79話→体育祭、其のにっ!
「第二競技の女子120m走に出場する選手は入場門前に集まってください」
俺と優が応援席に戻ると、入れ違うように夏凪と梓とカルアが入場に向かっていく後ろ姿が見えた。
「ふ〜ん。あいつらはコレに出場すんのか」
「そうらしいぞ・・・・・・って、何でいるんだよ・・・」
後ろから声がしたと思ったら、なぜかグリムとケンが立っていた。
「何でって、暇だから一緒に応援しようかなと」
「そうだよ。せっかくなんだし、一緒に応援しようよ」
グリムとケンの言葉に、優の方に視線を送って同意を求める。
優はすぐさま頷いてくれたので、「とりあえず座ろうか」と、クラス毎に分けられているブルーシートの最前列に陣取る。
俺が通るだけでみんな避けてくれるから最前列を取るのも容易い。
ブルーシートに座ると、いいタイミングで女子の競技が始まった。
・・・・・しかし、なんだろうな、コレ。
「なぁ、優。俺は3次元でこんなに萌えたのは初めてなんだが・・・」
「・・・・うん。僕も同意見だよ。コレは・・・・・・キテるね」
俺と優は真面目に応援しているグリムとケンを差し置いて、オタク談義をコソコソと開始した。
学校指定の体操服が、今や天然記念物くらい貴重なブルマってことだけでもアレなんだが、今年はいつもと違って真面目に見ている。
そのせいか、一人一人の走り方やちょっとした仕草がかなり萌えるのだ。
「なんか、今まで損してた気分だな」
「そうだね〜。僕もはやとに付き合ってさぼってたし、かなり損した気分になってるよ」
俺たちはお互いに苦笑し合うと、競技に視線を戻した。
「では、午前最後の競技、借り物競走に出場する選手は入場門前に集合してください」
そのアナウンスに、ホッと息を吐く俺と優。
午前だけで10以上の競技に参加したのだ。
そろそろ休まないとさすがに辛い。
ケンとグリムはなんであんなに元気なのか・・・・・・若いっていいよね。
俺と優は、入場門の前に集まった人たちの列に並んで競技が始まるのを待つ。
しばらくすると、ケンとグリムも来た。
「トイレ、混んでたのか?」
「まぁ、結構ね」
俺の言葉にケンが苦笑する。
毎年トイレですごい行列ができるのだ。二人も人の多さに驚いたに違いない。
俺だって最初はめっちゃ驚いたしな。
行列のできるラーメン屋も真っ青なくらいの行列だし。
係の人の合図で入場門をくぐると、順番が来るのを待つ。
最初らへんの競技は順番待ちに少し高揚した気持ちになれたけど、今はただ、早く終わるのを願うばかりである。
横に並んでいる優と喋っていると順番が回ってきた。
なぜだか全種目で優と対決している。
誰かの陰謀か何かか?
ピストルの合図とともに走り出して、借りるものが書かれた紙を目指す。
今年初めて追加された競技だからどんなものか予想できない。
前に走っていた人たちを見る限り、相当に意地の悪い事が書かれているみたいだが。
優と同じペースで走り、中が見えなくなっている箱に手を突っ込み、せーのと声を合わせて同時に紙を引く。
「・・・・・・・・・優、一つ提案があるんだが」
「・・・・・・何?」
俺と優は紙を開いたまま固まっている。
「・・・紙、交換しないか?」
「・・・・いいよ」
俺の言葉にニヤリと笑って頷く優。
む・・・交換してくれるってことは、優もハズレを引いたのか。
でも、俺のよりはマシだと思う。
なんたって『年上の可愛い人』なのだ。
大ハズレにもほどがあるだろ?
優と紙を交換して、ゆっくりと紙を開く。
紙にはこう書いてあった。
『ロリで可愛い人』
・・・・ちょっと待て。大ハズレが2つってどういうことだよ・・・・・・。
俺は、ロリで思い当たる3人の人物を思い浮べてどちらに頼むか考える。
優も同様に考え込んでいるみたいだ。
とりあえず、優に負けない程度に頑張りますか。