彩雫のかっこいい姿みたくない?用意しといたで!
「嵐の後には快晴が待っている。今日は平和だ」
「もう、両親を嵐なんて良くないでしょ?」
「事前に言ってくれれば歓迎するよ?台風だって来てるから分かるじゃん?でも、通り雨の方がたとえ雨量が少なくても厄介なのと同じように突然ってのは面倒臭いんだわ」
「ごめんねー今日も来ちゃって」
「……昨日も来ただろ、母さん」
昨日も聞いた声だな。はぁ、嵐再来か。
「はい、百合ちゃん約束のアルバム」
「あ!やった!ありがとうございます!」
「ふふ、いいのよ」
俺の目の前で闇の取引するのやめてもらえる?
「父さんは?」
「今日は仕事、会議があるみたいで休めなかったのよ」
「で、母さんはなんで?」
「あら、来ちゃいけなかったかしら?」
「まぁ、別に俺はゲームしてるだけだからいいけどさ」
「彩雫、百合ちゃん置いてずっとゲームしてる訳じゃないわよね?」
「いや、それは」
「これはちょっとお説教かもねー」
「私は大丈夫!彩雫くんといるだけで十分!」
「そうは言ってもねー。そういや、食材の分お金払ってるわよね?」
「それはさすがにな、ご飯作ってもらってるし全額払ってるよ」
これで払わなかったら俺本物のヒモになっちゃうからね。そこまで落ちぶれていないって。
「むぅ、私は別にいいのに」
こっちが気にするから。
「彩雫課金もしてるわよね?」
「まぁ、してるな」
「ちょっと彩雫のタンス見せてもらうわねー……やっぱり」
何だよ。
「もうちょっとしっかりした服買いなさい!百合ちゃんも彩雫がかっこいい方がいいわよね?」
「彩雫くんはどんな時もかっこいいよ?……服のセンスはあれでも」
最後の言葉がいちばん刺さる。
「そんなにダメか……でも金全然ないから買うにも買えないぞ?」
「食費2人分だして課金もしていたら渡している分じゃ足りないわよねー。という事で、お小遣い少し増やしてあげるから1人でゲームやってないでちょっとは百合ちゃんと服でも買いに出かけてきたらどう?百合ちゃん、任せてもいい?」
「はい、新菜さん!」
買ってるだけだし最近新しい服買ってなかったしお金貰えるなら買いに行くか。
それに、いつもオシャレな八重さんならダサい俺を何とかしてくれるだろうからな!はっはっは!……はぁ。
……八重さんいるのに1人でゲームしてたのも事実だし。
良くないのわかってるよ?でもさ、八重さんも気にして無さそうだし、俺が気にしてたらゲームやる時間ないじゃん?とは言ってもやっぱり良くないことしてる自覚はあるから、八重さんの好きな事しようと思ってた所にこれだ。いい機会ではある。
「 八重さん、行きたいところとかある?」
「彩雫くんはいつも行くお店はないの?」
「ないな、いつもコラボ系か適当に安いの買ってるだけだし」
「はぁ、全く誰に似たのかしら……近くに出来たショッピングモール、そこなら商品券も追加であげられるしご飯も食べられるじゃない。行ってきたらどう?」
「そうだな、なんでもあるだろうし、ここら辺ならそうなるよな」
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「うわー人が多いな、今日平日だろ?」
「夏休みだからかな、学生が多いかも」
ちょーっと行く場所間違えたか?まぁ、いいか。細かいことは気にするなの精神で行こう。
「八重さんはよく来るの?」
「あんまり、かな。必要なものがあれば買いに来るけれど、ウィンドウショッピングとかしないから、あんまり」
「同じようなもんか」
「彩雫くんは何を買いに来るの?」
「俺は店舗特典ついてるラノベとか漫画買いに来たり、たり、たり……それだけだな」
「あんまりだね?」
「そう、あんまりだな」
冷静に考えたらショッピングモールに来る理由なんて、服を買うくらいしかないよな。あ、でも最近はレジャー施設とかも出来てるし友達と来るのも楽しそうだけど。あれよ、VR施設とかな?陰キャも陽キャも等しく楽しめる最高の設備だ。
「彩雫くん!あのお店とかどうかな?」
「お、行ってみ……いや、流石に髑髏柄はないかな」
「彩雫くんなら結構似合うと思うんだけど」
「いや、似合ったとしてもそんな服着て出歩けないから」
俺は中二病とはいえ、髑髏は卒業したからな。毎日身に着けることで髑髏に精神が入り自分だけの髑髏になる。そんな魅力はもう俺を魅力するに至らない!
