二十三話:ボスラッシュ
相変わらず透明で見つけにくい上に、もしアイツが本当に入り口にいたスイリョウと同じなら、物理的な攻撃は効かないだろう。
となると……俺には成す術がない。
「どうしたもんか……」
「雷冥の力を使えばいいよ……」
思案に耽っていると、メリシアの腰を飾るリボンへと変態しているチゴウが話しかけてきた。
「なるほど、水には雷ってわけか。メリシア、できるか?」
「申し訳ありませんソウタ様……どうやれば力を行使できるのか分かりません……」
「あ、そうか……」
そうだった。
これまでチゴウもゲンカイも節目節目に勝手に出てきてくれたので忘れていたが、そもそもどうすれば守護武神を召喚できるのか分かっていないんだった。
そもそもチゴウやゲンカイが特別なだけで、ライメイはあの三兄弟のように憑依させるような感じになるのかもしれず、もしそうであってもやり方が不明なのでは力の持ち腐れだ。
「……チゴウ、いい加減に守護武神の力の出し方を教えてくれないか?」
「言ってなかったっけ……ここでなら迷宮内に充満してる魔力が使えるから……念じるだけでいいよ……」
「マジかよ」
そんなお手軽な方法だったの!?
そういえば、チゴウやゲンカイもいやにタイミング良く出てきてたな。
あれはメリシアが無意識にその力に頼ったってことか……!
「そういうことなら……や、やってみます!」
メリシアが目を閉じて深呼吸し始める。
やがてパチッヂチッと静電気が放電されたときのような音が鳴り始めると、スッとその目が開かれた。
「か弱くも強大な盟主の令により、かの存在を滅さん――」
エンゴクの時みたいに変身するといったことはなく、普段の透き通るような声もそのままなのだが、口調と雰囲気が普段のメリシアとはまったく異なるため、すぐにその言葉を発したのがライメイであることに気が付く。
「轟雷撃」
声とともにメリシアが右手をあげる――
ゴゴォォォォンッ!!
直後、鼓膜が破れるかと思うほどの雷鳴が轟き、手から幾筋もの雷が、一度に六階層の部屋の中へと放たれ、高圧電線が鳴っているようなバリバリという音が暫く続き……ようやく鳴り止んだ。
一転して静寂に包まれた入り口の、黒焦げになって煙をあげる扉が、そのすさまじさを余韻として残している。
俺が雷冥を抑えた時に放たれたものなど比較にもならない、桁外れの威力だ。
「ソ、ソウタ様……私……?」
ハッと我に戻ったメリシアが、不安そうにこちらを見る。
「同調し過ぎて記憶を持っていかれたね……はじめは誰でもそんなものだから気にすることはないよ……武神顕現に慣れるには回数をこなすしかないからね……」
どう声をかけたものか考えあぐねていると、チゴウリボンが揺れながらフォローをいれてくれたので、俺もそれに追従する。
「良くやったなメリシア、お疲れさま」
「あ、ありがとうございます……やっと、やっとソウタ様のお役に立つことができたのですねっ!」
褒められたことでようやく不安から解放された様子のメリシアが、目じりに涙を溜めながら満面の笑みを浮かべる。
やべぇ、笑顔に殺される。
死ぬほどカワイイ。
「どれどれ……」
再び部屋の中を伺うと、先ほどまで天井付近を蠢いていた透明のニョロニョロの影はなく、試しに足を踏み入れたところ呼吸も問題なくできるようになっていた。
「どうやらいなくなったみたいだ」
しかし、なぜ入り口を守っているはずのスイリョウがここにいたんだ?
そもそもアイツは本当にスイリョウだったのか……?
「なぁチゴウ、この部屋にいたヤツって――」
「もちろん守護武神の水令ではないよ……まったく同じ性質をもった別個体とでも言えばいいのかな……だから盟約を結ぼうとしても無駄だよ……」
「ふーん……?」
俺の質問を先読みして食い気味にチゴウが答える。
この回答を聞いた時は、まぁそんなもんか……程度で深く考えなかったのだが、実は嫌な予感がしていた。
残り五階層で、残りの守護武神の数も五体――ということは?
次の五階層で炎獄を倒して(ワンパンで終わった)四階層の扉を開けたところで、やはりその予感は的中していたことを悟る。
「今度はライメイか……やっぱこれ、守護武神ラッシュきてるな」
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