7.学園祭
7.学園祭
秋も深まり、大学では学園祭を催す時になった。サークルや部活の学生がいろいろなことを行い、入り口から校舎までお祭りのような賑わいだった。
また、芸能人を呼んでのイベントなどもあり、とにかく、人が多い。タケシはあまり人込みは好きではなかったが、俊介やバイト先のしづこがどうしても来たいというので、お付き合いということで大学内を見て廻ることになった。
待ち合わせ時間にはまだ1時間早いため、少し、自分で見て廻ることにした。
イベント会場では有名な芸能人がくるみたいで、ものすごい盛り上がりをみせていた。芸術大学ということもあり、教室内やホールなどでは所狭しと作品が多くならんでいた。タケシの描いた絵も数枚だが、展示もされていた。大学には美術館もあるが、優秀な学生やOBの作品がならんでいる美術館とは違い、芸術的価値は置いといて、どれも、若い学生が描いたもので躍動感にあふれた物や斬新なスタイルで描かれたものなど、どれも新鮮で、意外と見て廻るだけでも、十分楽しめる学園祭だと思った。
待ち合わせ時間も近くなり、大学の入口に向い、もうそこには俊介やしづこがいて待っていた。
「タケシさんおそ~い」
いつもの甲高い声がきこえた。まだ、待ち合わせ時間10分前だが、
「タケシさん、今日は私の田舎の同級生もこの大学に入りたいから、学園祭で一緒に回りたいと言っているんだけど、一緒にまわってもいい?」
「別にかまわないけど、俊介もいいよな」
「そりゃあ、女子高生が多くなるのは、大歓迎だよ」
「でも、ちょっと、車が事故渋滞で混んでいるみたいだから、遅れるみたいなの」
「かまわないよ、みんなで、少し回っていて、連絡が来たら、合流すればいいさ」
「ありがとう」
「でも、女子高生の友達かー、楽しみだな」
俊介は女性のことになると急に気分が高揚するようだ。
「俊介さん、変な期待しないでくださいよ。その子はすごくいい子だし、私の恩人でもあるけど、口数少ないし、髪型も微妙だし、暗い感じの子で、中学ではいじめられてたぐらいだから、あ、いけない、いじめの件は内緒ね」
「そうかあ、色々あるよな人生は、うんうん」
俊介はうなづいた。
「ねえ、どこから見て廻る?」
「少し、早く来て、全体の状況は確認したよ。これがパンフレット、今の時間から、この場所から無駄なく、イベント時間や見どころを考えると、こんな感じになるよ。」
タケシはテキパキと話し出した。タケシのメモ書きには文字でいっぱいだった。その横に見る場所や滞在時間、そして、イベントの時間を考えたルートが細かく記載されていた。
タケシの話を聞いていた二人は、半分驚いたのと、学園祭ってお祭りなのに、まるで仕事のスケジュール管理をしているみたいだし、タケシは相変わらず、ひとつひとつのことを徹底的に分析するんだなあと思ってしまった。
「さすが、タケシさん、もう、細かいことはタケシさんに任せる、とにかく付いていくから案内をお願い、俊介さんもいいよね」
「そうだな、タケシがこれだけ調べてくれたんだから・・・」
俊介はしづこがタケシに好意を抱いているのはわかっていたが、どうして、タケシばっかり、女性にもてるのか、不思議だったが、こういった気遣いが女性のハートに響くんだろうなと思った。俊介は勘違いをしていた。タケシは分析して、効率化を図ることが、
ただ大好きなだけで、別に女性にもてるためにやっているわけではない。
「ここが、僕たちの作品が展示してあるホール、こっちが俊介で、これが僕の作品だよ、
しづこちゃん、どうかな」
「う~ん、両方ともすごく細かく描けてるね、タケシさんのはまるで写真を撮ったみたい、
でも、俊介さんのは少し形が微妙に違っていて、絵の中の季節の暖かさが伝わってくるみたい。」
「なるほど・・・」
やっぱり、先生と同じことを言われたなあ、なかなか、芸術的センスを磨くことは
持って生まれた感性や才能なのかなあと思った。
そんな時、外のイベント会場から放送があった、
「本日、11時から予定していたREIKOさんの音楽祭ですが、予定時間を延期いたします。
また、時間が決まりしだい連絡いたします。」
「そうそう、このイベントに行こうと思っていたけど、時間がずれてしまったね。」
タケシは少し考えてから、「
「そうしたら、違うところから、廻っていこう。大学内に音楽が聴けて美術品が見れる雰囲気のよい喫茶店があるからそこに行ってみよう」