14 告白
浅草の古びた街並みの1角にタケシの祖父斎藤勇作の家はある。
まさに下町の家といった感じで、昭和の木造住宅ではあるが、ところどころに洋風な
部分を取り入れており、敷地も100坪近くあり、庭には池や日本庭園のようなものも
あった。
祖父に勧められ、本当にお茶をすることになった。
タケシは3年ぶりに祖父に会った、アメリカや日本で建築設計の仕事に携わっていた祖父は
現在は引退して、生まれ育った浅草で余生を祖母と送っていた。
茶室のような畳の部屋に通され、4人で座って話始めた。
「タケシ、本当に久しぶりだな。何か、会社を作って大成功したと聞いてるぞ。
今日は日本で観光旅行か?、そちらの方は会社の関係の人か?」
「う~ん、会社とは関係ないよ、まだ、出会ったばかりだよ。でもおじいちゃんもおばあちゃんも
元気そうで良かったよ」
「え~と、こちらがマリさん高校3年生で、こちらがユウキさんだよ。」
二人とも軽くおじきをした。
祖父は二人の顔をじ~っと見て
「なるほどな、どんなことをしてきたかわかないが、二人とも本当にいい顔をしている、良い方と
知り合いになれてよかったな」
「そうかな」
「タケシは毎日、仕事がとても忙しいだろうが、良い人と付き合わないと
本当に悲しい人生になるからな」
祖母がお茶を持ってきてくれた。
わざわざ、お茶をたててくれて、一口、口にしたら、とても口の中でお茶の味が広がり
美味であった。
「あなた、あなたばかり話してないで、タケシは皆さんとお話しをしたいのよ。そろそろ
向こうの部屋に行きましょ。」
「あ~わかってる。でもな、久しぶりに会ったんだから、もう少しだけ話させてくれよ」
祖母は困った顔をして、マリとユウキに軽くおじきをして、部屋から出ていった。
「最近はどうだ。絵は描いているのか」
「そうだね、最近は結構描いているよ。しばらく会社も休みを取っているからね」
「そうか、自分の時間を持つことは大事だからな。妻にも言われたから、そろそろ
おいとまするが、タケシ、毎日忙しいと、よく自分を見失うことがある。そんな人を
わしは、たくさん見てきた、自分が自分でなくなると感じた時は、休みを取れ、
この世界は毎年、日々急速な動きに変化している。水に例えるなら
地面にたまった泥水は急速にかきまわせば、ずっとにごっているが、かきまわすのを
やめれば、表面に澄みきった水が現れる、そうすることで、今まで見えなかったものが
見えてくることもある。とにかく、体を大事ににして、また、タケシが描いた絵でも
見せてくれ、お二人とも今後ともタケシのことよろしくお願いいたします」
祖父は言いたいこと言ったという顔で部屋から出って行った。
「すまないね。祖父はおしゃべりだから。いつもこんな感じなんだよね」
マリは「大丈夫ですよ。おじいさまの話はすごく良かったですよ」
ユウキもとなりでうなずいていた。
「タケシさん、私と話したいと言ってましたが、どんなことですか。」
「う~ん、こんなことは人生で一度も経験したことないんだけど、
僕はマリちゃんとはじめて会ったときのことを思い出し、自分なりに分析した結果
やっとわかったんだよね」
ユウキが「タケシさんは何がわかったんですか。」
「どうやら、僕はマリちゃんのことが気になるというか、好きになったみたいなんだ」
マリはびっくりした顔で
「タケシさん何いってるんですか。今日で2回目ですよ。会ったのは、そんなにすぐに人を
好きになれますか。」
「そうなんだよね。今年で23歳になったけど、女性を今まで、好きになったことも恋人も
そういったことに僕はぜんぜん興味なかったんだけどね。不思議なんだよね。」
「とにかく、これからも時間があえば、また会ってくれるかな」
「タケシさん、私がさっき仲間になってほしいと言ったのは恋人のことではないですよ」
「そうなの?そうだよね残念」
マリとユウキは目を合わせて、ちょっと困った顔をして、
「タケシさん、ちょっとその話は置いといて、仲間になる話を進めていいですか」
「ああ、いいよ。」
「まず、タケシさんは会社がありますが、これからは、できれば、下の方にタケシさんの
仕事を任せて、時間を作ってほしいんです。」
タケシはマリがこれからどんなことをするのか、好奇心で胸がいっぱいになってきた。