表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/35

③ 天国へのぼるおじいさん杯

「おじいさん、また話せる元気がある時、話してね」

 おじいさん目ェばちっと開いたぁ――! さては聞いてもらいたがりね?

「マリーヤ……子どもたち連れて…川遊び…行った時はぁ、楽しかったなぁ……」

「……うん?」

 ピコピコからおじいさんの設定を聞いたの。若い頃厄介なヤンキーで、村の鼻つまみ者だったって。で、イキってどこか殴り込み行った先で子ども作って、その子だけ連れて村に帰ってきた。それがマリーヤの父親。マリーヤの両親はマリーヤ生まれてすぐ死んじゃって、彼女は5歳からおじいさんに育てられてる。

 マリーヤがフランポフルトから帰ってきた後は、おじいさんも人が丸くなって、それなりに村人たちと交流もあったようだ。



「川遊び、ねぇ……」

 散歩で川にやってきた。おじいさんにとってマリーヤは可愛い孫娘だっただろうけど、もし孫が男だったら、雰囲気違うじいちゃんだっただろうな。なんせ元ヤンだし。


「ここけっこう魚泳いでるね」

「村民のいい釣り場みたいだピコよ」

「釣りかぁ、好きな人は楽しいだろうけど、あんまりみんなで盛り上がる感じじゃないなぁ」

「現代人にとって釣りは楽しむものだけど、ここの人らは食生活かかってるピコよ」

「あそっか。でも私はやっぱり現代人だから、楽しみたい。でも釣るより掬いたいな」

「すくう?」

「うん。金魚すくいみたいに。よくおじいちゃんと縁日いったんだよねー、思い出した」

「ここは金魚すくいの水槽よりよっぽど大きいピコ」

「……大きい水槽みたいなこの川で、魚すくってたら、楽しさは伝わる?」


 おじいさんを最後に1度だけ、川に連れてこよう! みんなに協力してもらって! まずはスチーブンのところだ。



「ねぇスチーブン、おじいさんに冥土の土産となる、思い出の風景を見せたいんだけど、協力してくれる?」

 はい、ちょっとウインクしてっと。

「もちろんさ! 君のために頑張るよ!」

「人数いっぱい欲しいから、アベシとフラソツとギャフンの家に案内して!」


 まずはアベシのとこよ。

「ねぇアベシ、おじいさんに~中略~してくれる?」

 えーい、上目遣い&ウインクだっ!

「もちろんさ! 君になら一日中踏まれててもいい!」

 この人もかっこいいじゃないの……もっと自分を大切にして?


「ねぇフラソツ、ほぼ略」

 特別に上目遣い&投げキッスよ。

「もちろんさ! 5股されててもいいっ」

 5股バレてーら。それにしても子分が増えて、桃太郎になった気分ね。

「きびだんごいらないなんて、エコだピコ~~」


「ねぇギャフン、もういろいろバレてると思うけど、協力して!」

「もちろんさ! 誰のものにもならない崇高な君が好き!」

 このモテっぷりをエリザベースにちょっとでいいから分けてやれ……。

「片田舎と社交界じゃ釣り堀の質が違うから仕方ないピコ……」


「一応5人集まったけど、もっと欲しいなぁ」

「はい!」

 挙手をしたのは、えーっと、フラソツかな。

「はい、フラソツ」

「マリーヤに憧れてる男子、もっといるから呼べると思うよ」

 マジか。

「じゃあ私がリクルートするわね。あとやっぱり女子もいた方がいいのだけど」

「はい!」

「どうぞ、スチーブン」

「僕の4人の姉ちゃんたちに声かけてみるよ。僕8人兄弟の末っ子だから!」

 おお~、末っ子強そう!

「でも人を集めて、君は何をしたいんだい?」

 それはね。

「天国へのぼるおじいさん杯! 川魚すくい大会を開きます!!」

「「「「???」」」」



 さて、解散して夜も更け。ああは言ったものの、金魚すくいに必要なあれ。

「あれ、なんて言うピコ?」

「ポイよ、ポイ」

 ポーイ……あ、思い出しちゃった。


「あんなの作れるピコ? 紙なんてほいほい使えないピコよ?」

「そうよね、でも紙じゃなくて、もうひとつあるわ」

 そう、それとは。


「最中!! さいちゅうと書いて、も・な・か!」

「モナカは日本のお菓子ピコ」

「小麦粉があれば何でも作れるぅぅ!!」

「ムチャ振りピコ――!」

「ムチャは百も承知よ。でもこの歴史において発明って、無茶をする人間によってなされてきたの」

 私は特許は申請しないわ。おじいさんが喜んでくれればそれでいい。


「あともちろんプラスチックなんてないピコ」

「最中ポイは針金ホルダーだからプラスチックはいらないけど、針金なんてどうすれば……」

「…………」

 ピコピコ、なにか言いたげね。ええ、私も気付いたわ。

「このタンスに詰め込まれてるこれぇぇ!」

 開けたらまたなだれ出てきました。強度マシマシのこのワイヤー束。




「じゃあ、男性陣はおじいさんを川まで運ぶ担架、背もたれが斜めのベッドっぽい椅子、を木材で。ワイヤーでホルダーを作る作業をお願い。女性陣は薄焼きクレープを作って、実際水に付けて試して改良する。よろしくお願いします!!」

 うわぁ~~文化祭感出てきたぁ!

「友達いないから文化祭嫌いだったピコ?」

 言うな……。


 マリーヤ、男性に対して5股とかふざけたことしてる割に、この女性たちともうまくやってるみたい。

「腹黒じゃなくてコミュ力高いって設定だピコ」

 転生するならそれがいいな……。


「ちょっと男性の方、見てきますね~~」

 ワイヤーの方はちゃんと説明通り作ってくれてる、みんな器用だね。だけど椅子の方がね、けっこう大がかりで、なかなか。

 ん、足音が近付いて来てる?

「なんで俺をのけ者にするんだい?」

「ピータン……」

「俺は職業:大工だよ? プロフェッショナルだ」

 ヤギのお世話係じゃなかったのね。言われてみれば、その引き締まったイイ身体は肉体労働の賜物か。

「ピータン、お願いできるかしら?」

「任せて、マリーヤ」

 え、なんで自然にウインクするの。ちょっとドキドキする…。やっぱりピータンかっこいい。でももう元カレなんだよね。




お読みくださりありがとうございます。

続けてお読みいただけたら嬉しいです。


エリザベース紹介: 青い目のおフランス人形めいた娘。

          趣味はお散歩。何か頼まれたら断れない性格。


マリーヤ紹介: ツイン三つ編みの娘。

        何か発明をして特許を取りたいと片田舎で密かに

        野望を抱いているフシがある。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