54話→温もり!
「さて、これはどういうわけだ?」
俺は、俺の部屋のベッドに寝転がっている二人。
夏凪と梓に問う。
「いや、久しぶりに帰ってきたんだし、もっとはやにぃといちゃいちゃしたいし」
・・・・・妹という立場を忘れてるんじゃないのか?こいつは。
「私は、はーくんと久しぶりにいろいろしたいし」
んー?ベッドの上でいろいろなんて今までにしたことないよな?
久しぶりなんて誤解を生むようなこと言いやがって・・・・・。
「てか、梓は帰ろうぜ?」
現時刻は21時52分。
梓と夏凪に宝物をビリビリに破かれて、落ち込みつつ晩飯食って歯磨いて、で、寝ようとしたら二人がベッドに居た、と。
てか、梓はこんな時間に健全な男の子の部屋に居て平気なのだろうか・・・・。
「・・・はーくん?まさか、私だけ部屋から追い出して妹である夏凪ちゃんといやらしいことをしようなんて」
「思ってません」
俺は即座に拒否を示す。
「えー、しないのぉ?いやらしいこと」
・・・・・夏凪は無視だな、無視。
「とりあえず、はーくんにごちゃごちゃ言われる心配はないよ。母さんにも泊まっていいって許可貰ったし」
おいおいおい・・・・桐香〈とうか〉さん何で許可してんだよ・・・・・・。
ちなみに、桐香さんとは梓の母親の名前である。
それに加え、母さんと親友であることを言えば、だいたいの性格はわかってくれるだろう。
類は友を呼ぶ。
いやな言葉である。
「いや、許可をとったのはわかったが俺のベッドに寝る理由は?」
「「お母さんから許可を貰ったから」「真里逢さんか許可を貰ったから」」
二人の声が重なるとともに、どっと疲れた。
あの人は何言ってんだよ・・・。
「俺に拒否権は?」
「「ない!」」
俺は絶望しながらも、母さんに少し感謝した。
従妹と妹とはいえ、女の子と寝れるのだ。
多少は嬉しい。
それに、夏凪は血つながってないし、従妹である梓とも血がつながってない。
まぁ、二人の血は繋がってるけど。
詳しい事情はさて置き、世間様から見たら妹と寝るのは好ましくないだろう。
年齢的に。
俺が17で夏凪が3月生まれの16、梓も17なのだが・・・・やはりダメだ。
俺が、我慢できずに精神崩壊を起こすかもしれない。
しかし、二人から寝ろと言われたら寝るしかない。
教育、という名の理不尽な要求にいろいろと対応しているうちに拒否する心がどっかに消え去ってしまったのだ。
俺はおとなしく布団に入る。
すると、俺の両側に二人が入ってきた。
右側に夏凪、左側に梓といった具合に。
「電気、消すよ?」
「あ、あぁ・・・」
梓の言葉によからぬことを考えてしまったのは、まぁ、年頃だし仕方ないね。
「はやにぃ・・・」
そう呟いて俺の腕にしがみついてくる夏凪。
「はーくん・・・・」
逆の腕にしがみついてくる梓。
こいつら、俺を殺す気か?
「二人とも、暑いからやめてくれ・・・・」
「む。はやにぃ、やっぱなんか隠してるね?前はもっともっとって言ってたのに」
・・・言った覚えがありません。
「はーくん・・・・実はさっきの旅をした話は嘘だった、なんて言わないよね?」
実は嘘なんだけどね。
「い、言わねぇよ。あほか」
俺の言葉に、俺の顔をじーっと見る梓。
視線が痛い・・・・。
「・・・はーくん本当に帰ってきたんだよね?私の夢とかじゃないよね?」
「当たり前だ」
俺の肯定の返事に、腕をつかむ力を強くしてくる梓。
「はーくんの、暖かい」
梓は、そう言って顔をなすりつけてくる。
なんか猫みたいで可愛いな。
「あー、梓姉ぇずるい〜」
そう言って夏凪も俺の腕に顔をスリスリしてくる。
俺は二人の温もりに、こっちの世界に戻ってきたということを改めて実感した。
空には星が瞬き、今日も夜は更けていく。