60話→星満寮!〜中編〜
「・・・嘘だろ?」
時間を潰し始めて1時間くらいたった時、母さんが荷物と一緒にいらない情報まで持ってきやがった。
「葉雇の部屋は、基本出入り自由だから」
そう言って、母さんより少し早いくらいに着いていたらしいアリス達に俺の部屋の鍵を配る。
なぜか全員俺の部屋に集まっているし。
俺にプライバシーはないのだろうか?
「母さん。さすがにその冗談は笑えないなぁ」
俺はそう言いながら鍵を回収しようと立ち上がる。
「よし、まずアイリス。鍵を返してもらおうか」
俺はアイリスの正面に立つと、にこやかに笑いながら手を差し出す。
「はやと様、い・や・です」
拒否られてしまった・・・・・・。
「アイリス、理由は?」
ここでアイリスが暴論を言えば、それを理由に鍵を回収できる。
「私は、はやと様のメイドですから。鍵があった方が便利ですし」
俺は普通の正論にたじろぐ。
くっ・・・まだ、次は・・・・・・。
「じゃあ、夏凪と梓、鍵を渡してもらおうか」
俺の言葉に、にやっと不敵な笑みを浮かべる二人。
「はーくん。メイドさんは良くて、幼なじみは部屋に入る資格なんてない、とか言わないよね?」
「そーだよ。メイドは鍵を持ってて、家族であるかなが鍵を持ってないなんて許されると思ってるのかな?はやにぃは」
うぅ・・・こいつらもまっとうな意見だ。
どうにもこうにも、俺は口がうまくないらしい。
アリス達にも惨敗してしまった・・・。
とりあえず、この話は終わり時間的にも晩飯を食べたくなったわけで。
母さんを見送って、一緒に見送りをしてる、なぜか寮に入ることになった梓と夏凪に向けてわざとらしくため息をつく。
明日も学校があるし、俺はさっさと晩飯を食べることにした。
現時刻は19時40分過ぎ。
晩飯は寮長の流さんが作ってくれるらしく、まぁ俺がするはずの家事が減ったので、その点は嬉しいが。
ちなみに流さんが作ってくれるのは昼飯の弁当と晩飯だけらしく、朝飯は自分達で作らないといけないらしい。
俺と夏凪と梓は、母さんの車の影が見えなくなるのを確認すると、食堂に向かって歩きだした。
「言っとくけど、俺は自分の分の朝飯しかつくらんからな」
食堂に向かいながら梓と夏凪に宣言する。
たまには仕返ししないとな。
「えぇ〜!はやにぃ、かなを飢え死にさせる気?」
夏凪が腕にまとわりついてきた。
「甘えたって無駄無駄。朝飯抜いたくらいじゃ、飢え死にしないから」
俺は夏凪を離しながらニヤッと笑う。
ふふふ・・・ざまぁ。
「夏凪ちゃん、自分で調理くらいしなきゃね〜」
のほほ〜んと笑う梓。
料理音痴が何言ってるんだか。
目玉焼きすらまともに作れないくせに。
「はーくん?何考えてるのかな?殺すよ?」
「・・・・・・ごめんなさい」
こいつ、人の心でも読めるのか?
「でも、梓姉は料理作れないでしょ?かなに言えた義理じゃないじゃん」
「大丈夫。私は、朝ご飯にはーくんを食べるかりゃ」
また噛みやがったかこんちくしょー。
思わず吹き出しそうになった・・・・・・・・・って、待て。
「おい、俺を食べるってどういう意味だよ」
まさかとは思うが・・・・。
「そのまんまの意味だよ?はーくんのを食べるって意味・・・・・・興奮した?」
「してねぇーよ」
嘘だが。少し興奮、というか、テンション上がったが寮に入って初日に問題は起こせないだろ。
いや、別に初日じゃなけりゃ良いって意味じゃないよ?
「梓姉、そんなこと、かながさせると思っているのかな?」
「ふっ・・・夏凪に邪魔できるとでも?」
二人は火花を散らせ始めた。
俺はそんな二人を放置して、腹の虫を収めるべく食堂へ急いだ。