【第四話】全ての始まり②
失敗したと思ったら思わぬ成功に繋がることってありますよね。
今回も楽しんでくれれば幸いです。
やばい、え、今俺地声のまま配信始めてた…?
やばいやばいやばい。まさか俺のもっとも恐れていた事態が起こるなんて、
俺は自然な動きでボイチェンを付け直し、なんとか誤魔化そうとする。
「えぇ?みんなどうしたのぉ?♡♡」
しかしそんなことをしたところで二万人の目は欺けまい。
○おい、お前本性出せよwww
○がぶって男だったんか、なんかショック
○↑ガチ恋勢ww
○なんかジジイみたいな声してたな笑笑笑笑
「うわ…終わった。」
○心の声漏れてんぞwwwwww
○迫真すぎて草生えるww
○僕のお金返してくださいナ‼️‼️
○これ地声だったらどんなふうに言ってるんだろうww
○↑想像もしたくねえwwwwwwwwww
しばらくとんでもないチャット流れが続いていたが、こんなコメントが見えた。
○もういっそあの声でいいんじゃないの?
「え、ボイチェン付けないで行った方がいいんか?」
○とうとう吹っ切れたwww
○アバターとのギャップ萌えみたいな笑笑
○お金返してくださいナ‼️‼️
○いいよ!方向性変えていこう
…なんだ?コメントの多くがどちらかと言えば批判というよりはなんていうか、こう、
面白がってるようにみえる。
一か八かの賭けで、ボイチェンを外し喋ってみる。
「ざぁぁぁあこ♡」
○きめえwwwwwwwwwwwwwww
○アバター可愛いのにこいつ…っwww
○俺こっちの方が好きだわwww
○犯罪者の声やん笑笑
○がぶりえる罪とか言ってたけど本当の罪人がぶ本人で草www
おぉ…?割と反応が悪くない。これは…?
「もういっそこの方向でやってく?♡」
○だからその口調諦めろwwwwww
◆えっ、ついにがぶさん吹っ切れたんすか?ww()
○しぐちゃん!?!?
○やべえしぐちゃん参戦したwwwwwwww
○「ついに」ってことはしぐちこのこと知ってたんやなw
やべえ最悪とも言えるタイミングでしぐちゃん来ちまった!!!!
そういえばあいつ明日配信見に行くとかなんとか言ってたな…。
俺は恥ずかしさのあまり発狂する。
「どうしてだよおお!!!」
○カイジやめろwwww
○ガイジな
○↑うめえwww
○おい待て同接wwww
○50万!?!?!?
○登録者数5万増えてるぞwww
…なんだこれ。普通ならこれ炎上案件不可避なはずなのだがものすごく評判がいいな…?
このときの俺は恥ずかしさより、嬉しさの方が強かった。
ボイチェンという文明の利器に頼らず、
ありのままの自分をみんなが評価してくれているという事実に
俺は表現し難い満足感を得ていたのだ。
俺はもう一度ボイチェンをONにする。
「奴隷ちゃんみんなどうしたのぉ?♡変な夢でも見たぁ?
飼い主さんが添い寝してあげようかぁ?♡」
○ジジイと添い寝はまじ勘弁wwwwww声可愛いけどもww
○可愛いんだけど、なんか、こうw
○新たな武器手に入れたなお前www
○やばい、俺本気でお前のこと推そうと思いかけてるww
○おなじくww
○同志よ…
なんだこれ、楽しいぞ!?俺にとって今日は最悪の日であり、最高の日でもあった。
こうして配信を終えた後に飲むレモンサワーは、いつもの倍は美味しく感じられた。
俺はふとTwitterのトレンドを覗いてみる。
「ふふん…は!?」
まじかよ…。「がぶりえる・るーらー」のタグは
Twitterトレンド国内どころか世界1位になっていた。
その大方が肯定的な意見であった。
ありのままの俺を受け入れてくれたリスナーたちに、俺は一生ついて行こうと決めた。
「明日も頑張るか!」
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読んでくださりありがとうございました!次回をご期待ください!