④ 無償の愛を君に
あと10分でどうこうなるなんて無理ゲーよ! ひたすら数字のイリュージョン語られて終わる! でもこのまま雨が上がって屋敷に戻って分かれたら、また運命は交わらなくなるかも? ラインホルト様のこのヘタレっぷりじゃ、ここを逃したらどうなるやら。
「のりえ~~、のりえももうプレイ時間長いピコ。自分じゃ気付かないかもしれないけど、プレイヤースキルも上がってるピコよ?」
恋シミュゲーのプレイヤースキル、と言いますと。
「こういう時は告白させるように仕向けるんだピコ!」
し、仕向ける……。
「つまり“誘導する”ピコ!」
ゆっ、誘導!! それは恋愛達人だけが持つ特殊コマンド!!
私にはまだ無理だよ~~そんな上級技……。
「エンディングの手前で使わなかったらいつ使うピコ。あ、そうだ。マリーヤルートに来てから、まだプレボ開けてないピコね」
そうそう、来たばっかの時はそんな余裕なかったし、その後は働いてばっかだったし。というか4次元空間のロッカーとして便利使いしてたから忘れてたけど、これ“プレゼント”ボックスだったね。
「誰かからプレゼント届いてるかもよ~~。あ、メッセージカード入ってるピコ!」
これは……ハンカチ?
「ええっとぉ。【ずいぶん長いことハンカチーフをお借りしていましたわ! ちゃんとお洗濯をしてお返ししますの。幼友達マリーヤの幸福を、全力でお祈りいたしますわ! BYエリザベース】だって~~」
ちょっとこのハンカチ、エリザベースって名前書きこんであるよ! マリーヤがあげたんじゃなくて、エリザベースが借りパクしたんじゃ……。
「疑惑の目を向けないであげてピコ」
これ、まさか名前書いてあったせいで、ラインホルト様が拾って届けられたのでは。
「とにかく、これでラインホルト様の目を覚まさせるピコよ」
どうにかなるかな?
「ラインホルト様、私を探しまわったせいで、上着がびしょ濡れになってしまいましたね」
拭き拭き。ハンカチ見て気付いて! あなたが今何のために、ここにいるのか。
「私のためにありがとうございます。迷子の私を、今度はあなたが助けてくれるんですね」
「マリーヤ、私のことを思い出してくれたのか?」
「ええ。あなたのようにすてきなお方は、何年たっても忘れるはずありません」
「嬉しいよマリーヤ。私も君のことを忘れたことはない」
エリザベースには常に違和感を持って付き合ってたんだろうなぁ。なんか切ない。
「マリーヤ……」
あ、彼の私を見つめる目が輝いてる。真剣な瞳…。ラインホルト様、覚醒した?
「あの頃は、私は何もできない子どもで君を頼ってしまったが、これからは私が君を支え、守り抜く。どうか、私と結婚してくれないか」
プロポーズきたぁぁ! でもね、すぐにはOK出せないわよ。マリーヤって異性に対してどうも不信感あるっていうか、モテ過ぎる弊害なのかな。ちゃんと言質も取っておかないと。
「私はただの村娘です……令嬢ではなくて」
「私はそんなこと気にもしない。どうか私の妻に……」
「あなたはそうでも、ご家族が反対されるわ」
今思うとエリザベースはカビローンロンまでは認められてたのか。頭ゆるふわでもあくまで令嬢だからな。
「私の家族もきっと君が好きになる。君は美しい。可憐な容姿に佇まい。悠然とした身のこなし、気性の気高さ、優しさ、そして賢さ。君こそ世界が認める令嬢の中の令嬢だ」
そのフレーズ聞いたことあるぅ……! こっ恥ずかしいけど、他人から言われると悪い気はしないかも。でもまだマリーヤは落ちないわよっ。
「でも、私、忘れられない大好きな人がいます」
「何……!? 誰なんだ、それは!」
「おじいさんです」
「は?」
「私の父の父です」
乳……もう思い出したくない。
「最近旅立ちました。享年83」
「大往生だなそれは。お悔やみ申し上げる」
「お気遣いありがとうございます。私はおじいさんが大好きで大好きで。全財産投げうってしまうほど好きでした。それはひとえに、無償の愛をくれていたから」
こんなこと言うと引くかな。そりゃ引くよね。でもマリーヤはそれを求めてるんだから仕方ない。こんなマリーヤを受け入れてもらえなきゃ、結婚できない。
「あなたは私に、無償の愛をくれますか?」
すると彼はとても優しい目で私を見つめて……。
「もちろんさ! 君には私のすべてを差し出そう、無償で!!」
やったぁ! 彼とならきっとマリーヤも幸せな結婚生活を送れるね!
「ラインホルト様、雨が上がったみたい。お屋敷に戻りましょう」
「ああ」
彼の優しい微笑みがまぶしい。ああ~~もうマリーヤ羨ましいな~~ピータンも言ってくれないかなぁ、すべて君に捧ぐ!って。
るんるん歩いていたら、森に出るというところ。
「あ、見て! ラインホルト様、虹が出てるわ!」
その時、彼は私を突然抱き寄せて、私のあごを指で持ち上げて、そしてその綺麗な顔を寄せてきて……あああだめぇぇぇ!!
「ああ~~せっかくキッスチャンスだったのに、突き飛ばしちゃったピコォ……」
いやだって、なんか浮気になっちゃいそうで! 私のファーストキスになっちゃうし!
「ご、ごめんなさい、ラインホルト様!」
ああラインホルト様、捨てられた小犬みたいな目をして……。
「あの、そういうことは、あの、結婚してからでよろしくお願いします!!」
「そうか……」
あ、安心した顔になった。
けっして嫌なわけじゃないんです、ただちょっと事情が、ね。
「では近日中に結婚しよう!!」
「えっ」
「さぁ! 三日以内に結婚しよう!!」
「そんなやる気満々なの――!?」
~FIN~
とりあえずの帰宅。
「ふたつ目のルートクリアおめでとうピコ~~!!」
「ありがとう~~! 私もこれで満足よ」
「で、もうのりえはエリザベースに転生を決めたピコね?」
「うん! ピータンと結婚して幸せになりま――す!」
「本当に変更はないピコね? じゃあ最後の歯車でエリザベースルートにレッツラゴー!」
最後の某配管工ジャンプよ!
お読みくださりありがとうございます。
ラインホルト×マリーヤは今回メインカップルではなかったのでなんだか不完全燃焼で、マリーヤが主役の短い話(1.2万字)を書きました。体裁整ったら載せようと思っております。主人公が違うし(たぶん)ノリも違うので別タイトルですが、アップしたらあらすじのところに書き込んでおきますので、お時間ございましたら見ていただけたら♡などと願いつつ。(でも女の罵り合いレディーファイッがメインな、とっても不愉快ストーリーですけど!←




