69話→でぇとの終わりに!
カルアが、とりあえず面白い所に行きたいと意見を出したので、適当に商店街を回ってみることにした。
商店街と言っても所詮島の商店街だ。
特に面白いものはないはず。
俺とカルアは、色んな店に入った。
店に入って商品を見るだけで何も買わなくてすんだのは、俺としてはありがたかったな。
「っと、そろそろ学校終わる時間だな」
俺はふと時計を見ながらカルアに言う。
「ぇ・・・・もう、終わり?」
カルアは残念そうに顔を伏せる。
まぁ、見たことないものばかりで時間を忘れていたんだろうな。
俺は、そんなカルアの頭に手を乗せてゆっくりと撫でる。
「大丈夫だって。また来ればいいだろ?それより、早く帰ろうぜ。腹も減ってきたしな」
「そう、だね。またはやとと二人で来ればいいんだよね」
カルアは自分に言い聞かせるように頷いて、俺の手を握ってきた。
「じゃあ、帰ろっか。わたしもお腹減ったし」
そう言って俺を引っ張るカルア。
人前で手を握るという行為はいつぶりだろうか。
思い返してみると、あっちの世界でルミナスと手を繋いだのを除いたら幼稚園の時夏凪と梓と手を繋いだ時以来だな。
俺は恥ずかしさに顔を赤くしながらも、周りの視線をどこか心地よく受けとめていた。
商店街の出口辺りに着くと、俺はカルアの手を振りほどいた。
カルアは眉をひそめてこっちを見ているが、これは仕方ない。
学校帰りと思わしき学生の集団がこちらに歩いてきているのだ。
もし、俺と手なんかを繋いでるとこを見られたらカルアにも迷惑かかるし。
俺は、カルアのジトーッと視線を無視して1人で歩き始めた。
「おぉ?転校生のカルアちゃんだよね?こんなとこで何してんの?」
学生の集団と言っても、男子学生が5人いるだけだが。
そいつらが、歩きだした俺に着いてきてなかったカルアに絡みだす。
まぁ、俺をガン無視したのは言うまでもないな。
カルアはそんな学生達から何かを感じ取ったのか、凛とした声で言葉を紡ぐ。
「なぜ、はやとを無視した?」
その声は少し離れたとこにいる俺にまでしっかりと聞こえた。
「・・・あぁ?」
学生達の視線が俺に集まる。
俺は立ち止まって振り返り、学生達を見る。
「ゴミトなんて知らねぇよ。それより、俺達と遊ばねぇ?」
学生の中の一人がそう言った瞬間、次元が歪んだ。
比喩とかじゃなく、リアルに。
学生達の周りの空間が、ぐにゃぐにゃとなっている
俺も含め、学生達は何事かと目を丸くする。
その歪んだ空間に亀裂が入り、無数の手が飛び出してきて学生達の腕や足を掴んでいく。
「「た、助けてくれぇぇぇ!!」」
と学生達は叫ぶが俺はもちろん、カルアも助ける気がないようだ。
それどころか、カルアは魔力を練って追撃をしようとしている。
バチッ、バチッと電気が弾ける音を前に、学生達は言葉を失い顔を真っ青にして電気を放っているカルアを見ている。
「た、たすけ」
「はやとを馬鹿にするなぁぁぁぁあ!!」
学生達の助けを求める言葉を無視しながら、カルアの電撃が学生達にヒットする。
「・・・・・・」
学生達は気絶したようだな。
俺は、生きててよかったと胸を撫で下ろすと、次元を歪ませた元凶で間違いない人物の名前を呼ぶ。
「アリス、出てこいよ」
俺がそう言うと、木の影からアリスが出てきた。
「・・・ばれてた?」
「当たり前だ」
なぜか知らんが、理事長曰く俺の魔力察知能力はかなりすごいらしい。
魔力の察知はもちろん、それが誰なのかもわかる。
「で、さっきの魔法は何だ?」
気絶して、拘束から解除されて地面に横たわっている学生達を踏んで、俺の横に並んだカルアがルミナスに問う。
「さっきのは、ただの拘束魔法だよ」
まじか・・・次元を歪ませといて拘束だけって・・・・・どんだけ。
「それよりも、はやとと生徒会長が手を繋いでいたことについて詳しく聞きたいな」
「・・・み、見てたのか?」
俺の言葉に頷くアリス。
「朝からはやとの姿が見えなくて、心配して窓から外を見てたら生徒会長の十八番の風雷槍〈ふうらいそう〉が見えたから、まさかって思ったら・・・・」
そこまで言って、アリスが俺を睨んできた。
「一緒にご飯食べたり、楽しそうにお店を回ったり。最後には手を繋いだり」
アリスは、俺からカルアに視線を移してカルアを睨む。
「ズルい!!ぼくもはやとと手を繋いで」
「繋いで?」
突然聞き覚えのある声が。
まさかな、と恐る恐る後ろを振り返ると梓、夏凪を筆頭に姫様達と生徒会メンバーが立っていた。
「詳しく、教えてもらいますか。ねぇ?はーくん」
こ、怖ぇぇぇえ。
何ですかこのヤンデレ。
目が据わってますよ?
今にも人を殺しそうな勢いが・・・・。
「わ、わたしは、はやととでぇとしてただけだもんっ!!」
あれ?カルアさん、何を言ってるんだろうか?
「でぇと・・・・・・会長、約束・・・」
そう言って前に出てきたのは、ユア。
そんなユアを見て、カルアは後退る。
俺はカルアにアイコンタクトをして、カルアもそれに頷いて答える。
とりあえず、逃げないとな。
俺とカルアはゆっくりと魔力を練り始めた。
命の危機を脱する為に。