36話→気づいた気持ち!
「はやと、何でメイドがいるのかな?」
「いや、俺に聞かれても困るんだが・・・・」
翌日。
昨日はチョコのターンで今日はアリスのターンだ。
そして、昨日と同じくアイリスがいる。
こいつはよっぽど暇なんだろうか。
「アイリス、なんで今日も来てんの?」
俺がため息混じりに質問すると、アイリスは満面の笑みで答える。
「もちろん、はやと様のメイドですから。メイド長の許可も理事長様の許可もありますよ」
いつの間にかアイリスは、俺のメイドになることが決まっていたらしい。
あの、エロ理事長・・・・・・許可を出した理由がわかるからムカツク。
どうせメイドとの展開を期待してるんだろうが、残念だったな。
俺は誘惑に負けないぜ!
ポカッ!
俺がガッツポーズをすると、アリスが俺の頭を叩いてきた。
「いてぇ。アリス、どうしたんだ?」
「はやと、はやとは何でガッツポーズなんてしてるのかな?そんなにメイドが自分のメイドになったのが嬉しいの?」
「いや、そういうわけじゃないんだがな・・・」
「・・・・・はやと様は私なんかメイドに相応しくないと思っているのですか?」
なんでそうなる・・・・・・
しかし俺も成長しているのだ、ここでアイリスの話に乗ったらまたごちゃごちゃしてしまう。
「・・・・・・」
無視してやった。
「うぅ〜、はやと様から無視されてしまいました・・・・・・・この世の終わりです」
俺のベッドに顔を押さえ付けて泣き始めるアイリス。
「あぁ〜はやとが泣かせた〜。はやと、女の子にそんなことしていいのかな?」
嘘だろ?予想外の展開だ。
アリスの罵りとアイリスの泣き声で罪悪感が積み重なっていく。
てか、この二人微妙に名前似ているな・・・・・
「あ〜、アイリス。無視して悪かったな。泣き止んでくれないか?」
「うぅ〜はやと様がはやと様がぁ〜」
「くっ、何でもするから泣き止んでくれよ、まじで」
「本当ですか?」
よし。俺が罪悪感に潰される前に許してもらえそうな雰囲気だ。
ベッドに顔を伏せたまま質問してくるアイリスの言葉に元気よく返事をしてやる。
「もちろん!」
その瞬間、ニッコニコ笑いながらアイリスが顔をあげる。
・・・・・だ、騙された・・・・・・・あれは嘘泣きだったのか・・・
「あ、アイリス、お前、騙したぬわぁっ!!」
いきなり飛び付いてくるアイリス。
これは、デジャブかな?
昨日もこんなことされたよな?
「ちょ、メイド!はやとに何するのかな!?」
アリスは、アイリスの突然の行動に戸惑う。
「ふふふ、はやと様は、“何でも”してくれると言いましたから、今日こそ既成事実を作ろうかと思いまして」
アイリスの言葉に呆気にとられる俺。
既成事実とか・・・・・・まじですか?
「あ、アイリス。そういうことはまだ早くないか?」
俺の言葉に、にやりと笑いアイリス。
「いえ、理事長様からこういうのは早い方がいいと聞きましたので」
理事長ぉ!!?何言ってくれてんだよ!
やばいよ、やばい。
貞操の危機じゃないか。
いや、でも待てよ。
アイリスはメイドといえどかなり可愛いし、最初の相手としてむしろラッキーなんじゃないか?
第一、俺は口で言ってるほどヤりたくないのか?
否、むしろヤりたい。
男性のみんなならわかってくれるよね?
「はやと!まぁいいっか、みたいな顔しないで!!メイド、服を着れぇぇぇぇぇぇ!!」
蚊帳の外に置かれていたアリスの叫びで目が覚めた。
そうだよな。人には倫理ってもんが・・・・
「って、アイリス!いつの間に脱いだんだ!?」
ベッドの上の俺の横に座り、服を脱いでいるアイリスが首を傾げる。
「はやと様は着たままの方がいいんですか?」
・・・・そんな趣味はないが・・・・・・つか、アイリスはよく服を脱ぐよな。
「アイリス、そういう意味じゃなくてだな。アレだよ、つまり」
「はやと、さっきからぼくのこと無視してるよね?」
俺の説得の言葉がアリスに中断される。
二人相手にするのめんどいから、アリスを放置してました、なんて口が裂けても言えないな。
「してない、してない」
「・・・嘘。はやとはぼくの事なんてどうでもいいんでしょ?他の人とはイチャイチャしてるのにぼくとはしてくれないんだ。そうなんだ」
どんどん目に涙を溜めていくアリス。
「いや、してないから。つか、俺はそんなイチャイチャしてないだろ?別に」
「・・・・してるじゃん。現に、今」
論より証拠。
確かに、ややこしい作りのメイド服を一生懸命脱いでいるアイリスの隣にいる俺。
イチャイチャしてるように見えるんだろうな、やっぱり
「それに、何でアリスとイチャイチャしないといけないんだ?別にする必要はないだろ?」
「わかんないけど、嫌なんだもん」
なんじゃそりゃ、と心の中で突っ込む。
「だからってな・・・・・・」
「もういいよっ!好きなだけイチャイチャすればいいんだ!」
そう言い残すと、アリスは部屋から出ていった。
「さぁ、はやと様。邪魔者は消えましたし、ゆっくりと・・・・・」
その後、アイリスから貞操を守るべくなんとか説得するのに2時間を浪費した。
(はやとの馬鹿、馬鹿!・・・・でも何で・・・・・)
でも何でこんなにイライラするか理解できないアリス。
(確かに、はやとは優しいし、黒龍を倒したりして格好よかったし、ぼくのために盗賊団を何人か倒してくれた)
(けど、女たらしで、いじわるで・・・・・)
なのに、はやとが他の女の人とイチャイチャしてるとムカムカする。
その気持ちのわけがわからない。
前、お風呂場ではやとの心の強さを知った時から芽生えこの気持ち。
アリス本人が、その気持ちの真相に気付くのはそれから間もなくのことだった。