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ハランバンジョー  作者: DAISAKU
9/20

8.学園祭2

学園祭 2

イベント会場では3000人は超えるほどの人達が時間延長に落胆していた。理由も開始時間もわからないまま、立って待っているのはとてもつらい。

「REIKOさんはまだ着かないのか」

大声でスタッフに声をかけるイベント責任者の声がステージ裏で響き渡る。REIKOはこの会場に向かっている途中で急に連絡が取れなくなっていたのだ。予定通り2時間前に大学裏口に車が着いたところまでは確認が取れていたのだが、会場運営している会社は1年も前からスポンサーがついて1億円近い金額をかけて、このイベントを計画してきた。

ここで中止にでもなったら大変なことになる。

REIKOは疲れていた。小さいころから歌が大好きで歌手になり有名になりたいと思って

14歳でデビューして22歳まで休みもなく、遊ぶ時間もなく、毎日、歌のレッスン・トーク番組・CM・コンサート、自分が夢見ていた、有名な歌手にはなれたが、こんなにも

大変だとは夢にも思わなかった。世間では、すごくお金も稼げて、うらやましいとは言うけれど、お金だって使う時間がない人間にはないのと一緒、こんな生活から解放されたいと、最近ではいつも思っていたが、自分についてきているスタッフや関係者が私が仕事をやめることで仕事を失ってしまう、そんなこともあり、なかなかやめるとは言えない。

私ができることはたまにトイレに行ってきます。と言って、つかの間の休憩を取ることだ。

大学に着いてから、ちょっと抜け出して、ちょうど雰囲気の良い喫茶店があったから、

ちょっとだけ休憩することにした。


「この店だけどいいかな」

「いいよ。少し歩いて疲れたから休憩・休憩」

「なんか、お店空いてるね。」

「そうだね、あ、たぶんイベントが始まる時間が近いからじゃないかな」

そんな会話をしている隣の席で、居眠りをしている女性がいた、とてもきれいな人で

かなり疲れているようで、熟睡状態だった。

「ねえ。隣の席の女性かなり、熟睡してるね。」

「しっ、聞こえちゃうよ」

「あれ」

しづこが気が付いた。

「この人、たぶんREIKOじゃない」

「え、うそ」

タケシはREIKOの顔はわからないが反応した。

「ねえ、この人、起こしたほうがいいんじゃない。だって外でイベントの遅れでたくさんの人が待っているよ。」

しづこが言った。

「でも、この人がREIKOかあ、きれいだな~」

俊介はじっと見つめて、また、つぶやいた。

「タケシさん起こしてあげて」

「そうだね、」

あまりにも気持ちよさそうな寝顔だったが、タケシは声を掛けることにした。

「すみません」と声をかけたが反応なし、そこで俊介が肩をゆすって

「起きてください。聞こえますか。」

しばらくして、目を開けた彼女は

「あれ、私、寝てましたか?」

のんびりとした声で話してきた彼女に

「あの~さっきから外で大騒ぎですけど、大丈夫ですか」

しばらく、ぼ~としていた彼女の顔がみるみる真っ青になっていった。

「今、何時ですか。」

「えっと、10時30分ですよ」

「きゃー、やばい寝過ごした」

三人とひとりづつ握手して、

「ありがとう、起こしてくれて、また、お礼したいから、連絡先教えてくれますか」

タケシがポケットから素早くカードを出して

「こちらに連絡先が書いてあります。連絡お待ちしています。スーテジ頑張ってください。」

「ありがとう。本当に助かったわ」

さわやかな笑顔で彼女はその場を立ち去った。

「あ~、こんな事ってあるのね。私がちょうどよく、このお店に来たから、REIKOは

イベントに間に合ったんだもの」

「しづこちゃん、タケシがこのお店に入ろうと連れてきてもらったんだよね。でも

彼女、きれいだったよね。」

俊介は相変わらずだ。

「全くタケシは何でそんなにカードなんかすぐに出しちゃって、用意がいつも良すぎるだろ」

「う~ん、人はいつどんなことが起きるかわからないから、普段から用意しているだけだよ、人間ってちょっとした出会いで、大きく人生が変わることがあるから、出会いはとても大事にしたいと思っているだけだよ。」

「さすが、タケシさん」

タケシはほんの一瞬だったが、彼女の表情やしぐさで心身共に疲れでボロボロになっているのを感じていた。タケシの部下でもそういった状態になっている人を何人も見てきたからすぐにわかった。


タケシ達がそんな呑気な話をしている時、REIKOはかつてないほどにマネージャーや関係者、そしてイベントを見に来ていたスポンサーに激怒されていた。

「今まで、どこにいたんだ。トイレに行くと言って、いなくなり、90分近くトイレに

時間がかかるのか」

「今回もそうだが、CMなどでもお世話になっているスポンサーの方たちも、怒って帰るところだったんだぞ」

REIKOは心がおれそうになっていた。普段から忙しく大変な日々を送り、毎日の睡眠時間も3時間を切っていた。いつも助けてくれるマネージャーも今回は怒っていた。とにかく、イベントを成功させようと気持ちを切り替えていた。開始時間が30分ほど遅れたが、イベントは無事完了した。REIKOは始まる前に関係者に怒られはしたが、喫茶店での睡眠時間のおかげでかつないほどにイベントを盛り上げ、最高のステージとなった。


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