43話→負けたくないから!
えっと、続けてほしいと書き込みしてくれたみなさん。 本当にありがとうございます。 かなり嬉しかったです。 と、いうわけで、まだまだ続けていきたいと思いますのでよろしくお願いしますm(__)m
その時間はどれくらい続いただろうか。
アリスと唇を通して一つになっている感覚。
俺はゆっくりと唇を離した。
「ご、ごめんな。いきなり」
俺は自分の気持ちが抑えられなかったことを謝罪する。
好き、とは言ってくれたけどいきなりキスはやりすぎだったか、と後悔した。
そんな俺の言葉に首を横に振るアリス。
「だ、大丈夫だよ?むしろありがとうって言いたいくらいだし」
アリスはそう言って立ち上がると逃げるように風呂場から走り去った。
俺はそれを見送ると、少し冷めてきた体を再び暖めるために湯槽に浸かった。
「・・・・・これで、よかったんだよな」
誰もいない風呂場で一人呟く。
これで、気持ちが少し楽になったと思う。
自分の気持ちを伝えることができたわけだし。
俺はゆっくりと空を仰いで、残り少ない時間をどう過ごすか考え始めた。
はやととキスをした。
その事実がアリスの頭の中を駆け巡る。
風呂から上がって部屋に戻った今でも、あの時のはやとの顔が頭から離れない。
近く、はやとの顔がこれでもかというくらい近くにあった。
そして、あの柔らかい唇の感触。
その時に感じた体が疼く妙な感じ。
思い出す度に顔が赤くなるのを感じる。
アリスはベッドの上で、一人悶えていた。
「な、何をしていますの?」
少し引き気味な声がする。
声から察するに・・・・・・チョコかな?
そう思い、声がする方に視線を向けると、訝しげな顔をしているチョコが立っていた。
「にへへ〜、なんでもないよ」
アリスは意識もせずに頬が緩むのを感じた。
それは、はやとに同じ気持ちを持つ者としての優越感からの笑顔と思い出し笑いの両方からくるものだ。
そんなアリスの様子に何か気付いたのか、チョコが眉をひそめる。
「・・・まぁ、いいですわ。わたくしの予想が正しければ・・・・・・」
ガチャ。
ある予想を口に出そうとしたとき、誰かが部屋に入ってきた。
「・・・ん?二人だけか?」
俺は風呂から上がり部屋に戻ると、アリスとチョコの二人しかいなかった。
「お姉様達なら、まだお風呂ですわ」
「・・・・・・」
現状を説明してくれたチョコに対して、アリスはベッドの上でボーッと俺を見つめている。
「そ、そうか。まだ帰ってきてないのか」
俺はアリスの視線に苦笑しながら自分のベッドに腰をかける。
すると、同じようにチョコも俺のベッドに腰をかけた。
「チョコ、どうした?」
そんなチョコを見て俺は首を傾げる。
こいつが自分から俺に近寄ってくるのは稀なことなのだ。
「アリスと何かありましたの?」
チョコのその一言に冷や汗が出るのを感じた。
なぜなら、チョコからツンデレオーラではなくヤンデレオーラを感じたからだ。
・・・自分で言ってて意味わからんな。
「さ、さぁ?」
俺が目を逸らしながら言うと、チョコのヤンデレオーラの濃度が強くなった。
「わたくしには、言えない?言いたくない、と?」
うぅ、図星だ。
なぜかわからんが、今チョコを怒らせたら、言葉様もびっくりな展開になりそうな予感が・・・・・・
俺は助けを求めるようにアリスを見ると、アリスは照れたように目を逸らした。
今、そういうのいらないから。
俺は内心を読み取ってくれないアリスに絶望しつつ、どうしようか考える。
「いやぁ、今日は眠いなぁ」
話を逸らすことにした。
「・・・・アイリスにも負けて、アリスにすら勝てませんの?」
チョコが何かを呟いた。
「あ?チョコ今何言って」
そこまで言った時、突然チョコが俺をベッドに押し倒した。
チョコと俺のガタイの差を考えれば押し返すことはできたが、なぜか今はそんなことをしてはいけない気がした。
なんとなくだが、今はその勘を信じてみようか。
「はやと、わたくしは誰にも負けたくないんですわ」
チョコの言葉に首を傾げる俺。
「・・・何を?」
「っっ!はやと!」
チョコが何を言いたいかに気づいたアリスが声をあげる。
「わたくしも、アリスやルミナス、アイリスみたいに、はやとに優しくしてほしい・・・・ですわ」
そう言ってゆっくりと顔を近付けてくるチョコ。
「ダメ!ダメだよ!!はやとはぼくの」
アリスの言葉はそれ以上は続かなかった。
なぜなら、チョコがアリスの制止を無視して俺にキスをしていたから。
俺は抵抗する気持ちすら湧かない、自分のたらしっぷりに呆れてしまった。