52話→自室にて!
風呂から上がり、さっぱりした頭をタオルで拭きながら夏凪と梓にどう言い訳しようか考える。
たぶん母さんのことだから、二人に言うことは確定事項だ。
息子が帰ってきたばかりだというのに、早速いじられるとは・・・・。
不幸だ・・・。
どこぞの不幸な右手を持つ野郎ではないが、そう言いたくなる。
彼とは女運の悪さで共感できそうだな。
俺は頭を拭き終えたタオルを洗濯籠につっこんで、体を別のタオルで拭いて服を着る。
そして、重い足取りで自分の部屋に戻る。
部屋の前に立ち、怒られる覚悟を決めてゆっくりと部屋のドアを開ける。
「はやと!?」
「!?うへぇ!??」
ドアを開けた瞬間誰かが抱きついてきた。
誰かと思いその人物を見ると、予想外。
まさかの優だった。
だって、男だぜ?
俺にそっちの趣味はないんだが・・・・。
「優・・・お前、何してんだ?」
優は、慌てたように俺から離れて顔を赤くする。
「ご、ごめん。僕、つい」
そう言って舌をペロッと出す優。
普通の男が舌を出したりしたら殴りたくなるが、女っぽい顔をしている優がすることによって癒しの力になってしまう。
ケンに似てるな。
そう思うと、不意に笑みがこぼれる。
「別にいいよ、気にしてないから」
俺が笑いながらそう言うと、顔をさらに赤くして何か呟き始める優。
「いや・・・・でも・・・・・・まさか誘ってる?・・・・・・・・・ないか・・・」
聞きたくないような単語が聞こえたのは気のせいだよな?
「優?きょどってどうしたんだ?」
「いっ!?いや・・・なんか、葉雇変わったなぁって」
そう言って俺をジッと見てくる優。
「ん?まぁ、これは久しぶりだな」
俺はそう言いながら前髪をいじる。
ここまで前髪を短くしたのはかなり久しぶりだからな。
「いや、そうじゃなくて・・・」
優の言葉に首を傾げていると、コホンと咳払いする声が二つ。
俺は、さっきから視界に入ってたけどあえて無視していたそいつらに視線を向ける。
「あー、お二人とも。久しぶり」
俺の言葉に咳払いをやめて、ドスドスと近づいてくる二人。
「「久しぶり、じゃなーい!!」」
二人は唾を飛ばしながら叫ぶ。
「ど、どうしたんだ?」
「どうしたんだ?、じゃないよ!かながどれだけ心配してたかはやにぃにはわかるの!?久しぶりに会ったと思えばなんか前より格好よくなってるゴニョゴニョ」
久しぶりからよく聞きとれなかったが、俺の素っ気ない挨拶がお気に召さなかったのだろう。
ちなみに、今のは妹の夏凪。
自分のことを“かな”って呼ぶあたりも含め、見た目のロリ要素と相成っている。
ロリ趣味がある人には喜ばしいかぎりだろうな。
「確かにだよ?はーくんは、私と夏凪ちゃんがどれだけ心配したかわかってるにょ?」
うん。
久しぶりに聞いたな、梓節。
梓は所々噛んでしまったりするドジッ子なんだが、性格は正反対。
噛むことをネタに笑ったりしたら、リアルに殺されかねない。
「あぁ、二人ともごめんな?」
俺はそう言って二人の頭を撫でる。
なんかテレビとかにも出てたし、心配してくれていたのは確かだ。
ゆっくりと確かめるように頭を撫でて、手を離す。
二人は名残惜しそうな目でこっちを見ていたが、俺はあえてスルーした。
そして、部屋の中にいる三人。
優と夏凪と梓を見回して、にっこりと笑う。
「ただいま」
「「おかえり」」
母さんともしたやりとりをみんなとする。
夏凪と梓はなんかポーッとしてるが。
「はやにぃ、やっぱり目とか出してた方が似合ってるよ?」
「・・・そうか?」
俺は、夏凪の言葉に照れたように頬をかく。
いい感じの雰囲気が部屋に漂う中、それをブチ壊す足音が近づいてきた。
「夏凪!梓ちゃん!!いいことを教えてやろう!」
その母さんの声に、色々と覚悟を決めてため息をつく。
・・・・・最近ため息多すぎて泣けるな、本当。