14話→合宿最終日!
「今日、合宿最終日は実際に敵と対峙して戦ってもらいます〜」
担任のエレナ先生の一言で始まった実践訓練。
場所は合宿所内の闘技場。闘技場と言っても、牧場みたいな原っぱなんだけど
戦闘の順番は名前順。
二人一組、もしくは三人一組で行われる。
敵は、そのチームの合計魔力によって変わるらしい。
最初のグループは、三人一組。
敵は、仮想ドラゴニスだ。
三人とも覚えたばっかりの魔法を使って戦っていたが、やはり実戦不足なのか惜しいとこで負けていた。
三人が気絶、もしくは降参を宣言すると同時に理事長、エレナ先生、合宿所の管理人のおばちゃんが止めに入る。
敵は幻想魔法で作られているので、一定以上のダメージを与えれば消滅する。
「グリム、自信は?」
俺がグリムに聞くとグリムは肩をすくめる。
「わかんね。敵次第だな。」
「そうだね。このクラスの場合低くてもドラゴニスくらいは出てくるかな。」
俺たちのクラスは一定以上の魔力があるやつしか入れない。最低でもドラゴニスって、きついな。
「でも、俺がいるんだぜ?もしかしたら犬か猫出てくるかも」
俺が苦笑しながら言うと、二人とも苦笑する。
「その方が楽でいいや」
ケンの言葉に、確かに、と頷く俺とグリム。
もちろん、俺たちは男子三人の三人一組だ。
「お?誰か勝ったみたいだな」
グリムの一言に、俺とケンは闘技場の方を見る。
そこには、アリスと他2名がいた。
アリスの魔力が高く敵はドラゴンだったが、普通のドラゴンが姫に勝てるはずなくアリスの圧勝だったらしい。
「すげぇ、さすが姫様。」
「だよな。あんなロリな体にどんだけ力秘められてんだよ。」
「確かに。」
俺とグリムが笑っていると、ケンがあたふたしながら俺の腕をつかんできた。
「ふ、二人とも。笑い声あっちまで聞こえてるよぉ!アリスさん、こっち見てるよ!?」
「まじか?」
俺がゆっくりアリスの方を見ると凄い剣幕で俺を睨んでいた。
こぇぇぇ。
次会話した時に何言われるか・・・・。
「はぁ・・・・・なんで俺ばっかり。」
「どんまいだな。」
グリムが笑いながら俺の肩をたたく。
痛いし。笑い事じゃない。
「はやとも大変だねぇ。やっぱりアリスさんとただならぬ関係なのかな?はやとなんか必死だし」
「だから違うって。」
じと目で見るケン。
俺嘘つくの下手だなぁ
「お、二人。ドラゴニスのお姫様の番だぜ?」
闘技場に金髪ツインと、金髪サイドポニーの二人の姿が。
名前は、チョコとリリィだっけか?
「グリムはお姫様好きだなぁ。」
俺が苦笑気味に笑うと、「ち、違うって」と照れるグリム。
どうやらお姫様が好きなのは本当らしい。
「二人とも、始まったよ。」
ケンの一言で、俺たちはお姫様たちを見る。
管理人のおばちゃんが何かを呟くと、お姫様たちの前にドラゴンが顕れた。
王族だけあって魔力は高いらしい。
アリスの時は緑っぽいドラゴンだったが、今度は黒いドラゴンだった。
「黒龍か・・・・ありゃきついな。」
グリムが呟く。
「黒龍ってやばいのか?」
俺の質問にグリムが頷く。
「あぁ。ドラゴンには段階があってな。緑、青、黄が下級ドラゴン。赤いドラゴンが中級、上級が黒と白。最上級が光るドラゴンなんだよ。」
「成る程、じゃあなんで赤のアリスが王族なんだ?」
「あぁ、それはドラゴンの色はそのドラゴンの魔力の高さを表してるんだ。だから元々王族の血筋なら赤でも王族になんだよ。」
ちなみにアリスの敵が緑だったのは、現在のアリスの魔力がまだ未発達だからそうだ。
「なるほどな。なんとなく理解できたわ。」
「うひぃっ!!」
俺とグリムが喋っているとケンが変な声を出した。
原因は黒龍と戦ってるお姫様たちだ。
二人とも見たこともないような魔法を使っているが、あまり致命傷を与えられてないらしい。
「グォォォォォォォォオ」
黒龍は一声吠えると、羽をはばたかせ炎を吐く。
なんとか防いだ二人だが虫の息だ。
「二人とも、早く降参しなさい!これは命に関わることなのよ!?」
エレナ先生の声がする。
どうやら途中で生徒に手助けしようとしても、理事長と管理人のおばちゃんに止められているみたいだった。
「いやですわ!!わたくしたちは王族。こんなやつに負けませんわ!誇りにかけて!ねぇ、リリィお姉様。」
「はい・・・・私たちはドラゴニスですから。負けられません。」
二人の言葉を聞いて俺はいらついた。
(くそが。誇りと命どっちが大事なんだよ)
「ぐっ!!」
黒龍のパンチをまともにくらったリリィが吹っ飛ぶ。
「お姉様!!」
チョコが気を逸らした瞬間、黒龍は見計らったように羽をはばたかせチョコに突進する。
「っっっ!!」
チョコはギリギリで避けたが、風圧に飛ばされ体を地面に叩きつけたみたいだ。
黒龍は勢いにのってどんどん近づいてくる。
もちろん俺たちの方に。
どうやら勢いつきすぎて止まらなくなったらしい。
「おい、ケン、グリム。なかなか危険な状況じゃないか?」
「あぁ、周りの女子が慌ててのたのた動くから逃げられないな。」
「僕、まだやり残したことが・・・・」
「グォォォォォガァァァァァア」
やり残したこと?そうだ、何かないか?俺に今出来ること、そうだ。にんげんの俺にしか出来ないことがあるじゃないか。
俺は体中の魔力を右手に集める。
そして、深く、自分を落ち着かせるために深く深呼吸をする。
(・・・・今だ!!)
俺は全魔力を右手に注ぎ、その手で黒龍を思いっきり殴った。
ドンッ!!!!
大気が揺れる。
黒龍は消えていくが、俺の体は後ろに思いっきり吹っ飛ぶ。
「セーフ、だな。」
「うん。よかった。」
とっさにケンとグリムが支えてくれたお陰ですぐに止まった。
「ありがと、二人とも。」
周りを見ると、泣きそうになってるアリスと偉そうに笑ってる理事長。
あとはポカンと口をあけて俺たちを見ているクラスメイトと、信じられないといった感じでこっちを見ているお姫様たちがいた。
もう1話だけ続けますね。