30話→フラグ!〜中編〜
「ったく、何であんなイラついてたんだろ・・・・」
俺はなんであんなに怒鳴ってしまったのか、と今更後悔する。
走っていた俺は、気がつくとルミナスと始めて会った森のなかにいた。
特に意識したわけじゃなく、落ち着く場所に、と思っていたらここに来ていた。
前、ルミナスに会った時と同じ木に背中を預けて目を閉じる。
「俺って・・・・最悪だ」
ただひたすらに自己嫌悪。
現実はギャルゲのように楽しいことばかりではない。
それにゲームじゃないからやり直しもできない。
後悔しても遅いこともあるのだ。
・・・・・・よく思い返せば、俺が何か悪いことをしただろうか?
本当に俺が悪かったのか?
確かに、噂の原因は俺だ。
だけど、なんであいつら生徒会に一々文句を言われなきゃならなかったんだ?
いつの間にか、自己嫌悪の気持ちは生徒会に対する苛立ちに変わった。
「ーーーーでよ?ーーーーーーする?」
何か声が聞こえる。
耳を澄ますと、その声が男性であること、さらに復数人居ることがわかった。
(誰だろう・・・・・・)
会話の内容が聞こえるように耳に神経と魔力を集中させる。
俺が使える魔法は、所謂能力強化の類であることがわかった。
耳に魔力を集中させると聴力が上昇。
足に集中させると脚力が上昇、といった風にだ。
「でよ、どうする?うまくばれずに侵入できたが・・・・・・アレを狙いにいくか?」
一人の男が仲間に問い掛ける。
「まぁ、そうだな。まず所有者を探すとこから始めるか。」
リーダーと思わしき人物の声に他の男達がそれぞれに返事をする。
こいつらまさか・・・・・・
そう、2週間くらい前。
生徒が集会所に集められ理事長から忠告があった。
「近くの村を次々に襲っている盗賊団がこの学園の回りをうろつく姿が確認されているから、各々学園から出るさいは気を付けることだ。」
まさか、な。
いくら盗賊団と言えどこの学園に侵入するのはかなり難しいはずだ。
なんせ、学園の敷地を囲むように白く高い壁がそびえ立っている。
越えるのは無理なはずだ。
「でもよ、兄貴ぃ。門番の女、ただ殺すには勿体なかったですねぇ?」
「まぁ、気にすんな。女なんて学園内にはゴロゴロいやがる。好きなのをヤっちまえばいいさ」
下品に笑う兄貴と呼ばれた男。
・・・・・・・・・待て、今門番殺して侵入したって言ってたよな?
なら、やっぱりこいつらは・・・・・・盗賊団だろうな。
おいおい。
フラグはフラグでも、でっかい死亡フラグ立ってしまったじゃん。
どうすんの、俺・・・・・・。
「で?今回の目的の物手に入れたら暴れていいんでヤンスか?」
やんすって・・・使う奴居たのか・・・・・・って関心してる場合じゃないな。
どうにかして逃げないとまじで死ぬかもしれない。
俺は木の影から、声がする方を見る。
男達が円を作ってそれぞれ寛いでるみたいだ。
人数は・・・・2、4・・・・・・12人か。
うん、1対12なんて勝てるわけありませんね。
とりあえず理事長あたりに報告を・・・・。
ガッハッハッハと一人の男が笑いだす。
一人だけ椅子らしき物に座っているのを見る限り、リーダーっぽいな、あいつ。
「暴れていいに決まってんだろ新入りぃ」
リーダーっぽい男が横に座ってる男の頭を叩く。
叩かれているやつが、やんす野郎か。
「この学園の敷地内にいるやつは、皆殺しだ。」
は・・・・・?皆殺し?
皆って、グリムやケンも含めんのか?
その言葉を聞いた俺は段々とムカついてくる。
しかし、その気持ちを無理矢理おさえこむ。
ここで出ていったら、本当に死亡フラグが確定してしまう。
俺はまだ、死にたくない。
「でもよぉ、頭ぁ、ここはその、半竜人〈ドラゴニス〉がたくさんいるんでヤンスよ?俺ぁ勝てる気がしねぇでヤンス。」
そうだよな。
この学校にはたくさんのドラゴニスがいるし、ドラゴンも居る。
何も心配することはないよな。
よく見ると猫耳や、犬耳がはえてるやつばかりじゃないか。
魔力量的にかなり力の差があるだろう。
「ガッハッハッハ、新入りは知らんだろうが俺達にはコレがある」
リーダーっぽい男が、懐から黒い手のひらサイズの玉を取り出す。
なんだあれは?
「それはなんでヤンスか?」
「これはな、黒龍の玉って言ってな、ドラゴニスはこの玉の前では逆らえなくなるんだよ。理屈とかはわからんがな」
「なるほど、ドラゴニスさえ居なくなれば俺らに勝てるような猛者はいないってわけでヤンスね?」
よくできたな、とヤンス野郎の頭をバンバン叩くリーダーっぽい男。
まじか・・・・・・?
ドラゴニスが何も出来ない?
たぶんここの生徒じゃあいつらには勝てないだろう。
実戦経験の数が、修羅場を潜り抜けた数が圧倒的に違う。
どうなるんだ?
みんな、こいつらに殺されてしまうのか?
ケンやグリム・・・・
アリスやお姫様やルミナスも?
理事長を含めてもいい。
理事長はああ見えてちゃんとした教師だ。
生徒を人質にとられたら何もできないだろう。
俺の心の中から死ぬことへの恐怖が薄れていく。
異世界から来た俺を、分け隔てなく接してくれたみんなを無くす痛みに比べたら・・・・
元々この世界に存在してなかった俺が死ぬくらいいいじゃないか。
俺は覚悟を決める。
せめて3人くらいは殺してやる。
俺はゆっくりと木の影から出る。
「おじさん達、俺と遊ばない?」
盗賊団の面々は、目を丸くしながら俺の方を見た。