はセントレアのスタイルの方が好きだけど、近年のコスプレレイヤーに求めてるものが露出の人は多いし。完成度で見てる人って意外と少ないんだよ。
その分セントレア、やぐるまきくはクオリティの高さが売りだ。ま、ガチ勢以外からの注目を浴びにくいってことだな。
「周りに人増えてきましたわね、さぁここからが本番ですわよ!」




