② 運命の人を追いかけて
「聞いたところによると彼はソルティック侯爵家の末子だ。したがって彼自身に爵位はない。彼の兄たちが揃って不幸に見舞われるということでもない限りね」
「…………」
ん~~。あまり爵位がどうとかは、考えてなかった。令嬢は一般的に、より高貴な男性と結婚するのが幸せエンドなんでしょうけど、やっぱり好みのかっこよくて優しい男性に、愛されて求められて結ばれたいって私は思うし、どこの令嬢だってみんなほんとはそうでしょう?
「でも靴の話がまわってきた時、ご令嬢方はその方の身分が分かっていても、立候補されていたのですよね? どうして?」
「ああ、どうやらその彼はずいぶんと色男のようだよ。それこそ貴族の身分を捨ててでも、と考える女性はかなりいるのでは。ソルティック家の者なら婚姻後も生活が苦しくなることはないだろうしな」
色男ね~~ほら、やっぱり。それがいちばん大事よね。その上爵位はなくても血筋は良いわけだし、彼の家から援助も流れてくるし、ってとこ?
「……ですがともかく、その方が私を探しているというのは何かの間違いですわ。その辺で拾った片方の靴を、ただ返そうと思っただけかも!」
「とても親切な人ピコ!」
ああ、これからどうしよう。
その時、ばたっと人が倒れる音がしました。
「あら、あなた大丈夫?」
そばで給仕係の娘が倒れています。起こして差し上げますわ。
って、……ええええええ!? マリーヤ!!? なんでなんでどうしてマリーヤがここに~~? またバグ??
あれ、なんかピコピコ、ソワソワしてない? どうしたんだろう?
「え、えーっと…。マリーヤ、フランポフルトに職探しに来たんだピコよ? ここで給仕していてもおかしくないピコ」
あ、そっか。そういうことか。マリーヤが倒れているということは。その右手に握ってる物は何かな~~? コインだと思って拾った別の何なのかな~~?
「大丈夫かい?」
おっと、たまげてる間にラインホルト様がスマートに彼女を抱き起こしましたわ。
「大丈夫です、ありがとうございます……」
あら? ラインホルト様、マリーヤに見とれてない? 彼ほどの人でもやっぱりマリーヤは特別にきれいな子なの? 着飾った令嬢だらけのこの場で、メイド服の彼女が……。
「メイド服はある意味最強だピコ」
「あなたとは初めて会ったような気がしない」
えええラインホルト様、そんな使い古された、ナンパ師のようなことおっしゃって~~!?
「現代では使い古されてるかもしれないけど、中世ではまだ新しめなナンパ師の常套句だピコ」
マリーヤ、もじもじしてる~~。なんか言い返したら? 持前のコミュ力の高さはどうした!
「あら? あなた、転んだところを怪我をしていますわ」
肘をすりむいて血が滲んでる。
「私のハンカチーフで拭いて差し上げるわね」
拭き拭き。
「あっ!」
ん!? なにマリーヤ、急に大きな声出して。
「これ、私が子どもの頃エリザベースにあげたハンカチーフ……!」
「え??」
「まさか、あなたはエリザベース!?」
「え、ええ。そうだけれど……」
「私、マリーヤよ。ほら子どもの頃、あなたの遊び相手としてそちらのお宅に滞在していた……」
あ、そういえばそんな設定あったよね、貴族の家に召喚されて、だから読み書きもできるって。ってそれ、エリザベースのところだったの!??
「このハンカチーフ、あなたが怪我をした時に私が取り出して、そのままあなたにあげたのものだけど、まだ使ってくれていたのね!」
あ、そ、そうなんだ、へぇ~~。
「ああ、でも今となっては、あなたは上流階級のご令嬢、私はただの給仕の娘。このように馴れ馴れしくしてしまって申し訳ございませんでしたっ!」
「あっ、マリーヤ!」
走って行ってしまった……。
「エリザベース、今の女性は……? そのハンカチーフを見せてくれ」
「え? これ? どうぞ」
ラインホルト様?
「間違いない……彼女は……私の……」
「ん??」
ラインホルト様は片手にハンカチーフを握りしめて、走って行ってしまいました。まさか、マリーヤを追って? どういうことなんだろう?
それにしても、彼が構ってくれないと、私はいつもぼっち……。
「あっ!!」
「どうしたピコ?」
「今、そこの人々の向こうに、ピータンがいた!」
あれ? またバグ?
「ほんとにピータンだったピコ?」
「間違いない、顔だけだったけど、一瞬だけだったけど、ちゃんと見たもん。だけど……今はエリザベースルート……。でもマリーヤがいるんだから。ピータンもフランポフルトに来たんだから、いたっておかしくない!」
私は人だかりの中を早歩きで駆け回りました。こんなドレスで動き辛いし、走ろうにも人にぶつかるし、人探しなんて……。
そもそもエリザベースでピータンを見つけてどうするの??
「わぶっ!」
「あ、失礼」
「ラインホルト様」
「エリザベース?」
「マリーヤを追ってるんですよね?」
「彼女はマリーヤというのか。そうなんだが、いまだ見つからない。今度はあちらを探してくる」
また行ってしまわれました。私も、自分の行動がよく分からないけど、とにかく彼を探すわ。
「あ~~疲れましたわ~~」
「みんなぐ~るぐ~る動いて、いつまでたっても追いつかない気がするピコ」
「ああもう校内放送して――! 迷子放送でもいい!!」
放送かぁ。スピーカーもない、マイクもない時代だもの。
「でものりえ、ビンゴの時司会やったピコ」
「あの時は厚紙で作ったメガホンを……」
「ないよりはいいピコ。パーティー会場の中心で愛を叫んでみるピコよ」
「あ、愛だなんて!!……名前くらいは叫んでみようかな」
「勇気を出したキミにプレゼンツ! 今まで作った作品は、ボクが取っておいたから~~ポータブルボックスから~~ほいピコっ!」
あ、この前作ったメガホン。
「ピータンの名前叫ぶの、ちょっと勇気いるんだけど」
結局小走りしながら叫ぶことに。
「ピ~~タ~~ン!?」
「ん? ピータン欲しいの? はい。おいしいよね」
「いえそのピータンじゃなくてっ」
ゼェゼェ。
「ピ~~タ~~ン!!」
「マドモアゼル、アジアの大国からお取り寄せしたピータンだよ」
「いえそのピータンじゃなくてっ」
ゼェゼェゼェ。
「ピィィィ……」
「あの、俺、ピータンだけど……」
「!」
叫ぶ私を不審がって集まった人だかりから顔を出したのは、まごうことなきピータン。村男の恰好ではなくて、貴族の衣裳を纏った……。
「ピータン!」
私は彼に駆け寄ったのですけど、人に囲まれてしまったので恥ずかしくて、彼の手を取り逃げることにしましたわ!
お読みくださりありがとうございます。
もし万が一、続きが気になるかもしれない??ということもありましたら、ブックマークお願いいたします。
評価、感想、ダメ出しも大歓迎です。




