67話→ツンデレ生徒会長!
「とりあえず、避けてくれぇぇぇぇえ!!」
俺はそう叫びながら、正面、つまり生徒会長の方に飛んだ。
髪の毛の天辺あたりが燃えるような感触はしたが、どうやら無事みたいだ。
ほっ、と安堵のため息を吐ける・・・わけもなく、次の危険がひしひしと迫っていた。
「ちょ!?どこ触ってるの!?」
俺は、その言葉に自分の手元を見る。
「っっ!?すまんっ!!」
俺は急いで手を退かす。
まぁ、胸を触ってしまっていたのはお約束ってな。
肝心な凹凸がなくて胸と気づかなかったというのは、言ったら死にそうだからやめとこう。
「いや、別にわざと触ったんじゃないんだよ。俺はツルペタには興味なゲフンゲフン」
興味ないと言おうとしたら、また魔力を練り始めたので誤魔化してみた。
「・・・・・・・」
生徒会長が、俺をジーッと見てくる。
「・・・・・・・・・」
俺はそれを沈黙で返す。
・・・・・・あるぇ?なんか妙な空気になってるよ?
「・・・・どうして避けれたの?」
呟くようにボソッと喋る生徒会長。
口調は素のままみたいだな。
「??別に、普通に避けただけだが・・・」
俺の言葉に、唇を噛み締める生徒会長。
「嘘だ!!わたし、頑張って練習して誰にも避けられない速さにしたのに・・・・それを避けるなんて・・・・・・」
「いや、まぁ、その・・・・たまたまだよ。ほら、火事場の馬鹿力ってやつ」
俺の言葉にう〜んと唸る生徒会長。
俺は生徒会長の次の言葉を待ちながら空を仰ぐ。
屋根の上で座りながら、正面には可愛い女の子の分類に入る生徒会長が居て。
学生は授業中だし、色々あったがなんだか気分がいい。
いつのまにか時間は昼前になっていた。
なんか腹も減ってきたし、そろそろ飯食べに行くかな。
俺は財布を取り出して中身を確認しつつ、ゆっくりと立ち上がる。
「生徒会長さん、俺、昼飯食うからそろそろお邪魔するわ」
ズボンについた汚れを叩いて、鞄を抱える。
さて、行きますか。
俺は足に魔力を集中させる。
ジャンプ力強化しないと、この家の庭に落ちてしまう。
それだけは絶対にいやだ。
「・・・・・・カルア」
ふと生徒会長の声がして振り向いてみると、生徒会長は立ち上がってスカートを叩きながらこっちを見てくる。
「わたしのこと、カルアって呼んで」
なるほど、自己紹介か。
確かに名前を知らないのは不便だしな。
「わかった。俺の名前は、知ってるよな?」
俺の言葉に頷く生徒会長、もといカルア。
「それと、その・・・・・・あの・・・・・む、胸を触った責任をとって」
そう言ってツンと顔を背けるカルア。
は?何ですか?
あんな事故同然のことに、責任をとれ、と?
「ぐ、具体的に何をすれば?」
俺は恐る恐る聞いてみる。
カルアはそんな俺の言葉にゴホンと咳き込むと、横目で俺を見てきた。
「そ、そうだな。もうすぐ昼時だし、昼飯をだな・・・・」
なんか、口調が生徒会長っぽくなってるなぁ。
似合ってないのに。
「あのさ、昼飯は奢ってやるからその口調はやめてくんねぇ?俺は素のカルアの方が可愛いと思う」
俺の言葉に、顔を真っ赤にしてぎこちなく頷くカルア。
なんだろう。軽く誉めただけなのにこっちも恥ずかしくなってくるな。
「と、とりあえず行こうか・・・・」
俺は恥ずかしさを紛らわすために、わざとらしく大きな声を出して屋根を蹴った。
そんな俺を恨めしそうに睨む犬の桃太郎を視線で追いながら、無事に地面に着地。
数秒遅れてカルアも降り立つ。
俺たちは気まずい雰囲気のまま、食事をするための店がある商店街に向けて歩き始めた。