② テストに出ますよっ☆壁に耳あり障子に〇〇〇〇
「あら、何か用? 用がないなら出ていってくださらない? 不正で手に入れた貴族の身分も捨ててこの家から」
「…………」
用事聞く気もないだろ!! しかし証拠がないっ……。取り巻きがふたり来てるわね。なんだっけ、カーチャとシンディ? カーチャはあからさまな腰巾着。シンディはぶりっこ。まぁたいして役には立たない賑やかし要員よね。
でもここは証拠もないし、メアリーいびるなって言ったところで逆に喜ばせるだけ。せめてちょっと煽ってから撤退しよう。煽りに来ただけになっちゃうけど。
「私がここを出ていくのはラインホルト様と結ばれる時ですけれど。あ、式には招待させていただきますわね」
「なんですって! 貧乏人の泥棒猫が!」
ビンボー舐めンな!
「泥棒だなんて人聞き悪いですわ。彼があなたのものであったことなんて一瞬たりともありませんのに」
生まれた時から結ばれているセーブデータドヤァ。
「ラインホルト様がどうして私をお選びになったかご存じです?」
っていうか男性100人に聞いたら97人は私を選ぶと思います。(3人くらいは変態が混ざる)
「教えて差し上げましょうか? 彼の気を一気に引く魔法の話題を」
教えるまでもないわ! 気を引きたけりゃまずその性格なんとかしろ!
「ラインホルト様は“好きな数字”についてお話ができる女性がお好みなの」
「好きな数字?」
「とりわけ素数よ」
「そ、そすー?」
「まず100以下の素数をすべて覚えることからお始めになったら?それでは失礼いたしますわ」
ここで撤退。
ふはははは! これで3時間くらいは睡眠時間を削ってやったわ! しかも奴の頭じゃ3時間かけてもどうせ覚えられるわけないんだから、その時間すべて徒労に帰すことになるのよ!
……ふぅ。それじゃ何も解決になってないわ。私が徒労感半端ないわ。
「マリーヤ様」
「メアリー……。心配しないで。私がここを出ていくときは、きっとあなたも一緒に行けるようにするわ。フリージ家で奉公もあなたは問題ないわよね?」
彼女が私の手を取って……あら、涙ぐんでる、どうしたのかしら。
「マリーヤ様はなんてお優しいお方なのでしょう。私みたいな使用人にも情けをかけてくださるなんて」
「そ、そんな大げさなことではなくて。いつもお世話してくれて助かってるし、それに……」
私、前世でもずっと入院患者だったから……友達もみんな同じくそれで……。仲良くなっても退院していったり、逆に……。だから転生したら、長く気兼ねなく付き合える友達も欲しかったし、メアリーはその最初の友達だから。少なくとも私にとっては。
「決めました! 私、マリーヤ様のために一肌脱ぎます!」
「ん?」
「実は私……ゲームマスターより送られた《上級NPC》なのです!」
上級?NPC??
「ここはゲームをクリアされたプレイヤーのみなさんが転生する異世界なので、ゲームの中ではないのですが」
ゲームをしている間はモフモフ案内NPCがいつも一緒にいたのよね。
「転生後もセーブデータのバグなしに転生プレイヤーのみなさんが運命を辿っているかをチェックするために、ゲームマスターがごく少数のNPCを街に住まわせています」
そうなんだ……そういえばアフターサービスも万全ってNPCに説明されたっけ。
「ですので私は世界の住人が持っていないスキル……人は魔法と呼ぶものですね、それが使えたりします」
「魔法使い!?……それならあんな意地悪な女、さくっと撃退できるのでは……」
「いいえ。NPCが自身のために使えるスキルではありません。あくまで転生された方に対するサービスです」
ともかくアフターサービスあるなんて良ゲーなのね。ちなみにそれ、前世では1度もプレイしてないの。ソフトは親が買ってくれたんだけど、ハードがいつまでたっても抽選漏れで買えなくて……。ああ一度だけでもプレイしたかったなぁってソフト片手に持ったまま死んじゃったから……。
あぁ、少し感傷に浸ってしまったわ。彼女の話を聞かなくてはね。
「実はあの意地悪女に対応することに関しては、サービスの適用範囲外だったりします。だってあれくらいの悪口陰口、いじめ、嫌がらせはこの世界にありふれていますもの!」
えっそうなの? もうこの世界、森のかわいい動物たちとかに明け渡したら? 私前世がああだったからそんなのちっとも知らなかったな。過酷な人生だったけど、その点ではアドバンテージがあったのね。
「それにラインホルト様と結ばれればセーブデータは問題ないということですから、他の人間関係に関してまで世話していられません!」
「あ、はい」
「というのがゲームマスターの信条ですが」
「なら、いいわよ。自分で何とかする。巻き込みたくないけどラインホルト様に協力していただいたりとか……」
「いいえ、マリーヤ様。愛しい方をこんな下らないことに巻き込みたくないでございましょう? それに彼女をのさばらせておけば、今後社交界でも陰口を叩かれて、足元をすくわれることもありますよ」
ああ、それは盲点だったわ。言われてみれば理想の素敵な男性と結婚できるセーブデータなんて最強のように思うけど、それ以外の人間関係は現実そのもので、しかも人生って恋愛結婚以外の時間のがよっぽど長い! 社交界での立ち位置とか深刻だわ、たかだが嫌がらせと看過できないよね。
「でもあなたがゲームマスターの信条に反していいの? その、スキルを使って……」
「ある程度任されています。それにそんなに強いスキルでもありません」
「どういうスキル?」
「私のスキルは……《壁に耳あり障子にメアリー》です!」
なんとなくメアリーのBGMがシャラララ~~ンって聞こえてきたわ。魔法少女がステッキ使って変身するポーズ取ってるし。
「はいっ! 街中に私の耳と目を配置して発見しました!」
耳と目を配置……? シュールな想像してしまうわね。
「なにを発見したの?」
「魔術師です。正真正銘本物の」
「え?」
「見つけられちゃったねぇ……いっひっひっひっひ」
「ここです!」
隠し扉を開き、秘密の階段を降りたわ。すると目の前には水晶の周りで手をうねうねしてるテンプレ老婆……。
「ここは特別な目を持っていないと見つけられないところだよ。おまえさん、私に何か用かえ?」
「ブラックなこと言っていいかしら?」
でもこちらのお婆さん、いかにも黒づくめでブラックな魔術師だ。聞くまでもないか。
「失脚させたい人間がいますの」
「ありふれた感情じゃのう……。いいぞよ叶えてやるぞよ、してその代償にお前は何を寄越してくれるのかえ?」
代償……確かに、黒魔術には必要な物ね。
「何ならよろしいの? 私の髪かしら? それとも余生の半分……あ、私の秘蔵耽美系劇画集とかは?」
「耽美……」
おや、ちょっと食いついてる。しかし私のじとっとした視線に気付いたら、明後日の方見て口笛。いいのよ、女たるもの耽美を求める心は自然界の抗えない掟よ。
「……じゃあトカゲ30匹ほど」
「トカゲ?」
お読みくださりありがとうございます。
主人公の性格ヒトのこと言えないレベルですが、悪いのは性格じゃなくて口です。(言い訳




