6.出会い
6.出会い
金曜日は俊介と同じ時間のアルバイトだった。
「聞いたよ、タケシ店長から、外国人の性の対応をしたんだって、あの日、店長からめずらしく電話があって、本当にいい子を紹介してくれたと言っていたよ、タケシは本当にどこにいてもすぐに慣れるというか溶け込むよね。仕事もさ、すぐ覚えちゃうし」
「そうかな、そんなに難しいとは思わないけど」
俊介はタケシの適応能力の高さにいつもながら感心した。
「あ、そうだ、今日はね、お店が終わったら、文也と一緒に家で飲むことになっているんだ。タケシも来るかい」
「文也って玲子の彼氏のたしかうちの大学の油画科だったよね。」
「そうそう、彼もバイト帰りにここに来るから、一緒に行こう」
「邪魔をしては悪いからちょっとだけなら」
タケシはあまり、文也には興味がわかなかった。玲子や俊介は絵の才能がすごくあり、いいやつだと言っているが、玲子の母と話した時は、あまり社交的ではないと聞いていたからだ。バイトの時間もそろそろ終わりの時間が近づき、
もう夜の23時になろうとしていた。
「俊介、来たぞ、もう終わるんだろ。」
真っ白な上着にぼろぼろのジーンズを着ている男がそこに立っていた。タケシははっと気が付いたこの男は来日当日のスマホボーイだ。しばらくするとタケシと目があった。
「あー、あんた、こんなところで何やっているんだ。俊介、こいつだよ。俺のスマホ壊したやつは、」
「え~、違うでしょ。だって、すごい金持ちそうな男だと言ってたじゃない。タケシも俺たちと一緒で貧乏学生だよ。」
何かおかしいといった目つきで近づいてきて、文也はジロリとこちらを見た。やはり間違いないと思っている。
「あんた、前に会ったよね、上野駅で覚えてるよね」
この男は意外としつこい、もし変なことをされたら、せっかくの新しい生活がダメになってしまうかもしれない。そんな時、文也についてきた玲子が
「あんた、いいかげんにしなさいよ。タケシがあんたのいう変な男なわけないでしょ。タケシは本当に貧乏で小さくて安~いアパートに住んでいるんだから、私が保証するわよ。」
タケシはかばってくれるのはうれしいが貧乏、貧乏と言ってくる二人の言葉が胸につきささってきた。
「あん、玲子、なに、こいつのことなんでそんなに詳しんだ。」
「なに、妬いているの、前に言ったでしょ。面白い子が大学にいるって、この子がそうなの、変な関係じゃないわよ」
「俊介なにか文也くんは僕のことが気に入らないようだから、やっぱり今日は帰るよ」
「そうか、悪いな」
「え~、タケシも一緒だって聞いたから来たのにつまんな~い。」
玲子はだだをこねていた。
「やっぱり、おかしいだろ、その言い方、なんか俺といてもつまらないみたいじゃないか。」
「そんなことないわよ。タケシがいたらもっと楽しいと言っただけ」
三人はしばらくして帰っていった。タケシは全く世の中とは狭いものだ、ボーイとこんなところで会うとは、これから、あまり会わないようにしないと、そんなことを考えながら、
タケシも家に帰っていった。
日本での生活も2週間が過ぎ、だいぶ慣れてきた。外はもうすぐ、冬になりそうなほど、肌寒くなってきた。タケシはアメリカではお金を使うことに関して、特に何も考えていなっかったがここ日本では毎日細かい計算をしていた。朝や夜ごはんは自炊するとかなり安くなり、19時すぎに近くのスーパに行くと食べ物の値段が店員が貼る不思議なシールによってどんどん安くなる半額になる食べ物もある。ひとつ、ひとつ買うものを考えて節約するこんな生活を送ることがたまらなく面白かった。