10話→過去!
今回の話は少し暗い感じですね〜。あんまり暗いのは好きじゃないんですけど。
俺が部屋に戻ると、アリスはベッドの上で布団に包まっていた。
どうやら、寝ているみたいだが・・・・。
四人のお姫様はまだ起きているらしく、ベッドがある部屋の隣の部屋で話し声がする。
ちなみに部屋の間取りは、廊下から扉を開けるとゆったりできる居間みたいなとこ、その奥の扉を開けるとベッドがある部屋に出る。
で、ベッドのある部屋から4つくらいの部屋に行ける。
さすが王族部屋と言ったところか。
俺が自分のベッドに腰をおろすと、声がした部屋から金髪ツインが出てきた。
「ん、あぁ異世界人〈にんげん〉さん、帰ってましたの。」
「俺には葉雇って名前があるんだが。」
「・・・・へぇ」
そう言うと、金髪ツインは別の部屋に入っていった。どうやらお茶を飲みたかっただけらしい。
カチャカチャと食器を重ねる音がする。
部屋から出てきた金髪ツインはおぼんの上にティーカップなどを乗せて歩いてきた。
「落とすなよ、金髪ツイン。」
俺がそう言うと、金髪ツインは目をカッと開いて睨んできた。
「金髪ツイン?あなた、わたくしの名前を忘れた、とか言いませんわよね?」
「ん〜?あぁツンデレチョコだっけか?」
俺の言葉に顔を赤くする金髪ツイン・・・・いや、チョコか。
普通に忘れてた、とは言えないから、少しからかうように言ってみた。
チョコは早足でお姫様たちが居る部屋に入っていくと、おぼんを置いてすぐに出てきた。
「あなた、第三王女であるわたくしを侮辱しましたわね。」
ドス、ドス、と足音をたてながら俺の方に近づいてきた。
「お?ツンデレの意味わかったのか?つか、デレてないからツンツンか。」
「な、なんですの?さっきから。わたくしに何か文句でもありますの?!」
俺の目の前に来たチョコは顔を赤くして怒っている。
「・・・・すまん。暇だったからからかってみただけだ。」
めっちゃ本気で怒っているので、正直に答える。
「ひ、暇だからって、そんなこと・・・・わ、わたくしは誇り高いチョコ・トルム・ドラゴニスですのよ?!」
「だから、ごめんって。謝り方が足りないのなら土下座でもするよ?今回は完璧俺が悪いし。」
「・・・・・わかりましたわ。わたくしは、心が広いから許してさしあげますわ。ただし、これからわたくしに関わらないでください。たらしの異世界人〈にんげん〉なんかと仲がいいとは思われたくないですから。」
「・・・・わかった。」
俺が頷くと、チョコは他のお姫様たちが居る部屋に戻って行った。
「・・・・ふぃ、やりすぎたな。ありゃ完全に嫌われた」
俺は一人愚痴ると、ベッドに転がり布団をかぶる。
(やっぱ、予想通りか。)
俺はそっとため息をつく。
(あんな、誇りなんて、偉そうにしやがって。)
苛々しているうちに、俺は眠りについた。
そして、夢を見た。
俺が一番嫌いな者の夢。
名家に産まれた俺の父は、その名前、代々引き継がれる名前という誇りを守るために、俺と妹、母さんを捨てた。
俺はあんな父親が大嫌いだった。
母さんは平気なふりしてたけど、こっそり泣いてたのを俺は知ってる。
学校の理事会という仕事をしているのも、気を紛らわせるため仕事を頑張りまくった結果だ。
たぶん、母さんは父親のことはもう踏ん切りがついてると思う。
妹は小さかったし、父親を憶えてないだろう。
でも、俺は憶えてる。忘れようとしても忘れられない。
だから、チョコの事も嫌いだ。誇りを持つことは悪いことじゃないが、それが過度の誇りだった場合、その誇りが誰かを傷つける事を知らない。
俺は傷つきたくない。だから自分から嫌われるようなことをした。チョコに近づかれないために。
でも、それで良かったのか?
そこまで考えたあたりで頭の中が真っ暗になる。
レム睡眠からノンレム睡眠に切り替わったのだろう。
俺はゆっくりと思考を停止していった。