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3/3

圧倒的希望

「まだ諦めるな」




上から降ってきたその声に、僕は茫然と首をもたげた。

目に入ったのは黒髪と、不自然なまでにボロボロな衣装___


「キミ、は……」


エルガン・ダークライト……何故ここに?

…いや、そんなの、どうでもいい。そんなことより……


「あきら、めるな…だって……?僕の、この状態でっ!!?」


昂ったまま落とし掛けた彼女の『首』を、僕は慌てて抱き直す。

ああ…ダメだ。ごめん叔母さん…せっかく払った泥がまたついちゃったよ…ゴメン、ゴメンね?ただでさえ、血が流れて……肌が、白い…のに…ッッ


「ひぐっ……エグッ……!」

「だから、諦めるなと言っただろう」

「ごめ……おばさ…ゴメ……」

「おい、話を聞け!!!」

「これ以上何を聞けって言うんだよ!!放っといてくれよ、部外者だろ!?」


その瞬間。髪を鷲掴まれ引き上げられる。

目の前に来たエルガンと視線がかち合い……爛々と、紫に輝く両眼を見た。


「首をよこせ。もう一度、ソイツに逢いたかったらな」




「……ハ、」


一瞬、何を言われたか分からなかった。もういちど、あう…?何を、どうやって???


そうこうしているうちに、エルガンが叔母さんを取り上げた。

そして彼女の身体をきれいに並べると…輝いていた紫の瞳から同じ色の光が溢れ出し、彼の全身を包み込んだ。叔母さんの身体も、光始める。そんな紫の光が集まって…陣を描いた、その刹那。熱い光が迸り、叔母さんの身体を塗りつぶした!

その光が収まると…大量の血痕が、消えていた。


「…え?」


消えている。あれだけ生臭かった血の匂いも、服のほつれも、体中にあった噛み傷も…!


なにより、胸が上下に動いている…叔母さんが、息してる?


「ッ!!」


僕はハッとなり、駆け寄ると…意を決して、そのステを見た。

コワくて怖くて仕方がなくて、見ないようにしてきたそのステは___


<ミキティ・フリーディヒ>気絶

HP:100/100 MP:250/250

種族:ヒューマン

属性:なし

スキル:<火炎魔法・下><魔力操作・中><速記魔法・中><魔法結合・壬><杖飛行>

加護:なし

特記:なし


「き、気絶……!?」


思わずステータスを二度見する。何度目を擦っても、そこには『気絶』という字があった。


「どうだ?俺様の力があれば___この世で望めぬこと等、無いぞ?」

「!!!」


望めぬ、こと、など___?


(よっしゃ、決まった!!どうよこれ、なんかカッコイイボスムーブだろ!『望めぬ』なんか古語だぜ、古語!?いや~こっちの言葉勉強してよかったー!!)

「………。」


………僕は、ゆらりと起き上がり、エルガンの前まで近寄った。そして___


「これまでの数々の非礼……どうか、どうかお赦しください…」

「え、おう…えっ!?」


僕は、片膝をついて…深く、深く頭を下げた。




ファイヤー・フェンリルと書かれた魔獣。僕の叔母さんを襲った魔物こと、<H3169>番。


そう___奴には、()()があった。


それもやけに記号チックで、無味乾燥な番号名。なにより、特記に書かれていた謎スキル…裏に人を、組織を思うのは、ごくごく自然なことだろう。

あれは、事故でもなんでもない。確実に狙った奴がいる。確実に…僕の大事な人を、襲うよう仕向けた奴がいるッ!!


ぜッッたいに許さない…!!!


復讐する。ああそうだ、復讐だ。こんなことした奴らの正体を根こそぎ暴いてやり返してやる。今の叔母さんは生きているけど、そんなの関係ない。首がもげて、腹が抉れる恐怖を…絶望を、痛みを思い知らせてやる!!


でも、そのためには___


ちらりと斜め上を見る。裏にあるだろう、強大な組織。そんな奴らを打ち砕くには……チートの一つや二つじゃ足りない。この、戦力の塊を、みすみす逃す訳にはいかない…!

そのためには、縁を付けないと。ただ感謝するだけじゃ足りない。コイツの厨二心に漬け込んで、何としてでも懐に入る。部下がどうのとか言っていたから、それらしい部下を演じきってやる!<読心>スキル、フル活用だ……!


「貴方様の実力、感服いたしました。この恩は、感謝や謝罪などではとても…とても返しきれるものではございません…願わくば、この身の全てを捧げさせては貰えませんか…!」


僕は顔を上げ、エルガンを見た。さあ引っ掛かれ……厨二病!!


「(こ、コイツは、まさか…夢にまで見た……!『俺の仲間になります』パターン!?)…フッ、いいだろう。その申し出、受けてやる」


いよっしゃあああっ!!


「我が軍門に降るのだ……証に、我が聖名(みな)を直々に教えてやろう!」


聖名…?そっか、言われてみればエルガンはまだ名乗っていなかった。

僕が知っているのはステータスのお蔭だし、かといってそれは言いたくないし…うん、これから怪しまれないためにもちゃんと名前を聞いておこう。


「よいか、しかと聞きたまえ……我が真名(しんめい)は__





__<♰クロウ♰>だ」

「…ク、ロウ」


いや全然違うじゃん!!


というか妙な十字がチラつくんだけど…なにこれ気のせい?

いや…いや、そんなことを気にしている場合じゃ無い。息を吸って切り替える。

やってやる。コイツの遊びにだって何だって付き合ってやる。…これ程の力があるのなら、奴らが目を付けるかもしれない。これ程の強さがあるのなら、奴らの尻尾を掴んだときに根絶やすための駒にできるかもしれない……!いや、そうしてみせる!!!


「この、イアン・フリーディヒ。生涯をかけて貴方様にお仕えいたします___」


ボクは、こいつを利用する____!


「___クロウ様」

「違う」

「…はい?」


え…えっ、何が???


落ち着け僕にはテレパスがある!なぁにが(呼び方なってねぇな…それじゃあフツー過ぎんだろ!やっぱコイツ入れんのやめるか…)だよ!!意味不明だよ何がダメなの!?


「Mr.クロウ…?」

「違う」

「ク、クロウ殿!」

「だから違う!」

「……crow様」

「違う違う、そうじゃねえ!!」


ま、まさか…


「♰クロウ♰…様?」

「そう!それッ!!!」


いやなにで判断してるのさ!!!♰なんて発音してないよ!?

あ、もしや<天啓>スキルを使って…?いや使い道他にもあるでしょ!?ぜったい宝の持ち腐れだよそれッ!!


というか僕が察してなかったらどうするつもりだったのさ!!バカなの!?


「(よしよし、以外と何とかなるもんだな)そうだ…これからはそう、呼ぶように」

「ハッ!」


うん、馬鹿だ。『意外と』の漢字間違えるレベルの大馬鹿だった。それ漢字変換しくった奴じゃん…




何はともあれ、僕はエルガン___♰クロウ♰様に仕えると決めた……全ては、復讐のために。





そうして目が覚めた朝。僕にとんでもないことが起きていた。


<イアン・フリーディヒ>フィクサーの呪い

HP:50/50 MP:なし

種族:ヒューマン

属性:影

スキル:なし

加護:<幼子の女神>キシン

特記:転生体。特典スキル<読心><鑑定顔>あり





___HP:50/50___





の、呪いが改善してるううううううううううううううう!?

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