16話→お礼!
「つか、アリス。いい加減退けてくれないか?危ないから、色々と。」
俺が頼むとアリスがハッとする。
「わ、わわわわわ・・・・ごめん。ぼく、えと、何してんだろ」
アリスは慌てて俺の上から降りようとする。
ガヤガヤ。
声がかなり近い。
「ご、ごめんね!!」
アリスは俺の上から降りると、自分のベッドに飛び乗った。
(ふぅ・・・・もう少しで俺の中の何かが弾けそうだった・・・・)
ガチャ。
お姫様達が入ってくる。
今までだったらこのままスルーされて、俺とアリス二人で寝るまで喋ったりするんだが・・・・
「あ、あ、あのぅ」
裏返ったような声で誰かが話しかけてきた。
視線を向けると、チョコとリリィが俺のベッドの近くまで寄ってきていた。
「・・・・・何?」
俺がだるそうに返事をすると、リリィがネグリジェの裾をギュッと掴む。
格好的に風呂上がりらしい。
「あ、の、今日は助けて頂いてありがとうございました。」
ペコリと頭を下げるリリィ。
あぁ、黒龍の件か。
「いや、そっちの金髪ツイン・・・・じゃなかった、チョコにも言ったが、自分の身の危険を感じたからやっただけなんだ。だからお礼なんて言われてもなぁ・・・・・」
「で、でも、助けてくれました。」
リリィが瞳を潤ませて俺を見てくる。
か、可愛い・・・・
「うぅ、まぁ結果的にはそうなったかもだが・・・」
「はい、そうなんです!!ほらチョコ。あなたもお礼を!」
リリィに手招きされて渋々といった感じでチョコが頭を下げる。
「き、今日はありがとっ!べ、別にわたくしは、これっぽっちも感謝してませんわよ!?お姉様が頭を下げろと言うから・・・・」
俺はチョコの言葉に吹き出してしまった。
リアルでツンデレの代名詞的な言葉を聞けるとは思わなかった。
「な、何笑ってますの!?お姉様の時だけ真面目に聞いてわたくしの時は笑うなんて・・・・・」
あぁ、あぁ。
また泣きそうになってるし。
泣き虫ツンデレとかどんだけだよ。
「いや、すまん。笑ったのは謝るが、そうだな・・・もっと素直になった方がいいんじゃないか?」
チョコは不満そうに涙を溜めた目で俺を睨む。
「わたくしは、いつも素直ですわ!!」
「・・・・・そうか?」
俺がリリィを見ると、リリィは首を傾げて苦笑した。
「とりあえず・・・・えっと、はやとさん、でしたっけ?」
俺は頷く。
「はやとさん、私たちに何かお礼をさせて頂けませんか?」
「あー・・・別にいらないけど」
「あ、あなた・・・は、はやと、だっけ?えっと、お姉様がお礼をしたいと言ってるんですから、素直に従うべきですわっ!!」
「だから、いらないって・・・・」
お礼の押し売りは迷惑だよね。
「は、はやとさんは、私たちのお礼なんてほしくないんですか?!今まで話しかけてこなかった癖に・・・・なんて思ってるんですね?!」
まぁ、多少は思ってるさ。
助けた・・・・結果的にだけど。
助けたとたんこの態度。
虫が良すぎる。
「お願いします。私たち、ドラゴニスの家にはこういう家訓があるのです。゛お礼は必ず返せ゛と」
なんかその家訓胡散臭いな・・・・
「いや、だからいらな・・・・・・うっ」
いらないと言おうとした瞬間、俺の手をつかんできて、上目遣いに瞳をウルウルさせている。
やめてください。
上目遣いは最強兵器です。あらがえません。
だって男の子なんだもん。
「わ、わかったから、手を離してくれ。」
俺の言葉に、リリィは顔を赤くして手をサッと離す。
流石に恥ずかしかったんだろうか・・・・
「わ、わかってもらえて良かったです。で、では、明日お礼をしますのでよろしくお願いします。」
ペコリと頭を下げてリリィが去っていった。
「さぁて、寝るか・・・・・・ってチョコ、まだいたのか・・・・」
なぜかまだチョコがいた。
まだなんか用あるんだろうか?
「ま、まだいますわ!!それより、わたくしのお礼も受け取ってもらえますわよね?」
「・・・・え??」
俺が首を傾げると、また泣きそうな顔をする。
反則だろ、それは
「わかった、わかった。受け取るから。」
俺がそう言うと、チョコは、ぱぁっと笑って去っていった。
お姫様たちは、今日も別の部屋でお茶会をするらしい。
俺は、やっと一息ついた、と欠伸をすると、布団に転がってアリスの方を見た。
「・・・・女たらし」
アリスはそう言うと、頬を膨らませてそっぽをむいた。
はぁ、なんか疲れた。
俺は目を閉じる。
意識がゆっくりと暗やみに落ちていった。