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らぶゆっ!  作者: 璃瑠@
44/92

42話→重なる唇!



「そっか・・・・」



少しの沈黙の後、俺はポツリと呟いた。



アリスは、俺の返事を待つように顔を伏せている。



「アリス、これはルミナスにも言ったんだが・・・・・俺はこっちの世界で誰かと恋人関係になりたくないんだ」



俺の言葉に、ビクッと体を震わせるアリス。



「・・・・・・・・・そうなんだ」



「別にアリスが嫌いってわけじゃない。それは他の人にも言えるんだが・・・・・・俺は、別れるのが恐いだけなんだ」



「恐い・・・?」



「うん、正確には悲しむ顔を見るのが恐いんだけど」


俺はそう言って苦笑した。


そして、なぜ悲しむ顔が恐いか、という理由をアリスになら話してもいいかなと思った。



まぁ、その理由は簡単だ。


俺は、いや、俺もアリスのことが好きだったから。



初めて会った時、俺がにんげんだと知っても普通に接してくれた。



たぶん、他の人、アリス以外の誰かに会っていたらにんげんというだけで差別されていただろう。



そうなってたら、俺は今ここにいない。



アリスの笑う顔が好きだった。

俺が他の女の子と喋っていると嫉妬を焼いてくれるアリスが好きだった。



だった。過去形なのは、今はその気持ちを捨てたから。



元の世界に帰る時に後悔したくないから。



そんなアリスだからこそ、話してみよう。



俺が悲しい顔を見るのが嫌な理由をーーーーーーー。










「はぁ?どっか行けよキモオタ」



「・・・・・・行くか」



元の世界でのある日の昼休み。



俺とその友達二人は弁当をを手に持ち屋上に登る。



一人は日野 優〈ひの ゆう〉女っぽい名前だが立派な男の子だ。



顔立ちは上の中。結構モテる。

この学校外では。



こいつも俺と同じゲームヲタ。

顔に似合わず、ギャルゲ、エロゲをかなり網羅している強者だ。



こいつがみんなから嫌われている(主に男子から)理由は、オタクのくせにモテるという僻みのせいだ。



もう一人の友達は神野 梓〈かんの あずさ〉



女だが、アニメの女キャラにはぁはぁする危ないやつである。



こいつは俺の従妹でもあり、アニメにはまった原因は俺にあるから文句は言えないんだが。



梓は主に女子から嫌われている。

梓本人もキャピキャピしてるのは嫌いみたいだし、梓の女友達は同学年にはいないだろう。



しかし、男友達はわりといるみたいだ。俺が言うのもなんだが、梓はかなり可愛い。そこに男子から好かれて女子から嫌われる理由の大半があるような気がするのだが。



で、二人がオタクというだけでなぜこんなに毛嫌いされているかというと、主に俺のせいだ。



俺の顔は中の下くらいだと自負している。



そんな俺に理事長の母親とイケメンの友達。可愛い幼なじみに、同じくらい可愛い妹とその友達が近くにいるのだ。



俺が初等部くらいの時から僻みの視線はあった。



高学年になると、そんな俺がいじめの対象になるのは当たり前というべきか。



もともと好きだったゲーム趣味を元ネタに、オタクとかねくらとかそういう理由でいじめられていた。



最初は辛かったけど、梓や優から支えてもらってなんとか乗り切れた。



それは学年が上がって、よその小学校から中等部に入学してきた新入生にもひろまり、俺を支えてくれた二人もいじめの範疇になった。



それが尾を引いて、高等部の今でもいじめらしきものが続いている。



その初等部から高等部に上がるまでの間。



理事長の母さん、友達二人、妹。



みんなは悲しい顔をたくさんした。



こんな俺のために。



いつからか、悲しい顔を見るととっても嫌な気持ちになるようになった。



「と、そういうわけなんだが」



のぼせそうになった俺は、湯槽に足だけつけながらアリスに悲しい顔を見るのが嫌なわけを話した。



結果的に見りゃあ俺が嫌だから嫌、と自己中な結論なんだが。



「・・・ダメだよ、帰っちゃ」



アリスも同じように足だけを湯槽につけながら呟いた。



「・・・・・・無理だな」


俺の言葉に憤るアリス。


「なんで!はやとをいじめるような人ばかりいる世界なんて」



「約束があるからな」



アリスの言葉を遮るように俺は声をあげた。



「・・・っ!?」



アリスは面食らったように言葉を詰める。



「妹と、梓との約束。秋葉から無事に帰って、一緒に買い物に行こうって」



他人が聞いたら、どうでもいいことだと思うだろう。


でも、俺にとっては大切な人との大切な約束。



「でも、ぼくははやとに悲しんでほしくない・・・・・」



アリスはそう言って涙をこぼしはじめた。



「俺は、大丈夫だから」



そう言ってアリスの頭を撫でる。



俺が傷つくくらいなんでもない。

でも、そんな俺を気遣ってくれる。

その気持ちがうれしくて。


そんな気持ちを俺にくれたアリスがとてもいとおしかった。



だから自然に、意識もせずアリスの唇に自分の唇を重ねた。



好きだと言ってくれた感謝の気持ちを込めて。


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