11話→迷子!
あれから一週間。クラスでは相変わらず女子からの痛い視線を受けつつ、グリム、ケンと友好を深めていた。
チョコを含めお姫様たちとは、あれ以来口をきいてない。
これは俺の目測通りである。
魔法学での理論をもとに実演学で実際に魔法を使うわけだが・・・・グリムたちは中等部でやってたからかなりいい感じだが、俺はさっぱりコツが掴めない。
放課後練習をして、なんとか授業に追い付けるようになった俺は、練習を手伝ってくれているグリムとケンに晩飯を作ってやって、今は一緒に食べているところだ。
「にしても、はやとすげぇよな。」
「何が?」
俺が今日の晩飯、スパゲッティを口に運びながら首を傾げる。
「確かに、グリムの言うとおりだね。僕らが中等部で習った知識とかここ何日かで覚えてたしね。」
「ん、まぁ自慢じゃないが興味あることはかなり早く覚えれるんだよ」
俺は照れたように頬をかく。
ちなみにアリスは別の友達と外に飯を食べに行ってたり。
「てかさ、あれだよな。明日から林間学校だな。」
グリムが嬉しそうに笑う。
そう、明日から二日間魔法力を高めるための強化合宿、もとい林間学校がある。
「まぁ、夜遅くまで喋ったり出来るし、楽しみではあるが、強化合宿だぜ?きつそう」
俺がため息をつくと、ケンがクスッと笑う。
「確かにきつそうだけど、楽しみの方が上かな。」
「だよなぁ。」
楽しそうに笑う二人。
実は中等部の頃は外出、つまりこの学園の街からでることはなかったらしい。
今回の合宿先は学園の街の外、といってもそんなに離れた場所にあるわけじゃなく、歩いて30分くらいのとこにあるらしい。
「さて、なら明日に備えて寝るか?明日は朝7時にここ集合で」
俺がそう言うと、二人とも頷く。
実は現地集合だったり。
「さて、どうするよケン。」
「いや、僕に聞かれても、ねぇグリム」
「いや、俺も、わからん」
集合時間は10時。出発したのが7時過ぎ。
ケンの時計の針は9時を指している。
所謂迷子になってしまった。
「てか、よく迷子になれたな。確か一本道って言ってなかったか?」
俺はため息混じりにグリムを見る。
「いやぁ、あはは」
グリムは乾いた笑いで冷や汗をかく。
この状況をつくりだした張本人のグリムはかなり動揺しているみたいだ。
全てはグリムの一言で始まった。
『俺、近道知ってるから』
まぁ、後は大体予想出来る展開で・・・・。
「まぁ、いいか。道、探すかぁ。ケンかグリムはこういう時に使える魔法知らないの?」
「「知らん」「知らない」」
二人の声が重なる。
「はぁぁ〜。俺も図書館で自学的な事してたけど役に立ちそうなのないなぁ。」
「そんなことしてたのかぁ?よくやるな。」
オタクは興味あることには勉強熱心なんだ、とは敢えて言わない。
「まぁ、な。てかどうするよ?」
俺は苦笑まじりに流す。
「ん?どうした、ケン。」
グリムがケンの方を見る。
「いや、なんかいい匂いが・・・」
ケンが鼻を動かす。
そういや、犬属とか言ってたな。
「よし、その匂いの方に行こうぜ。ここに居ても埒があかないし。」
俺の提案に二人は頷く。
「あぶなかったぁ。」
グリムが大きく息を吐く。
時間は9時32分。
匂いを辿って適当に歩いてたらなんとか集合場所につけた。
匂いは近くに来ると俺でもわかった。
「匂いは・・・・花かな?」
俺が首を傾げると、ケンが答える。
「だね。匂いからして、リズの実かな?」
リズの実は、苺くらいの大きさで、味は桃に近い果物だ。
「いやぁ、しかしケンのおかげで助かったなぁ」
と笑うグリム。
「ホントだな。グリムは後先考えるべきだ。」
俺がやれやれと肩を竦めると、二人が笑う。
「とりあえず、荷物置きに行こうよ。」
ケンがそう言って歩きだす。
俺とグリムもそれにつづいた。