48話→帰還!
理事長の言葉に喜ぶ俺とは対照的に、他の人は絶望したような顔をしていた。
そんな顔を見ると、喜んだ自分が恥ずかしくなった。
「ま、まぁ、今すぐ帰らなくてもいいんだし・・・・なぁ?」
どんよりとした空気に耐えられなかったのか、理事長が俺にそう振ってきた。
「・・・・いや、今すぐ、帰ります」
俺の空気読めない言葉に何かを察したのか、理事長が一度だけ頷いて歩きだした。
「わかった。こっちだ。ついてこい」
俺は歩きだした理事長に、コクッと頷くと、悲しそうな顔、俺が一番大嫌いな表情をしているみんなをそれぞれ見る。
「えっと、グリムとケンには別れの挨拶出来なくてゴメンって言っといてくれるとありがたい。それと・・・・・・」
そこで言葉を句切り唾を呑む。
「ごめん、な?」
みんなの悲しそうな表情を見てると、もうお別れだということを実感して泣きそうになる。
せめて最後は笑顔で。
そう思った。
だから、別れ際の今は泣きだしそうな気持ちを押さえて全力の笑顔で笑う。
「それと、ありがとう」
そう言い残して理事長の後を追った。
俺のこの世界での部屋“だった”場所から、みんなの泣く声がする。
俺は唇を噛み締めながらゆっくりと歩を進めた。
「・・・着いたぞ」
理事長の後を追っていると、学園の地下みたいなとこに来た。
その場所に、一際大きい扉の部屋があった。
その中に入ると、いろんなコードが繋がっている鉄製の椅子が真ん中にあり、それを囲むように生徒会のメンバーがいた。
俺は促されるままにその椅子に座る。
「精霊の瞳は・・・・ちゃんと着けてるな?」
俺は理事長の言葉に頷く。
さっきから喋っているのは理事長と俺だけで、生徒会メンバーは無言を貫いている。
表情もどこか暗いし、何かあったのだろうか?
「・・・っ、よし。準備は整った。力を抜いて、ゆっくりと目を閉じてくれ」
「・・・・わかった」
準備、とやらは10分程度で終わった。
俺は指示通り目を閉じて、誰にも聞こえないように呟く。
「さようなら」
それを見計らったように体中を電気のようなものが流れる。
「ぐっ・・・・!?」
俺は歯を食い縛り、この世界でのことを思い出した。
色々あったなぁ・・・・・・って、なんか走馬灯みたいな感じじゃないか?
あれ?俺、本当に帰れるんだよな?
俺が不安になっていると、部屋の扉が開く音がした。
「はやとっ!!」
ん・・・・?アリスか?
俺はゆっくりと目を開けると、扉から部屋の中に入ってきたみんなの姿が見えた。
グリムとケンはいないっぽいな。
やっぱ別れの挨拶を自分で出来なかったことはつらいなぁ、とか思っていると体が宙に浮く感じがした。
「はーくん!!」「はやと様!?」「はやと!!」
みんなの声が重なる。
それと共に、頭が真っ白になっていく。
最後に聞こえたのは・・・・・たぶん生徒会副会長のユアの声。
「また・・・・一緒に星を」
その声を最後に、俺の意識は完全に途切れた。
なんだろう・・・・なんか落下してるような感覚が・・・・・・。
俺は、ゆっくり目を開くとともに、現状を理解した。
というか、しなければならなかった。
現在、どっかの空を落下中。
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!?」
俺の叫び声は、青い空の中に霧散して消えた。
さて、どうしよう。
このまま落ちれば間違いなく死ねる。
俺はふと魔力を全身に巡らせた。
・・・魔力使えるんだな。
元の世界に戻ってきたのであればすごい発見だ。
・・・・ん?
俺は少しづつ見えてきた見覚えのある形に目を凝らす。
俺が住んでいたとこの特徴は珍しい形をした島。
人工は割と多い。
俺の母親が理事長になれたのも島の学校だったからだろう。
星の形をした、星満島〈ほしみじま〉。
それがどんどん近づいてきてる。
俺は態勢を整えて足に持てる魔力を全部集中させた。
到着まであと少し。
「いってぇぇぇぇぇえ!!」
なんとか着地。
足に猛烈な痛みがはしったものの、骨とかは無事なようだ。
辺りを見回す。
そこには見覚えのある木がそびえ立っていた。
この島で一番大きな桜の木。
風に揺れて桜の花が散る。
俺は、帰ってきたことを改めて実感した。
次回から第二章に入ります〜。 頑張りますので、楽しみにしてくれるとありがたいです〜。




