64話→校舎裏で!
寮から学校までは、5分とかからない。
けど、アリス達を連れて登校するとかなり目立つだろうし早めに寮を出ることにした。
朝寮から出ると、当たり前だといわんばかりに優がいた。
俺はみんなから少し距離をとりながら登校する。
まぁ、結構な人数で歩いているから俺のそんな行動に気づくはずもなく。
それに、アリス達のテンションがやたら高いし俺が目立たない。
ありがたいことだけどな。
みんなで喋りながらの5分というのはあっという間だ。
すぐに学校に到着した。
アリス達は転校生なので理事長室に向かう。
場所は優が案内してくれるそうだ。
優も職員室に用事あるらしいし、理事長は職員室の横だ。
ついでに、と本人から希望があったので任せることにする。
朝早めに登校したとはいえ、部活生より早く来れるはずもなくアリス達は部活生達の注目の的だったことは言うまでもないだろう。
俺は、夏凪と梓と一緒に教室にむかいながら、そろそろか、と気持ちを切り替える。
「あっ、夏凪、梓。俺用事あるから先に教室入ってて」
俺の言葉に疑わしげな視線をむけてくる二人。
「はーくん、どうしたの?」
「はやにぃ、用事ならついていこうか?」
俺は二人の質問に曖昧に笑いながら、二人に教室に入るように促す。
二人は渋々といった感じで教室に入っていき、俺はそれを見送るとできるだけ気配を消して男子トイレに向かう。
別にトイレがしたかったわけじゃない。
俺は教科書が詰まった重い鞄を小脇に抱えると、男子トイレの窓にかけより足に魔力を練る。
こっちの世界に戻ってきても魔法の練習をしていたおかげで、体の1ヶ所に魔力を集中させるのは1秒未満で出来るようになった。
この男子トイレは学校の3階にあるのだが、まぁ、いけるだろう。
俺は窓を開けて窓枠に足をかけると、軽く飛び降りた。
ゆっくりと着地。
俺が使える魔法は二つ。
強化魔法と、風の魔法。
風、と言っても下級レベルのやつしか使えないが。
誰もが使える風の魔法に、高いとこから降りたり物を落としたりした時に下から風を吹かせて落下スピードを軽減する魔法がある。
俺が使えるのはそれくらいだが、この魔法はかなり便利なのだ。
降りた場所は校舎裏。
滅多に人は通らないはずだから見られる心配は・・・・・・あれ?
なんだろ、なんか男3女1のグループにこっち見られてるんですけど。
ヤンキーかな?
俺はスルー気味にその人達の横を通り過ぎようと早足で歩く。
「た、助けてくださいっ!!」
そのグループの丁度横辺りに来たときに女の子が声をかけてきた。
今、なんて言った?
タスケテクダサイ?
何それ、食えんの?
俺は面倒なことには関わりたくないが、絡まれている女の子を見捨てれるほど腐っちゃいない。
念のためもう一度確認するか。
「あの・・・・今なんて言いました?」
「んだぁコラァ!!やんのか!?」
あらま・・・なんか男の1人、一番チャラチャラしてる奴(略してチャラ男)がこっちに絡んできやがった。
「あぁん?ははっ、よっしー止めときなよ。そいつ、池谷 ゴミトだぜ?」
男の中の1人、外見マッチョ(高校生に見えないのでオジサン)が俺を指差して笑いはじめた。
ゴミトとはこの学校の俺のあだ名だ。
まぁ、気にしちゃいないが。
「ゴミトかよ。残念だったなぁゆかりちゃん。助けは来なかったみたいだよ」
チャラ男が女の子を見てニヤッと笑う。
ゆ・・・ゆかりだと?
俺の好きな声優と同じ名前じゃないか・・・・。
「ほらほら、ゴミトは消えろよ」
3人の中でリーダー格っぽい男(眼鏡かけてるから眼鏡ヤンキー、略してメガヤン)が俺を睨んできた。
残念ながら、そんな睨みは恐くない。
てか、アリス達のが何倍も恐いからな。
女の子、ゆかりちゃんは諦めたように涙をこぼすと今までしていた抵抗を止めた。
「おおっ!やらせてくれる気になったのかぁ?」
オジサンがいやらしい手つきでゆかりちゃんの体を触る。
その時のゆかりちゃんが出した泣きそうなくぐもった悲鳴は、俺が動くには十分な動機だった。
「お前ら・・・・俺はゴミトだけどなぁ・・・・・・俺にやられたらお前らはゴミ以下になるってこと、覚えとけよ?」
そう言って拳を握る。
フラグなんて全部成立させてやんよ!!
心の中でそう叫び、不良達に突っ込む。
目指すは、ゆかりフラグ成立だ。