55話→会うために!
こっちの世界に戻ってきて1ヵ月がたとうとしていた。
俺があっちに行ってから3ヶ月たっていたので、俺は1学年進級して高校3年生になった。
学年が変わっても、俺の周りの環境が変わるはずもなく、虐め、というものが少なからず続いている。
進級初日に隣の席のやつにグチグチ言われたし、他にもいろいろとやられた。
証拠を残さない虐めばっかだから尚更たちが悪い。
でも、あっちに行く前ほど気にはならなかった。
まぁ、あんま気にしないせいでさらに過激になりつつあるのは頭を抱えたくなるが。
もちろん、梓、優とは同じクラスだ。
これは母さんの考慮によるものだ。
今年は、妹の夏凪とも一緒のクラスになった。
今までは、俺が頼んでクラスを離してもらってたんだが今年は夏凪が母さんに熱心に頼み込んで同じクラスにしてもらったらしい。
妹はわりと人気者だし、俺に近づいて友達をなくしたりしてほしくなかったんだが・・・。
まぁ、それは杞憂に終わったが。
妹が親友だと紹介してきた女の子を見て俺は驚いたね。
こっちの世界に戻ってきた時に最初に会ったユアに似た女の子だったし。
確か、名前は小野 海知瑠〈おの みちる〉だったかな。
そんなこんなで、友達かはわかんないけど俺を嫌いにならないでいてくれる人が一人増えた。
5月。
俺は授業を適当に聞き流しながら、窓際の席の特権で外を見る。
学校からでも見える大きな桜の木は、花を散らして静かにたたずんでいる。
桜の木から視線をあげて、空を見上げる。
どこまでも続く青い空を見ながらあっちの世界のみんなを思い出す。
(みんな、どうしてるかなぁ・・・)
「・・・・魔力はこれでいい」
私がそう言うと、みんなは嬉しそうに歓喜の声をあげた。
はやとが元の世界に帰った日。
もう会えない、と泣いているみんなに私は声をかけた。
この『可能性』を知っているのは、生徒会メンバーと理事長先生だけ。
「・・・・・・また・・・会える」
私の声に、みんなが驚愕の表情を見せる。
私は、ルミナスの胸にある精霊の瞳を指差す。
「・・・それが何かわかる?」
一時の沈黙。
そして、アリスが突然声をあげた。
「あっ!!そうか!もう1つの精霊の瞳ははやとが持ってるんだよね!!?」
アリスの言葉に私は頷く。
その言葉にお姫さま達が納得したように唸る。
でも、ルミナスとアイリスは首を傾げている。
それもそうだろう。
精霊の瞳というアイテム自体滅多に手に入らないのだ。
その事実を知ってるのは、学者か王族くらいだ。
わからない二人に、理事長先生が説明を始める。
「二人とも、よぉく聞けよ?一度しか言わないからな?」
理事長先生の言葉に頷く二人。
「精霊の瞳、というものは対でしか存在しないんだ。今回、ルミナスやはやとが手に入れた精霊の瞳は青だったな。青は世界に二つとないんだ。それは他の色のやつでも同じなんだがな」
理事長先生は、そこで息を吸って再び説明をはじめる。
「つまりだな。青い精霊の瞳は、はやととお前しか持っていないわけだ」
そう言ってルミナスを指差す理事長先生。
「・・・だいたいわかりましたけど、それがはーくんに会えるのとどんな関係があるんですか?」
「そうですね。私もはやと様とどういう関係があるかわかりません」
二人の言葉に、待ってました!という感じで理事長先生はニヤッと笑う。
「まぁ、待て。精霊の瞳というのは、魔力保存機関ともう一つ力を持っている。それは、繋ぐ力だ」
「繋ぐ力・・・?」
ルミナスが首を傾げる。
「あぁ、対であるが故に繋がる。つまり、お前の精霊の瞳とはやとの精霊の瞳は繋がっているんだ。私が開発したこの機械は、自分が行きたい場所と繋がる物があればどこにでも行ける・・・・・・ここまで言えばわかるな?」
理事長先生の言葉に、アイリスとルミナスが頷く。
「つまり、さっきはーくんが元の世界に帰ったその機械とかいうものを使えば、またはーくんに会えるんですよね?」
「・・・はやと様にまた会える・・・・・・」
二人の言葉に大きく頷く理事長先生。
「あぁ。一人だけなら精霊の瞳と精霊の瞳があるだけで会いに行けるんだが・・・・・会いたいのは一人ってわけじゃないんだろ?」
理事長先生の言葉に、生徒会を除いたメンバーが頷く。
除いた、といっても私は違う。
この世界では星が好きな人はあまりいないのだ。
はやとに会ってもう一度星を見に行きたい、私は強くそう思っていた。
そういうわけで、機械に魔力を急速に蓄めるために。
それでも足りない魔力を補うために精霊の瞳に魔力を蓄めるために私たちは動きだした。
はやとに会える。
それだけを糧に。
もちろん、グリムやケンも仲間に加わった。
そして、1ヵ月という月日が流れて全ての準備が整った。