25話→惚れ薬の驚異!〜休息〜
「ふぅ・・・暇だ・・・・」
とりあえず今の状況で女子に会いたくない俺は、こそこそと消灯時間まだ逃げ回ることにした。
現在人気のない中庭で時間を潰している俺。
消灯時間前のこの時間に生徒がいるわけもなく、ただただ無駄な時間を過ごしている。
実際、アリス達が俺に気があるかなんてわかんないけど念のためだ。
ヤってしまってからでは遅い。
空を見上げると、星がキラキラと瞬いている。
元の世界と違って星が沢山見える。
空気が澄んでるっていいよね。
深呼吸して清々しい気持ちになるなんて、排気ガスとかが多い元の世界じゃあまり味わえない感覚だ。
「・・・・何してる?」
ボソッと呟く声がする。
声がした方を向くと誰かいるみたいだ。
暗くてよく見えないが。
「・・・そっちこそ何してんの?もうすぐ、消灯でしょ?」
「・・・・・見回り」
見回り?安全の為か?つか声的に女の子っぽいがこんな時間に歩いて大丈夫なのだろうか。
「見回りって、何で?」
「・・・私、生徒会副会長だから。」
生徒会か。学校の仕事なら仕方ないね。
「なるほど、お疲れさま。見回り気をつけてね」
俺は女の子から視線を外すと、空を見上げる。
星って、見てて飽きないよね。
「・・・・・・あなた、何してるの?」
声が近づいてくる。
こっちに歩いてきてるみたいだが。
月灯りの下にその女の子が出てくる。
・・・・綺麗だ。
そう、その女の子はすごく綺麗だった。
月灯りの神秘的演出も重なって、俺は胸を高鳴らせる。
その女の子の少し茶髪な感じの髪がサラサラ揺れる。
肩より少し長いくらいの髪を抑えながら女の子は俺の正面に立つ。
「・・・何、してるの?」
無表情な顔に少し怒りの色が見られる。
「・・・・・・・・・天体観測?」
俺は軽く首を傾げながら答える。
「・・・・そう」
女の子は俺の隣に座り込む。
見回りはもういいのか?
「・・・・・・星、好きなの?」
「・・・・まぁ詳しくはないが、見るのは好きだな。」
俺は女の子の質問に答える。
星は見てて楽しいが、星の名前とか覚えるのは嫌いだ。
めんどいしね。
「・・・・そう・・・あなた・・・・・・名前は?」
俺は女の子が結構話し掛けてくることに少し驚く。
だって、この手のキャラってあんま喋らないのが常識だろ?
なんの常識かは聞かないでくれ。
「名前・・・・・・池谷葉雇。」
「はやと?・・・・あなたがはやと・・・・・・」
ん?俺のこと知ってんのかな?
「どっかで会ったっけ?」
女の子は首を横にふる。
「違う・・・異世界人〈にんげん〉は珍しいから・・・・・」
なるほど、そういえば生徒会って言ってたし、珍しい俺のことを知らないはずがないか。
「そっちの名前は?」
「・・・・・・ユア・シュトレイズ・マルプリス」
長いな・・・・
「えっと、ユアちゃんは星好きなの?」
とりあえずちゃん付けしてみた。
「・・・・好き。」
ユアちゃんがニッコリと笑う。
これは、アリスにも勝る笑顔だな。
アリスのを子供っぽくて可愛い笑顔だとすると、こっちは少し大人びていて可愛い笑顔といったとこか。
「そ、そっか。俺も星好きだし。仲間だな」
俺は直視できないユアちゃんの笑顔から視線を逸らしつつ話し掛ける。
「・・・・仲間?・・・・・・なら、友達になってくれる?」
「もちろん!」
すぐさま答える俺。
「・・・・・・・・・よかった。」
何がよかったかわからないが、よかったよかった。
「ん?・・・・・そろそろ消灯時間か?明日も学校だし、そろそろ帰るよ」
俺は立ち上がるとズボンについた埃を払う。
「・・・はやと・・・・・・おやすみ」
「おう、おやすみ。」
俺はユアちゃんに手を振ると部屋に戻る。
(よし、みんな寝てるみたいだな。)
真っ暗で話し声がしない部屋を見てホッと胸を撫で下ろす俺。
風呂には飯の前に入ったしさっさと寝るか。
俺は自分の布団に潜り込むと大きな欠伸をする。
(今日も疲れたな・・・・・・でも、薬の効力が切れるまでまだ時間がある。)
明日は早起きしてさっさと教室に行かないとなぁ。
とか思いつつ、ゆっくりと睡眠を貪り始めた。