「もう少し普通のやつがいいかな」
「じゃああのお店がいいかも!」
「お、いいじゃん」
ちょっと大人びた雰囲気のお店だな。
「彩雫くんこのパンツとかどうかな?」
「ちょっと、動きにくいな。太ももがパツパツしてるのがなんか違和感で」
「動きやすさを求めるなら……こっちかも、テーパードパンツ!」
「お、いい感じだな」
「うん!上もはい、これ」
「白Tか。普通だな」
「もう、普通でいいの!彩雫くんが普通じゃないのが好きならそっち選ぶけどそうじゃないでしょ?」
「まぁ」
なんかおしゃれってどれだけ自分を見せるか見たいなね?普通じゃおしゃれじゃなくて普通じゃん?当たり前のこと言ってると思ってたけど、そうじゃないんだな。普通をうまく自分に当てはめてうまく使える人をおしゃれっていうんだな。
「うん、いい感じ!」
その後も、いくつものお店に入ってこれじゃない、あれじゃないと言いながら服を探しまわる。
「うん、これでいいかな、いい感じ!」
「おぉ、我ながらなんかかっこよく見えるな。こうしてみると確かに過去の俺はダサかったんだな」
「喜んでもらえてるなら良かった!無地の白Tにミッドナイトブルーの麻混バンドカラー長袖シャツを合わせて、パンツはテーパードパンツにすることで余裕のある大人感を出して、銀のアクセサリで高校生感を演出したの!」
うん、全然わからん。ミッドナイトブルーってのがまぁ紺色みたいなものだとはわかる。バンドカラーって何?ピンク、黄色、青、赤?あ、それボッチなロックか。
「麻混バンドカラー長袖シャツの麻混は、麻と綿を混ぜており挙げた生地のことで、バンドカラーシャツは立ち襟で帯状の襟が付いたもののことね?」
音楽のバンド全然関係なかったな。結束バンドのバンドだったな。
「テーパード?パンツは?」
「太ももがゆったりしていて下に行くほど細くシェイプされてるパンツのこと。彩雫くんゆったりめのが好きそうだったからいい感じでしょ?」
「おう、めっちゃいいわ。流石八重さんだな。こういうのも家で習うの?」
「流石に習わないかな。でも、皆の理想の八重百合を演じるためにはファッションも必要でしょ?」
「なるほど、確かに」
これで八重さんがダサかったら幻滅物だもんな。そんなことで幻滅されないと思うけどね?なんかいやだよな。
「この後どうするか、そろそろ飯でも食べる?そういえば前に高宮さんがここの鈴木のハンバーグ美味いって言ってなかった?」
「高宮さん……あ、三矢くんと、百合ちゃん」
「ん?椎名さんじゃん。どしたの?」
まさか、たまたま出かけた日に同じく引きこもりの椎名さんと出会うとはな。そんな期間開いてないはずだけど久しぶりに会ったかのような喜びがある。
「杏華1人?」
「ちょっと、お母さんに、洋服買いに行きなさいって言われて」
「ブルータス、お前もか……」
「お前もかってことは、三矢くん、も?」
「あぁ、どうよ?この格好。八重さんにコーディネートしてもらったんだけど」
「かっこいい」
「やっぱ?椎名さんにそう言ってもらえると嬉しいな」
「流石、百合ちゃん。だ彩雫が、かっこよく見える、なんて」
「杏華ちゃんありがとう!」
おい、なんだその呼び名。え?もしかして公認の事実なの?俺いつもそんな名前で裏で言われてたの?泣くよ?




