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ハランバンジョー  作者: DAISAKU
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2.アメリカ

2 アメリカ


タケシがアメリカを旅立って2週間が過ぎようとしていた。


主だった会社上層部の人間には、理解してもらい旅立ったはずだったが、多くの社員は社長がいなくなったことを知らず、不安にかられている人間も多くいた。

その中でも、特に不安というより、頭がおかしくなりそうな人間がここにいる。

社長秘書兼ボディーガードのウイリアム・ペギーだった。

(ボディーガードとしては一部の人にしか知らないことだが)

タケシは年がら年中、社長にくっついてくるウイリアムがどうしても好きになれないため、秘密にして日本に行ったことから、ウイリアムは持ち前の粘りで、ありとあらゆる手段で、

行き先を調べていた。

社長の代わりに会社を任されている副社長スティーブンはそろそろ、ウイリアムの執拗な問いかけに心が折れそうになっていた。


「スティーブン、もういい加減に社長がどこに行ったか教えてください。私は、いったい何のためにこの会社にいるのか、わからないじゃないですか」


「まあ、いいじゃないか、君は今、私の秘書として、しっかり働いてくれているし、あ、そうだ、ずっと休みも取っていなっかたし、休暇を取ったらどうだ、休みはいいぞ、心もからだもきれいになって」


「は、スティーブン、なんですか、それは、いままで、会社のために、寝るまも惜しんで、働くことで、我々の思いが形になっていくと言っていたじゃないですか」


「うん・・・そうだったかな」


「もう、がまんできません。教えてくれないなら、こっちにも考えがあります。例の秘密を奥様に話してしまいますよ」


「私には秘密なんか、ないだろう、何をいっているんだ」


「知っていますよ、スティーブンあなたは時間があるときに、日本の萌え系の女の子のアニメを見てますよね」


「・・・なんで、それを知っているんだ」


「私はこの2週間、あなたの秘書をしているんですよ。そんなこと、すぐにわかりますよ」


「さあ、いい加減に社長・社長はどこにいるんですか」


しばらくスティーブンは考えた末に、もう、秘密にするのは無理だし、だいたい、社長はウイリアムのことを最初は素直でいいやつだ、見込みがあると言って気に言ってたじゃないか。

ただ、この男があまりにもまじめなため、どんなことにもプロフェッショナルになろうとする気持ちがほかの人より、いや、多分この世界でもそうはいないぐらいの熱い男だったということだろう。


そして、とうとう、スティーブンは


「いいか、これは上層部の人間しか知らないことだし、けっして、他の人には話してはいけないことだ、約束できるか」


「はい、もちろんです。私がどういう人間かあなたが一番わかっていますよね」


「まあ、そうだな、この会社は社長のカリスマ性、また若くして成功したことが関係しているのか、人を惹きつける魅力というか、そういう気持ちが社員にあるから、この会社はうまく回っているんだ」


「わかっていますよ。社長は若くして、人を見る目があるというか、なんでかわかりませんが、異常なほどに優秀な人材が集まってくる、不思議な方ですよね」


もう一度、スティーブンは考えた結果、話し出した。


「社長は今、日本にいる」


「え・何ですか。日本ですか。仕事ですか。支店を増やすんですか」


「違う、休暇がほしいと言って出ていかれた。何か思うことがあるようだったが」


 「期間はどれくらいですか。いつ帰ってきます。今、日本のどこにいますか。誰と一緒に行っていますか。連絡は取っていますか。・・・・」


「細かく聞いてくるな。フー、おひとりで行かれたし、期間も未定、仕事ではない。どこにいるかも不明だ。とにかく休暇を取っているということだ」


「なるほど、わかりました」


ウイリアムはニコニコして、


「なるほど日本ですか。・・・スティーブン、私はやっぱり、あなたの言う通り、疲れてます。心もからだも明日から、どうやら、休暇が必要みたいです。よろしいですか」


「なに、おまえ今の話を聞いたとたんに休暇がほしいだと。ばればれだろ、日本に行く気だな、だめだ、だめだ、絶対だめだ。だいたい、日本に行ったって、どこにいるかわからないぞ」


「他のものに引き継ぎはしっかりとします」


やはり、こうなるよな。はあとため息をするしかなかった。


さて、タケシの母マリアもウイリアムに負けないくらいタケシのことを心配している一人だった。


自宅はロサンゼルス近郊でとても住みやすい環境でマリアは有名ではないが、プロのピアニストとして、ミュージックスクールや自主的に公演などしており、毎日、それなりに忙しく、普通の主婦とは違う、やはり個性的な生活をしていた。しかし、この2週間、連絡もなく会社に電話しても、


「仕事をしています。細かいことは守秘義務のため話せません」


 の繰り返しだった。


そういえば、最近スクールでも、


「先生、最近すごく厳しくなった」


とか子供に言われて、毎日、イライラしてしまい、どうしようもない気持ちでいっぱいだった。

おそらく子供を持つ親ならこの気持ちはすごくわかるだろう。スクールから帰り、自宅でコウジ

(タケシの父)と食事をしている時だったタケシから連絡が入った。マリアは慌ててスマホを取り、


「どこにいるの?」


大きな声で話した。


「今ね、日本にいる、すごく刺激のある毎日を送っているんだ」

「あなたは、親にずっと連絡もしないで、どこで何をしているの、すごく心配したのよ、わかっているの?」


マリアは目に涙を浮かべて話した。


「ごめん、ごめん、今ね、会社はね、スティーブンに任せて、休暇中なんだ。毎日、元気にやっているから、心配しないで」


ちょっとして、父コウジがマリアのスマホを取り、


「おまえは私たちがどれだけ心配したかわかるか」


あまりにも興奮しすぎて、コウジはのどがつまってしまい、しばらくして


「警察に捜索願いを出そうとしていたんだぞ、会社のイメージがあるから、軽率な行動は取らないようにしていたが、もうがまんも限界にきてたからな」


あ、と気づきコウジはスピーカーホンに切り替えた


「ごめんなさい・・・これからはラインでも細目に連絡するようにするよ、こちらの生活にも、だいぶ慣れてきたからさ」


「慣れてきたって、もう帰ってくるんでしょ」


「う~ん、まだ、無理かな、もうちょっと、こっちにいるよ」


「とにかく、体には気を付けて、私たちは、あなたが元気でいてくれたら、それだけで安心なんだから」


コウジが気づいたように


「今、日本のどこにいるんだ」


「え~と、ここはね上野かな」


「そうか、もし時間があるようなら、上野の近くにある、父さんの家に行って顔でも見せてやってくれ、喜ぶだろうからな」


「わかった、それじゃまた連絡するね」


連絡が切れたあとマリアとコウジは目を合わせて、二人で笑った、お互いがこんなにも自分の子供を心配していることが、うれしかったし、ほっとできたからだ、二人ともこの日夜は長い間の心配から解放されて、ゆっくりと休み寝ることができた。


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