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② グラファザコン仲間だった

「ええ、いいわ。それくらいなら」

「やったぁ――!」

 スチーブン、興奮で乳激しく絞り過ぎよ。女性(ヤギ)に手荒なことしないで。


「僕は君と一緒におじいさんを看取りたい。だから、結婚しよう!」

 手繋いでバンザイ程度の関係なのに、ポジティブぅ。たぶん複数股にかけられてるの気付いててこの自信、羨ましい。

 しかしそれ、おじいさんをダシにしてるんじゃないの? おじいさんなんてすぐいなくなるわけだし、そしたらもうこっちのもん、みたいな。あとそっちの家の介護押し付ける気じゃ……。


「僕は8人兄弟の末っ子だから、あまり介護の機会がないからね。もし君の、おばあさんおじさんおばさん、おとうさんのおじさんおばさん、おかあさんのおじさんおばさん、おじさんのおじさんおばさん、おばさんのおじさんおばさんが介護してって寄ってきても、全員引き受けるよ!」

 どんだけ介護好きなの――!! 21世紀に転生して介護士になるといいわ!

 いや、きっとそれだけマリーヤが好きってことね。ああこれ、マリーヤが切らない理由、分かったかも。




 帰り道は約束どおり手を繋いで帰って、またおじいさんの面倒をみて、私はマリーヤの自室でやっと休めるのだけど。

「ここにマリーヤの日記帳があったピコ~~」

「マリーヤ庶民でド田舎娘だけど、読み書きできるんだったよね」

「マリーヤの設定では、8歳の時フランポフルトの貴族の家に、そこの令嬢の遊び相手として召喚されてるピコよ。だから読み書きも作法も問題ないピコ。でもおじいさんやここの暮らしが恋しくて病気になってしまったので、2年で戻されたピコ」

 意外に繊細。

「おじいさんはマリーヤがいなくなってものすごく落ち込んでたピコ。戻ってきた時は熱い抱擁を交わし…うっうっう……」

 感動の再会、泣けてくるわね。

「しかし今度こそ、もう永遠にお別れだピコ」

「きっとこの日記帳には、その思いが綴られてるんでしょう。どれどれ……」


【ああ、やっぱり女手一つで自分より身体の大きなおじいさんを介護するのは厳しいわ。早く結婚しなきゃ】

 結婚をなんだと思ってるんだろうこの子。


【やっぱりピータンがいちばん基礎体力あるのよね】

 そういうことか……これっぽっちもふわふわした理由じゃなかったね。


【でもね、そこに男手がひとつ増えたって、焼け石に水だわ。男手を5つくらい増やしたい】

 だから5股――!!?


【なんでひとりに絞らなきゃいけないのよ……】

「けっこう長く介護してるピコよ……。頭ももう介護疲れピコ……」


【あぁ、なんかこう歯車使ってベッドの一部を動かしてさぁ、介護を楽にする技術生まれないかしら……。もう自分で作ろうかしら……それで特許申請して……あ―もう今なにか降りてきそうだったのに、もうだめ眠いzzz】


 ふぅ。腹黒いけど、おじいさんに対する愛情は本物だね。とりあえず今は看取りまで穏やかに過ごそう。その後この子ならちゃんと自立できると思う。相手も普通に現れそう。


「私も寝よう。枕は……タンスの中かな?」

 そこで、タンスを開いたら。

「えっ?」

 バサバサバサバサ!と何やら、丸く束ねてある銀色の、固くて冷たいものがたくさんなだれて来た!

「なにこれ危なっ!」

「あ~~そのタンスは便宜上、プレゼントボックスだピコ~~」

「何それ?」

「ゲーマーなのに、プレゼントボックス知らないピコ?」

 それってオンラインゲームにログインした時、運営から贈られたアイテムとかが入ってるロッカー?

「まぁそんなとこピコ」

 一束、出てきたそれを手に取ってみた。

「なにこれ、ワイヤー……?」

「こないだのエノレマーが意外と義理堅くて~~送ってくれたみたいだピコ~~。ワイヤー3ヶ月分!」

 何に使って3ヶ月だよ!!

「強度すごいピコね~~」

 私も頑張って手伝ったからね……。

「これで介護用ベッドが作れる……わけないか!」

「ちゃんと片付けるピコよ」

「寝させてよぅ……」



 マリーヤルートに来て3日が過ぎた。この暮らしは悪くない。介護と言っても、日に日に弱っていくおじいさんはほぼ寝ているだけだし。転生するならこっちじゃないかな?

「それは甘いピコ~~。今はまだ季節もいいし、若いうちは元気があるからそう思うけど、基本厳しい暮らしだピコ~~」

 うん、まぁ長期的に見ないとね。


「うっ、マリーヤや……」

「あ、おじいさん、大丈夫?」

「今日は調子がいいんじゃ……覚えておるかマリーヤ……」

 おじいさんは話すのにも一苦労といった具合だけれど、マリーヤの小さい頃の話をし出した。

「あ、おじいさん、私ちょっと乳しぼってこないといけないわ。おじいさん、ゆっくりしていてね」

 私は一目散にそこから出て走って行った。



「せっかくおじいさん目が覚めて話ができるのに、どうして出てきちゃったんだピコ~~? 乳も絞ってない……ん? なんで泣いてるピコ?」

「だって、死期の迫った老人が、思い出話するって、なんだか、悲しくて……」

「今のところは、ゲームの1キャラクターだピコよ?」

「私のおじいちゃん、去年逝っちゃったから、思い出した」

 本当はマリーヤの気持ち、よく分かる。私も仕事の忙しい両親に代わって、おじいちゃんが小さい頃から面倒見てくれてたし。両親の仕事の都合で国外で暮らした時も、おじいちゃん私を追いかけて来ちゃってたし!

「フレキシブルに活動的なおじいさんだピコ」

 そこでも仕事の忙しい両親に代わって面倒見てくれて、ゲームもおやつも、何でも買ってくれて。

「典型的な買い与えまくるおじいさんだピコ……」

 でもおじいちゃんが病気で倒れてからは、弱っていくおじいちゃんに会うの辛くて、見舞いの足取りも遠のいて……。たまに会いに行くと、やっぱり思い出話。なんだか泣けてくるから聞いてないふりをした。

「それを今でも後悔してるピコ? それをゲームの中とは言え、繰り返すピコ?」

「そうだね、ゲームの中だし、今のとこ私のおじいちゃんじゃないし。気楽に行こうか。でもここをクリアしたら、思い出すたび後悔で沈む気分が、ちょっとは晴れるかな……」





お読みくださりありがとうございます。

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