44話→停戦協定!
チョコは、名残惜しそうに唇を離すと潤んだ目で俺を睨む。
「は、はやとが悪いんですわ・・・・・わたくしは、こんなにも・・・・・・」
チョコはそこで一旦句切ると、チョコを制止させようとしている格好で固まっているアリスを見る。
「わ、わたくしは、誰よりも早く、き、き、既成事実というものを作りますわ!」
チョコはアリスにそう宣言すると、俺に視線を戻す。
「と、と、というわけで、キスの先を実行したいと思います、わ」
チョコは、少し裏返った声でそう言うと俺の服を脱がし始めにかかった。
俺は貞操の危機を感じ、さすがに抵抗しようとした。
「こ、これは、わたくしのためであって・・・・・べ、別にはやとのためじゃないんですのよ!」
その言葉に俺は抵抗をやめた。
デレないツンは嫌いだが、デレデレなツンは大好物だったり。
それと相成って、チョコもさっきまで風呂に入ってたのか甘い石鹸の匂いが・・・・・
さっきから動けない原因にこの匂いもあったりなかったり。
「っっ!?はやと!何してるのかな!?」
アリスは抵抗を見せない俺に声をかけて、チョコを睨む。
「き、キスの先は、チョコみたいなお子様にはまだはやいんじゃないかな!!」
そう言って、チョコの手を掴むアリス。
「何するんですの!邪魔ですわよ!?それに、あなたにお子様なんて言われたくありませんわ!!」
俺の服を脱がせる手を止められて、眉を吊り上げるチョコ。
まぁ、俺から言わせれば二人とも幼児体型のお子様なんだが・・・・・・
口には出せない、出した瞬間どうなるかわかんないからな。
「ぺったんこの癖にぃ!!」
「そ、そっちこそ、ぺったんですわ!」
どっちもどっちなんだがなぁ・・・。
それより、二人とも人の体の上で争わないでほしい。
めちゃくちゃ痛い。
「二人とも、そろそろ諦めて退いてくれぇ」
俺は、悲鳴にも似た声を出す。
二人は俺の声に動きを止めると、お互い睨み合いながらゆっくりと俺の上からおりた。
ふぅ・・・・・。
ため息をひとつつく。
「隙あり!」
チョコが降りるのを見たアリスは、再び俺の上に乗ってきた。
「ちょ、アリス!」
所謂マウンドポジションに座っているアリスは、愕然としているチョコを見ると鼻で笑った。
「ふふん、これではやとはぼくのもふにゃぁっ!?」
チョコは涙目になりながらアリスの頬を引っ張る。
「ズルいですわ!! わたくしが先にゃっ!?」
アリスも負けじとチョコの頬を引っ張りだす。
「ちょ、まじ苦しいから退けてくれよ!」
俺の言葉に再び動きを止める二人。
マウンドポジション、つまり腹の上に乗っているアリスだけならまだいい。
しかし、対抗するように俺の顔に尻を向けて胸の上に乗っているチョコがかなり問題だ。
動くたびに見えるパンツとお尻。
やばいね、コレは。
苦しいと言っても、物理的なものではなく、精神的にきついのだ。
そろそろ耐えられない。
「しかたありませんわ。今だけ、停戦協定を結ぶことを提案します」
「・・・・そうだね」
何やら、争いをやめてくれたっぽい二人。
そっと安堵のため息をつくと、耳を疑うような声が聞こえてきた。
「では、わたくしは上を。そちらは下を、で」
「そうだね、それでいいよ」
なんか、とっても意味がわかってしまったんだが。
まぁ、杞憂ってこともなきにしもあらず・・・・・・・・・って、アリス!?何故にスカートを脱ぎ始める!?チョコは何故に上着に手をかける!?
どうやら、杞憂じゃないらしい。
これはまじで貞操の危機だ。
「は、はやと。ぼく、初めてだから、その、優しくしてね?」
チョコ越しに聞こえるアリスの声に興奮が高まる。
「わ、わたくしが相手をしてあげるんだから、ち、ち、ちゃんとしてくれますわよね?」
俺の服を脱がし終えたチョコが頬を赤くして遠慮がちに呟いた。
やばい。そろそろ理性が抑えられません。
「・・・あんたら、何してんの?」
突然ルナの声がした。
どうやら、風呂から上がってきて部屋に戻ってきたらしい。
天の助けに聞こえたのは確かだ。
つか、結構こういう場面で邪魔入るよな。
喜ぶべきか、嘆くべきか。
とりあえず、現状では喜ぶべきだろう。