66話→生徒会長の逆鱗!
「・・・理由は?」
とりあえず突っ込んだ後に質問してみた。
「・・・・・理由、本当にわからない?」
生徒会長が憐れみの視線をおくってくる。
「・・・・わからん」
俺は欠伸を1つして首の骨をパキパキと鳴らす。
「・・・・・・無断欠席、無許可の魔法使用。それに、ムカつくから」
「それが理由か?」
「そうよ」
むむぅ・・・最初の2つは確かに悪いことだよな。
あっちの世界の生徒会長なわけだし、正義感とかなのだろう。
しかし、最後の理由はどうだろうか。
かなり私的理由じゃん。
「てかさ、俺のことほっといてくれよ」
俺は鞄を抱えると、足に魔力をゆっくりと集中させる。
なぜか本能が逃げろと訴えかけてくるのだ。
「私が、気に掛けてやってるのに・・・・放っておけ、だと?」
生徒会長が怒気を含んだ声で唸る。
「俺、生徒会長さんのこと何も知らないし、てか名前すらも知らないし。気に掛ける必要なんてないから」
俺はそう言うと全力ダッシュで逃げ出した。
だって、なんかブツブツ呪文みたいなの呟いてたし、めっちゃ魔力練ってたし。
膝と声を震えださないようにするのが精一杯だった。
「・・・・ユアからは連れ戻してって言われたが、生きてとは言われてないよな?うん。」
逃げ去る時にそんな言葉が聞こえたが、気のせいだろうな。
気のせいであってください。
俺は公園から出ると、近くの家に飛び乗って走りだす。
できるだけ遠くに。
「待てぇ〜!!ぶっ殺す!!わたしがぶち殺してやる!!」
そんな声に、後ろを振り返ってみると体からバチバチと電気を放出しながら飛んでくる生徒会長がいた。
嘘だろぉ!!なんか口調変わってるし、子供っぽくなってるしぃ!!
まぁ、見た目子供だしいつもの口調の方が作ってるのだろう。
多分、今の方が素なんだろうな。
なんて考えてる場合じゃない。
問題は、なぜ空を飛べるのかということだ。
風魔法で空を飛ぶなんて、かなりの上級の魔法使いしかできないはずだ。
それを、高校の生徒会長が出来るなんておかしいだろ。
「死んじゃえぇぇ!!」
そう声がしたと思ったら、顔の横を電気のレーザーみたいなのが通過していった。
あれ?今耳を擦ったよな?
めっちゃ熱いんだが。
「てめぇ!!まじで死ぬから止めろやぁ!!」
「うるっさい!盗賊団の時見直したわたしが馬鹿だったんだよ!あの時の気持ち返せっ!!」
そう言ってもう一発電気を放ってくる生徒会長。
くそぉ!俺は魔法無効できる右手なんて持ってねぇぞ!?
この電気レーザー、超電磁砲レベルだろ!?一般人である俺が直撃したら死ねる、まじで。
「返せって!?何言ってんだよアホ!!無理に決まってんだろうが!!」
「あ・・・アホだって?風雷の姫〈ふうらいのひめ〉ってあだ名を王様から貰っているわたしが、アホ?」
「あぁん!? 幼体の姫〈ようたいのひめ〉だって?王様どんだけ変態なんだよっ!!」
さっきから飛んでくる電気砲を避けるのに必死で、よく聞こえなかったが問題ないだろ。
「ふにやぁぁぁぁあ!!よ、幼体ぃ!?わたしが、気にしてることをよくもぉ!!」
俺を追い掛けてきていた生徒会長が急に足を止める。
諦めたかな?と、スピードを落としたのが間違いだった。
「我は風と雷を操る者、我が名において命じる。全てを穿つ槍となれ!!」
その言葉とともに、風と雷が生徒会長の手に集まり槍の形を成していく。
それが大きな槍に成ると、生徒会長はにやっと笑った。
「消しとべぇぇぇ!!」
「まじかよぉぉぉお!?」
雷と風を纏ったその槍は、すごいスピードで俺の方に近づいてくる。
ここで二つ選択肢が出てきた。
1つ、抵抗せず正面から当たってあの世逝き。
2つ、魔力を振り絞ってなんとか回避する。
しかし、2つ目は逃げ道が正面しかないのだ。
前に飛んで避けなければならない。
後ろは家の屋根の終着点なわけで、しかも下には子供の頃トラウマになった犬の桃太郎がいる。
さっきからワンワンうるさいし。
家の幅が狭く庭が広いせいか、横に落ちても桃太郎に襲われてしまう。
かと言って、正面に逃げたら生徒会長の目の前にまっしぐらなわけで。
走馬灯ともいえるこの時間に頭をフル回転させる。
届くまであと30cmくらいの所で覚悟を決める。
俺は足に全力で魔力を集中させ始めた。