29話→フラグ!〜前編〜
今回は少しシリアスな展開ですね〜
あれから1ヵ月がたった。
グリムとケンとは今まで通り仲良くしていたけど、ルミナス、アリス、姫様達とはよそよそしくなってしまった。
さらにあの惚れ薬の件以来クラスの女子達からは無視されるようになった。
なんでも目を合わせると犯されるみたいな噂がたってしまったらしい。
たぶんアリス達は謝れば許してくれるだろうが、俺は今の状況でいいと思っている。
元の世界でも女子とはあんまり関わらなかったし、俺的にはこれが普通だと思う。
もてるなんて柄じゃない。
「ん?はやと、お前のペンダントの色おかしくないか?前青だったよな?」
昼休み。
3人で学食で昼飯を食べているとき、グリムが不意に呟いた。
俺とケンは今更か、とグリムを呆れた目で見る。
実は1ヵ月前のルミナスとキスをした時に、青から少し紫っぽい色に変わっていた。
たぶん粘膜接触による魔力吸収とやらでペンダントに魔力が少し蓄えられたのだと思う。
ケンは色が変わってすぐに気づいたから事情は説明していたが・・・・・・
「な、なんだよ二人とも!?俺が何かしたか!?痛い子を見る目で見ないでくれぇ!!」
俺は涙になっているグリムを指差して笑う。
笑いが治まったとこでグリムに事情を一通り説明してやった。
まぁ、そんなこんなで今日の昼休みを終わりを告げる合図の鐘がなる。
こんな日常も悪くない。
こんな日が続いて元の世界に返る日を待つのも悪くないよな。
そう思っていたが、神様は残酷なわけで。
俺に最大級のフラグを用意しやがった。
始まりは、鐘の音がなりやんだ直後に教室に顔を出した生徒会書記長の一言から動きだしたのだろう。
神様に会えたら問いたい。
「なぜ俺なんかにフラグを立たせたいのか?」と。
折っても折っても、次々に現われるフラグは異常としかいえないだろう。
もしかしたら、これが異世界人だけが持つ特殊能力かもしれないが。
「生徒会長がお呼びです。」
そう。
その一言から歯車は回り出した。
「さて。何で呼ばれたかわかるか?」
生徒会長は鋭い目で俺を睨んでくる。
柔らかな金色の髪をしているし、顔もかなり幼いせいかあまり恐くはない。
アリスといい勝負だ。
「いや、わかんないっすけど。」
生徒会長の周辺には、知ってる顔が二人と知らない顔が二人いた。
知ってる顔の一人目は、俺を呼びにくることが多い書記長のミウだ。
で、二人目は少ししか喋ったことないけど、生徒会副会長のユア。
「おい。キョロキョロするな。」
生徒会長から注意されてしまった。
まぁ、これは俺が悪いな。
「すんません。で、何で呼ばれたんです?」
「ん、あぁ。最近、女子生徒の間でとある噂が広まっているんだが・・・・知ってるか?」
あぁ、その件か。
なるほど。生徒会に苦情でも来たのか?
「・・・・・・知ってます。」
「そうか。なら話は早い。どうにかしてくれ。」
は?今なんて言ったよ?
何とかしてくれ?
「はぁ?何言ってんの?何とかしろ?ふざけんなよ!!何で俺が女子達の間で流行ってる噂をどうにかしないといけないんだよ?あいつらが勝手に噂してるだけだろ!?」
俺は思わず声を荒げてしまう。
「あなた!生徒会長に向かって何ですかその口の聞き方は!?」
一人の女子が立ち上がる。
名前を知らない子だ。
「うるっさいなぁ!お前と話してるわけじゃないから!大体生徒会長といっても所詮同じ生徒だよな!?なんで一々口調を丁寧にしなきゃいけないんだ!!」
俺の言葉に涙ぐむ女子。
なぜかわからないが、日頃のストレスが爆発してしまって止められない。
少し強く言い過ぎたかな?とはこれっぽっちも思わないのだ。
「確かに、はやと、だったか?お前の言うことは正しい。確かに私は一生徒だからな。」
生徒会長はそう言うと涙目になっている女子の方を見る。
「しかし、そんなに怒鳴る必要はないんじゃないのか?はやと、お前は女子を泣かせて楽しむような趣味を持っているのか?」
プチン。
やっべぇ。
今のは流石にむかついた。
もう我慢できない。
人を呼び出しておいて、仕舞には蔑む。
誰でもむかつくよね?
この状況は。
俺は勢いよく立ち上がると拳に魔力を溜める。
合宿所ではまだまだだったこの魔法も、練習しまくって今ではかなり上達している。
というか、他の火とか雷とか出す類の魔法は一切使えないからこの魔法を極めるしかなかった。
俺は魔力の籠もったパンチを生徒会室の壁に叩き込む。
すると、ガラスが割れるように生徒会室の壁が砕けた。
俺はそこから外に出ると走りだす。
今はただ、誰にも会いたくない。
会ってしまったら傷つけてしまうかもしれない。
衝動を抑えられない自分の子供さに呆れつつ走り続ける。
生徒会長の止める声が聞こえたがかまうもんか。
俺は校舎を飛び出すと商店街を走り抜ける。
魔力を足に集中させてのダッシュはかなりのスピードが出る。
早く、誰もいないとこへ。
その気持ちがさらにスピードを加速させた。