12話→合宿一日目!
一日目は、今まで習ったことの復習。
理論の組み立てと実技をしただけだが、魔力を予想以上に消費した。
というか、張り切りすぎた。
ケンとグリムもだるそうにしている。
晩飯を食べた後、風呂に向かった。
流石に混浴とかはなく、男女別にわかれている。
「うぅ〜。染みるなぁ。」
俺はグッと腕を伸ばす。
風呂は露天風呂で、どうやら温泉らしい。
疲れた体の芯まで温かくなる。
「だなぁ、ここの風呂は魔力回復の効能もあるらしいぜ?」
グリムが目を細めながら口を開く。
「まじか、だからなんか魔力が満たされている感じするのかぁ〜ってケン、どうした?」
俺とグリムが喋っていると、ケンが顔を真っ赤ににして風呂の入り口あたりを見ている。
俺とグリムがそっちを向くと、タオル一枚しか纏っていない理事長が立っていた。
「ちょ、理事長先生、何してるんですかぁ!?」
ケンが慌てて言うと理事会が指を口に当ててシーッとしている。
「なんだありゃ?静かにしろってか?」
グリムも流石に動揺したのか、苦笑いしながら俺を見る。
「たぶん、な。」
俺が頷くと、理事会が寄ってきた。
「り、りりりりり理事長先生、み、見えます、見えます。」
ケンが慌てふためく。
うぶなやつだなぁ。
「ケン、落ち着け。ほら、グリムもはぁはぁするな。」
俺が二人を静めると、理事長がつまらなそうに口を尖らせる。
「はやと、お前の反応面白くないなぁ。もしかして、女に興味ないたちか?」
「んな、馬鹿な。俺は、女に興味ありまくりだ。」
声が震える。
「成る程、見た目ほど冷静じゃないと。」
理事長がニヤリと笑う。
当たり前だろ。
健全な男子たるものこの状況で冷静になれるはずがない。
俺が無言で理事長を見ていると、うんうんと頷き親指を立てる。
「それでこそ男子だ。ところで、私がなぜここに来たかわかるか?」
俺は首を傾げる。
「知らん。」
「だろうな。よし、こっちに来い。」
理事長は、男湯と女湯を分けている柵の所にいくと、手招きをする。
「どうする?」
ケンが不安そうに俺とグリムを見る。
「行くか。大体予想つくし。」
俺が立ち上がると、「そうだな。」とグリムも後につづく。
「えぇ?何?何があるの?」
ケンも不安そうについてくる。
「よし、一列に並べ。列は乱すな。」
理事長の指示どおり一列に並ぶ。
「よし、柵の隙間から覗いてみろ。」
理事長が柵に顔を近付けると、俺たちもそれに習うように顔を近付ける。
「こ、これは・・・・」
グリムがため息にも似た声をあげる。
そう、その景色はまさに桃源郷。湯気で大事なとこがチラチラとしか見えないが、それが逆にいい。人数的にクラスの半分くらいか。
最初は目をそらしていたケンも、いまやジッと食い入るように見てる。
「・・・・ん?」
何かを引きずる音がする。ケンも気付いたのか、耳を逆立てる。
辺りを見回すと理事長が斧らしきものを何処かから引きずってきていた。
「ちょ、まじかよ」
俺は柵を支える紐に向かって斧を振り下ろす理事長を見て、咄嗟に湯船にダイブする。
ケンもワンテンポ遅れて後に続く。
「へ?お前らどうしーーーーーーー」
グリムが言葉を紡ぐ前に柵が崩れ落ちる。
それを呆然と口をあけて見るグリム。
満面の笑みを浮かべている理事長。
俺とケンは湯船から目だけ出してその光景を見ていた。
「女子諸君。理事長である私からのプレゼントだぁ!」
理事長の言葉に柵の向こうの女子の視線が、少し興奮してテントをはっているグリムの股間に集中する。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁあ」
グリムは悲鳴と共に女子からさらわれていく。
「おい、ケン。普通は女子がキャアとか言ってグリムが殴られまくるんじゃないか?」
「いや、たぶん中等部では男女交際が禁止されてたから、その反動なんじゃないかな?普通って考えたらダメな気がする。」
「・・・・そうか。」
俺とケンは、グリムを哀れみながら見送った。
「ケンぁぁぁぁあ!はやとぉぉぉぉぉお!助けてくぶへぇゃ・・・・」
叫ぶグリムを一人の女子が殴って気絶させる。
女子って恐いね。
「ケン・・・はやと・・・?まさかまだ誰かいるんじゃ・・・・」
グリムの一言で女子風呂が騒めきだす。
俺とケンは、頷き合うと湯気に紛れて風呂場を後にした。
ちなみに、グリムが帰ってきたのは深夜0時を過ぎた頃だった。
理事長が人格破綻者になってしまいました。 まぁ、気にしない。 今後とも応援よろしくお願いしますm(__)m