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④ ストーカーから守ってくれた私のナイトは…?

「さぁ、本番の日がやってまいりましたぁ――!! おじいさん杯川魚すくい大会の開幕で――す!」

「「うおおぉぉぉ!」」

 男子たちが協力しておじいさんをここ、川辺まで運んできてくれたの。そして、いい感じに木製リクライニングベッドに寝せているので、盛り上がりは伝わるでしょう。


「ルールは簡単! この大型ポイで川魚をすくって自分の瓶に入れてネ! いちばんたくさんすくった人の優勝! ズルはしちゃだめですよ!」

「「うおおぉぉぉ!」」

「優勝者には賞品として――……何も用意してなかった。おじいさん杯だから、おじいさんの熱いキッスで!」

「「しょぼ――――ん……」」

 うっわ、みんなテンションだだ下がりだよ。

「当たり前ピコ……」

「じゃあしょうがない、私のキッスで! あ、ほっぺね! その、ファーストキスは、とっておきたいから……」

「「うおおぉぉぉぉ!」」

 誰かマリーヤたんかわゆす~~って言った! 聞こえた!!



「はいっ! 優勝は――、ピータ~~ン!! おめでとう~~!」

 けっこう盛り上がったよね。絶対ズルして自分の手で捕まえようとしてる輩出てくるけど、これが見た目的に盛り上がっておじいさんに分かりやすかったし。けっこうみんないい年だからさ、こういうことでもない限り、集まってはしゃぐなんてしないもんね。集まる時は飲み会ばっかでさぁ。

「ねぇキッスは~~?」

 えーっちょっとお姉ちゃん!

「「キッス! キッス!!」」

 女子ぃ~~!

「やだマリーヤちゃん、顔真っ赤~~!!」

「マリーヤ困ってるじゃないか! ここは代わりに僕が……!!」

 スチーブン! それ絵ヅラ的にも得する人いないから!

「いいのよスチーブン。でもあの、それは後日、また日を改めて! はいっ、今日はみんな撤収! みんな今夜は魚料理、楽しんで!」

「もったいぶるなピコ……」

「いや私、頬ですらしたことない!」

「そんなの挨拶ピコ……ほんとに帰国子女ピコ?」




「おじいさん、楽しかった?」

 ……外行って疲れたかな。返事はないけど、楽しかったってことで、いいよね。

「ピコピコ、私そろそろあっちのルートに行こうと思う」

「責任持って看取るんじゃなかったピコ?」

「看取りは、マリーヤ本人がするのがいいと思う」

「まぁそれなら、今すぐじゃなくてもいいピコね」

「ところでさ、川魚すくいの間ずっと、物陰からのじっとりとした視線を感じたんだけど……。あれ何だったんだろう……」

「不気味ピコねぇ」

「スチーブンに聞いたら、隣村からのストーカー・ボビイ(18)だっていうんだけど」

「正体割れてますやんピコ~~……」




 後日、日暮れ前、私はピータンに呼び出された。

「どうして森?」

「だって俺、大工だし」

 仕事中かい。まぁほぼ盆と正月しか休みがない人たちだもんね。

「私に何の用?」

「君が後日と言ったのに、祝福のキスをくれないじゃないか」

 えっ。それで呼び出しですか? 恥ずかしいんですけど――……。

「私のキスが欲しいの? 私のこと振ったくせに」

 いや、ピータンなら全然いいんだけど、なんで私こんな態度とっちゃうかなぁ。

「ああ、別にもういらないよ」

「だったらわざわざ呼び出さないで! バカにしてるの?」

 ……あれ、なんかピータン笑った? なんかバカにされるようなこと、私した?

「いや、君とはそれなりに長い付き合いだけど、そんな表情や態度を見せてくれたのは初めてだ」

「えっ」

「やっと見せてくれたと嬉しくてさ。君はみんなに囲まれて、やっぱり変わらず魅力的だけど、今ならいい友達になれると思うんだ」

 友達……。

「そ、そうね、友達なら、何人いてもいいんだもんね。これからもよろしく」

 なんか、もやもやする……。でも悟られてなるものか。平然を装い、握手を求めよう。

「え?」

 ピータンは私の出した手を引っ張った。すると互いの顔が至近距離。

「ほら、よろしくのキスは?」

「~~~~~~」

 くれてやったわ!

「優勝おめでとう! これからもよろしく!!」

「はい、ありがとう」

 なにそのご馳走様みたいな顔! たかがほっぺにキッスじゃない!


 私は自宅まで走った。なんでよ、たかがほっぺにキッスなのに、もうドキドキが止まらない!

 シャクだから、早いとこあっちのルートに行こう!

「男とふたりきりになっただけでドキドキできるってエコだピコ……」

 ピコピコいたんかい!



 もう辺りは暗いけど、家はすぐそこ。にも関わらず、ぬっと現れた大きな影。

「マリーヤァ……ハァハァ」

 えええ誰ぇ??……たぶん……なんだっけ、ポピイ(18)?

「マリーヤァおいらと(ピーッ)で(ピーッ)が(ピーッ)に(ピーッ)だぜェェ!」

 ピー音入り過ぎてまったく分かりません! 全年齢対象のソフトにこんなキャラ出すなっ。

「ハァハァハァハァ!」

 多分これ、マリーヤが「きっしょ……」とか言いながら見下しても悦ばれるだけだろうなぁ。どうしよう、貞操の危機。下手したら命の危機。とか言ってたら襲い掛かってきた――っ!

「誰か助けて!!」

 私は目をつぶった。そして再び目を開けたら、私の前に出て奴に立ち向かう、男性の後ろ姿が……。

 その男性は見事、ハァハァ言って襲い掛かってきた人物を撃退した。

「あ、ありがとう、誰……」

と聞こうとしたその時、その人は倒れた。慌てて彼を起こそうとしたら――……。


「えっ?? おじいさん!??」

 摩訶不思議なことが起きた。私を守ったその人は、おじいさんだったのだ。とにかく意識不明のおじいさんを自分では家内まで運ぶこともできないので、近所の人に助けてもらって。

 そしてそれからおじいさんはただ眠り続けたのだった。



「これは一体どういうこと? 瀕死のおじいさんが自分で歩いてきて私を助けただなんて」

「う――ん。おかしいピコ……」

「このゲームのキャラは魔法が使えるの?」

「そんなことまったくないピコ~~。純然たる恋愛育成ゲームで、ファンタジー要素皆無だピコ。よしんば特定キャラだけ魔法使えたとしても、魔女っ子おじいさんなんてウケるわけない要素入れないピコ」

 じゃあバグかな……。

「それか、愛しい孫を助けるために最後の力を振り絞って……! 愛の力が起こした奇跡……! 泣けるピコ~~」

 まぁバグだろうな。


 それ以降おじいさんは目を開けることもなく、ただただ眠っている。

「もう明日明後日ってところだピコ」

「じゃあ、今マリーヤと代わる。おじいさん、天国でもお達者で」

「のりえも満足ピコね」

「行きましょう、あっちのルートへ」

 スピード感を持ってジャンプする私を、名犬ヨーゼプゥが冷たい目で見ていた。




お読みくださりありがとうございます。

続けてお読みいただけたら嬉しいです。



ラインホルト紹介: 理系。子どものころ迷子になった経験から

          ひとりで出歩く時はとても慎重になる。

          女性に人気だが浮名は流さない人。

          うまくやっているのかな?


ピータン紹介: 運動系。副教科系。たぶん文系寄り。

        しばしば村から消えるようだ。どこへ行っているのやら。

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