73話→パフェ!
久しぶりの一人での朝食。
なんか微妙に違和感があるのは、喜ばしいことか悲しむべきことか。
朝のレストランは、客が誰もいなくて少し寂しい。
レジ打ちの所で暇そうにしているウェイトレスさんと俺だけの空間。
調理場から聞こえる調理人達の笑い声を聞きながら、なんだか自分が少し弱くなった気がした。
前は一人で居ても何も感じなかったのに。
注文したホットミルクを口に運びながら、時計を見る。
「そろそろHR始まる時間かなぁ」
「学校、行かなくていいんですか?」
俺の呟きに誰かが反応してきた。
声のした方を振り向くと、さっきまでレジのとこにいたウェイトレスさんが俺の隣の席に座っていた。
まぁ、相当暇だったのだろう。
俺も暇だったし少し会話をしてみるのも悪くはない。
「レジのとこで、客待ってなくていいんですか?」
質問に質問で返答する。
一時の沈黙の後、お互いに吹き出す。
突然の笑い声に調理場から人が顔を覗かせるが、俺とウェイトレスさんを確認するとニヤリと笑い、顔を引っ込めた。
「なんか勘違いされてないか?今の」
俺は調理場を一睨みすると、わざとらしくため息を吐く。
「仕方ないですよ。さっきの雰囲気は勘違いされても」
いや、よくないだろ。
と心の中で突っ込みながらも、なんかありがたかったりする。
一人でボーッとしている時ふと思ってしまったのだ。
誰かと喋りたいと。
昔は一人でいる方が気楽だったし、こんな気持ちは初めてだ。
弱くなったと感じる反面、これはこれでいいと思うのだ。
だって、誰かといたいと思うのは守るべきものがあるということだ。
人は守るべきものがあるだけで、人生が楽しくなると俺は思う。
弱くなっても楽しくなれるならなんか得だと思わないか?
「それより、なんか暇潰しなるような事ない?」
俺はレストランを出て何をするか考えてなかったので、なんとなく質問してみた。
「・・・学校は行かないんですか?」
ウェイトレスさんが心配そうに質問してくる。
「ん〜。まぁ、俺イジメられっ子だし。あんまり行きたくないんだよな」
「・・・・・・ごめんなさい」
「・・・いや、いいよ」
まぁ、虐められてるってのは言い訳で実際はそんなに気にしてないし。
謝られると、なんか悪いなぁって気になる。
「そ、そうだ!パフェでも持ってきますよ?私の奢りで」
「いや、そんな気遣いは無用・・・・って聞いてないし」
ウェイトレスさんは、あっという間に調理場に向かって走っていった。
数十秒後、俺の隣に戻ってきたウェイトレスさんは、息を荒げながらズビシッと親指を立てる。
「料理長さんが、運んできてくれるそうです」
そう言って、ほぅっと息を吐くウェイトレスさん。
まじで気ぃ使いすぎ。
めちゃくちゃ罪悪感が湧いてくる。
「・・・・なんか悪いな、まじで」
俺の言葉に、慌てて首を横に振るウェイトレスさん。
「いえ、そんな。ただ・・・・そう、自分で食べたかったんですよ実は」
にへへ、と笑うウェイトレスさん。
まぁ、折角の好意だ。
ありがたく頂こうじゃないか。
「へいお待ちぃっ!!」
いいタイミングで料理長さんがパフェを持ってきた。
「ではごゆっくりぃ!!」
そう言い残して、ニコニコ笑いながら去っていく料理長さん。
俺は、テーブルの上に運ばれた超巨大パフェを唖然として見つめる。
「こ、これ・・・まじで食べれんの?」
俺の言葉に頷くウェイトレスさん。
ウェイトレスさんは、キラキラと目を光らせてスプーンを握り締める。
「さぁ!食べましょう!!」
俺は好意を無駄にしない為にも、とりあえず頷く。
朝からパフェってどうよ?
「よ、よし・・・・いただきまーす!!」
覚悟を決めた俺は、大きな声を出してパフェにかぶりつく。
おぉ、甘いクリームが口いっぱいに広がってなかなか・・・・・・。
俺はウェイトレスさんと協力して、打倒パフェに挑み始めた。