最終話→らぶゆっ!
波打ち際で、一人海を眺めながら色々と考える。
みんなが笑える方法を。
誰も悲しまない方法を。
今の俺には現実逃避くらいしか思いつかない。
「あの・・・・葉雇さん?」
後ろからの声に振り向くと、不安そうな顔のゆかりちゃんが立っていた。
「・・・何?」
俺はゆかりちゃんから海に視線を戻して、低い声で呟く。
「あの・・・・・なんか、お騒がせしてごめんなさい」
ペコペコと頭を下げるゆかりちゃん。
俺は、「別に気にしてないから」と、苦笑する。
俺なんか、謝られる価値もないのだ。
二人でも迷っているのに、無駄にフラグを立ててしまっている。
ゲームの主人公とかは、一人に決めれる決断力を持っているが、俺はそれが皆無なわけで。
そんな俺に好意を抱いてるみんなは、本当に可哀想だ。
「大丈夫ですか?なんか顔が暗いですけど・・・・」
そう言って、俺の横に腰掛けるゆかりちゃん。
そんなゆかりちゃんの顔は、本当に心配そうな表情をしている。
「ゆかりちゃん・・・・・ゆかりちゃんは俺のこと、どう思ってる?」
俺の質問に、「ふえぇっ!?」と奇妙な声をあげて、顔を赤くしながらあたふたするゆかりちゃん。
・・・・だよなぁ・・・。
やっぱり、ちゃんとフラグは立ってたんだな。
俺は体育座りしながら、自分の膝と膝の間に顔を埋める。
午後の3時過ぎ。
太陽の光が体に染みて、涙が出てきた。
なんで俺はこんなに優柔不断なのか?
なんで俺はこんなにダメな人間なのか?
頭の中が自分への罵りで一杯になる。
虐められた時も、異世界に飛ばされて不安だった時も涙なんて出なかった。
自分に自信があったから。
父さんと母さんを失ったあの日、もう泣かないと決めたのに。
自分のことは自分でなんとかすれば大丈夫だと思っていたのに。
結局自分では何も出来ない。
みんなが居てくれなきゃ自分に自信も持てない。
そのことに気づいた途端、涙が目から溢れてきた。
こんな真っ昼間から、いい歳した高校生が何泣いてるんだろ、と自嘲しながらも涙は止まることがない。
「は、葉雇さん!?ど、どどどどうしたんですか!?」
ゆかりちゃんが、涙を流している俺を見て、赤い顔から急変して泣きそうな顔になる。
「・・・だ、大丈夫、だから・・・・き、気にしないで」
俺は言葉を途切れ途切れ発しながら、無理矢理笑う。
そんな俺を見て、とうとう目に涙を貯め始めたゆかりちゃん。
俺はそんなゆかりちゃんの頭をギュッと抱いて、ただ謝る。
「ほんと、ゴメン・・・・・・お、俺なんかのせいで」
ゆかりちゃんは、いきなり抱きついた俺を振り払おうとしなかった。
俺、何してんだろ。
アイリスと夏凪への返事は保留しながら、今は別の女の子に抱きついている。
どんだけたらしなんだ、と思いながらあることを思い出す。
『自分の思うままに』
ユアが言っていたことが頭に浮かんでくると、なんだか涙が止まっていくのを感じた。
今、俺は自分が思ったように行動して、ゆかりちゃんを抱いている。
なんか、悟ったわ。
これがユアの言ってたことか。
「ねぇ、ゆかりちゃん。俺にこんなことされて、嫌?」
俺はゆかりちゃんを体から離すと、見つめながら問い掛けた。
「いや・・・・その・・・なんか、嬉しいです」
喜んでくれた。
これが俺が思った通りにやった結果なら・・・・いいかもしれない。
なるほど、これが『自分の思うままに』ってことなのか。
俺は、目に残る涙を拭いてゆかりちゃんの手をとり歩きだす。
みんなのとこに戻ると、言い争いはもう終わったのか、それぞれ座って談笑していた。
「みんな、ちょっと聞いてくれるか?」
俺は、左手に握っているゆかりちゃんの暖かさを支えに、勇気を振り絞って言葉を紡ぐ。
みんなは、何かを察したように談笑を止めると、俺に視線を固定させる。
「俺は、ダメな奴だ、本当に。決断力もなくて優柔不断で・・・・けど、そんな俺を好きになってくれた人もいる。でも、俺は一人を好きになるなんて無理っぽいんだ」
視線が痛い(特に女性陣からの)けど気にしない。
「だから、全員を好きになる!みんな平等に、俺を好きでいてくれるやつはみんな愛してやる!これが俺の考えだ。以上!!」
俺は自分の気持ちを全力で言葉にした。
これからは、ハーレム系のエロゲで勉強してみんなを幸せにしてやる。
悲しい顔は嫌いだから、みんなニコニコ笑い顔にしてやる。
俺は、夏休みがまだまだ残る今日。
心の中でそう誓った。
誰からどんなに文句を言われても、それだけは絶対守ってやるさ。
若気の至り?
若さ故の過ち?
知ったこっちゃない。
世界は、今日から俺を中心に回り始めたのだ。
そんな俺を見て、みんなは苦笑しながら呟く。
「はやにぃは、やっぱり優しいね。かな、もっと好きになったかも」
「まぁ、確かに。本当のはやとが見れて、ぼく、少し嬉しいよ」
「そうですわ。はやとさんは、いつもいつも自分を偽ってる感じがありましたから」
「そうだね。なんか、昔のはーくんに戻ったみたいで、やっぱり素直なはーくんが一番だよ」
「・・・・・よかった」
みんなはそれぞれ言葉を発しながら、俺の横に並ぶ。
「よっしゃあ!!写真のタイマー、押すぜ!」
いつの間に準備していたのか、グリムが写真のタイマースイッチを押して、俺の後ろに回り込んだ。
「「あい、らぶ、ゆっ!!」」
そんな掛け声とともに、みんなが俺に抱きついてくる。
カシャッ!!
グリムやケン、優は、それを苦笑しながら見ていた。
それはある日の思い出の1ページ。
これからまだまだ続く、葉雇ハーレム結成の最初の記念写真であった。
はい。そうですね。 無理矢理終わらせた感が強いのは、自分でもわかっています。こんな小説でも、楽しみにしてくれていた人には申し訳ないです、ほんと。 でも、自分ではこの終わらせ方が切りが良いかな、と思っていたりします。小説というのは、続きを自分の頭の中で想像できるのも楽しみの一つだと思いますからw 長々と長文失礼しましたwとりあえず、現在、別の小説を書く計画はあるので、気が向いたら投稿させて頂きたいと思います。その時は閲覧してくれると有り難いです。あと、毎日更新はつらいw次の話は、もっとゆっくり投稿するかもですw 最後に、自分の初作品、『らぶゆっ!』を読んでくれた皆さん。感想をくれた皆さん。メールをしてくれた皆さん。本当にありがとうございました。 2009年10月31日璃瑠@