56話→再会!
「さぁ、準備はいいか?」
理事長先生の言葉に私達は頷く。
はやとの世界に行くのは、お姫様達とアリス、ルミナスとアイリス。
それに、私を含めた生徒会メンバーだ。
私以外の生徒会メンバーは最初は嫌がっていたが、理事長先生の「社会見学だと思え」という一言に渋々頷いていた。
理事長先生は女関係をややこしくして、傍観者として楽しむ癖がある。
あっちの世界ではやとは大丈夫だろうか・・・。
私の心配をよそに、みんなが陣形をとる。
理事長先生の開発した機械を囲むように輪になり、精霊の瞳を持っているルミナスが機械に腰かける。
それを見計らったように理事長先生が何かのボタンを押すと、体中を微量の電気が流れて体がピリピリする。
「よし!学園の名に恥じぬように頑張ってこい!!」
理事長先生の言葉に頷く間もなく、浮遊感がおそってきて意識が途切れた。
「今日でジャスト1ヵ月かぁ・・・・」
俺は懐かしむようにその場所を見渡す。
なんとなく、久しぶりに来たくなったのだ。
この、大きな桜の木の下に。
まぁ、授業中にこの桜の木を見た時から来たいなぁってなんとなく思ってたのだが。
俺は後ろを振り返り誰も来ていないことにほっと息をつく。
学校を出る時に、一人でどっかに行こうとしてる俺をしつこく追い回した夏凪と梓と優。
それと海知瑠。
全員をまくのは流石にだるかったが、なんとか成功したみたいだ。
俺は桜の木の近くまで行くと、手を伸ばしてそっと桜の木に触れる。
今だからわかる。
この桜の木に膨大な魔力が流れていることを。
改めてこの桜の木の存在感を実感した。
その時。
桜の木の中の魔力が凄い勢いで渦巻き始めた。
俺はビックリして2、3歩後退り・・・・桜の木を見上げて目を丸くした。
散っていたはずの花びらが、満開に咲き誇っていたのだ。
突然の出来事に驚いたものの、俺の口から自然と出た言葉は自分でも予想外のものだった。
「綺麗だ・・・・・・」
まさに見事としかいえないその光景に見入る。
すると、もう一つ不自然なものを見つけてしまった。
それは、まだ夕方前だというのに空に輝く複数の星みたいな光。
それは徐々にこっちに近づいてきていて・・・・・。
「ちょっと待ったぁぁぁ!!」
俺は、とりあえずこの場所から逃げ出すために走りだす。
しかし、こういう時人間というものは冷静になれないのだ。
俺は足をもつらせて転んでしまった。
それを待ってたかのように、俺の周りにその光がどんどん落ちていき・・・・。
できるはずのクレーターができないのを見て、それが何かによって、着地時の威力が抑られたことを理解した。
その威力軽減ができるものを一つ知っている。
それは魔法。
まさか、と思い砂ぼこりがたつ中に立っているその人達を見回す。
「嘘・・・だろ?」
俺は目を擦りながらその事実を確かめる。
頭がその人達を認識した時、俺は意識もせずに笑みがこぼれるのを感じた。
「コホコホッ・・・・・・あ・・・・・・・・・」
砂ぼこりの中から咳をしながら出てきたその人物は、俺を見るなり目を丸くして固まっている。
「はやと!!」
その人物は俺を見て何度か瞬きすると、俺の名前を叫んで俺に抱きついてきた。
俺はしっかり受けとめる。
「・・・アリス、久しぶり」
俺は頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
アリスはニコッと笑うと目に涙をためて抱きつく力を強めた。
「会いたかったよ・・・・」
俺はたった1ヵ月、いや、1ヵ月も顔を見ないだけでこんな気持ちになれるとは思わなかった。
「俺も、会いたかった」
「はやと!!?」
俺の声はグリムの声にかき消された。
「久しぶり」
砂ぼこりが完全になくなると、誰がいるのか見回せる。
俺は笑みを浮かべながら1つの疑問を頭に浮かべた。
こいつら、どこに住むんだろ?
自分の家でないことを祈りつつ、それぞれと挨拶をかわし始めた。