10.不思議少女 2
10.不思議少女 2
お店に入り、席についても。しづこは元気がでなかった。
元気がないというより、マリに会えたことがよほど感激したらしい。
しづこがここまで感激するなんて、いったいこの子は何者なんだ。
どう見ても普通の感じの少女だけど、じ~っとマリの顔を見ているタケシにマリはすぐに気づき、
タケシと視線を合わせても反らすことなく見つめ返した。
「なんですか。私の顔になんか付いてますか。見つめられるのはあまり好きじゃないんですけど」
「ごめん、ごめん、しづこちゃんをこんな感じにさせるマリちゃんに驚いたからさ」
その時、俊介がまた、
「あれ、さっきのマリーンズの服着た人たちがお店にいるよ。」
「本当だ、不思議だな、さっきまで門のところにいたのにね、偶然だね」
タケシはこの店は雰囲気がいいから来たのかなと思った。
「マリちゃんはどうしてこの大学がいいのかな」
とタケシが話だした途端、俊介が
「ちょっと待ったー、タケシ~いつもさあ、女子にさりげなく話をはじめるけど、
今回は僕から話したいんだけど」
「どうぞ」
タケシはまた始まったと思った
「マリちゃんは今日は一人で来たの?山梨県からじゃ、大変だったでしょ」
「知り合いに送ってもらいました。道路が混んでいて遅れてしまいすみませんでした。」
マリはいつも落ち着いた話し方をするなあとタケシは思った。
「知り合いというと、彼氏かな、マリちゃん、かわいいし、もてそうだからね」
「彼氏?そんな人いません。」
「え、本当、いないんだあ~」
俊介はとてもうれしそうな顔をして天井を見つめていた。タケシは俊介のことが普段は
とてもいいやつだが、こういうところがいまいちなんだよな。と思いマリに話しかけた。
「マリちゃんはこの芸術大学に入って将来は有名な画家になることが目標なのかな?」
マリは少し考えた表情をして
「有名な画家にはなりません。絵を描くのが大好きなだけです。ただそれだけです。」
「なるほど、でもただ描いているだけじゃ、自分だけの世界になってしまい、つまらないんじゃないかな」
また、マリは少し考えた表情をして
「初めて会った方に、すべてをすぐに話すことはできません。私にもやりたいことはありますので」
マリは厳しい顔をして答えた。
「それより、タケシさんは、学生にはとても思えませんね。私の会った感じですけど
かなりたくさんの方を統率される方で、大変なお金持ちだと思いますけど」
タケシは驚いた、この短時間で見抜かれるなんてこの子どうなっているんだ。
そんな時に隣で聞いていた俊介が大声で笑って
「マリちゃん、それはないない、タケシはね、本当に貧乏なんだよ、貧乏な僕が言うのも変な話だけど週に3日はコンビニでバイトしているし、アパートだって狭いんだよ」
ここぞとばかり話す俊介におまえも貧乏だろと思った。
そんな話をしていたら、しづこが
「タケシさんは食費だって毎日1000円以内で、仕送りも少ないっていっているから」
と言って笑いだした。
「しづこちゃん復活して、良かった」
「ごめんなさい、もう大丈夫だよ、そうだ、マリさっきね、この席にREIKOがいたんだよ。
私が声をかけたから、イベントも無事に終わったんだよ」
マリはあまり興味がないようで、軽く頷いていた。
しづこが元気になったことで、またタケシの案内で、タケシや俊介の作品を見に行くことにした。
マリは二人の作品を見て
「俊介さんの作品はこれから頑張りしだいで芸術的価値が上がる可能性のある作品でとても素晴らしいです。」
「タケシさんの作品は現実的だし、見ていただく方にわかりやすく描こうという気持ちが入っており、芸術センスはありませんが、実用的な絵画だと思います。」
マリは躊躇することなくはっきりと話した。
タケシはまた、芸術センスがないと言われたとがっかりしてしまった。
そんな時に俊介がまた、
「あれ、さっきのマリーンズの服着た人たちがいるよ。」
「確かにまたいるね、なんか僕たちのあとを付けているような感じだね」
5人の20歳ぐらいの男性がまた、近くにいてみんなでおかしいと感じ始めたその時
マリが
「ちょっと、私、あの人達に注意してきます」
と言った。タケシは1人でマリが行くと危ないと思い、
「マリちゃん、僕も一緒に行くよ!」
「大丈夫です。来ないでください。」
と言って走って5人の男のグループに向かっていった。
「マリ、大丈夫かな。タケシさんを追い返すなんてありえないよね」
マリが走って向かってきたので男5人はびっくりして動けなくなっていた。
マリは近づいた途端、急に顔つきが変わり、小さい声で
「おい、何やってんだ」
男たちは硬直して動けず震えていた。
「何でここにいるんだと聞いている」
そして、一人の男が
「ユウキさんの指示で来ました、尾行しているのがばれないように姉さんの安全を確保するように言われました。」
「ばればれだろ」
「それと姉さんはやめろと言ってるだろ、それになんだその服、何度も何度もその名前やめろと言ってるだろ軍隊じゃないんだぞ」
また、違う男が、
「自分達は姉さんに大変、お世話になり、尊敬しています。みんな一生どこまでも付いていく決意です。なんと言われようと尾行はやめません」
はあ~とマリはため息をついて、
「今日は大学を案内してもらっている。頼むから今日は帰ってくれ。もし、今かえらないなら、私のそばにはいさせないし、お前らとは一生、口を聞かないぞ!」
「ユウキには、あとで言っておくから」
男たちはその言葉が効いたようでしぶしぶ帰っていった。
話も済んでマリはタケシ達の方を振り向いた途端かわいらしい顔に変わって、
「丁寧にやさしく話したら、偶然ここに来たみたいで、違うところに行っていただきました。」
と笑って話した。そんな、マリに俊介は
「マリちゃん、勇気あるね。びっくりしたよ」
タケシやしづこもびっくりした顔でマリを見つめていた。
その後、学園祭の見どころなどこの学校の施設や教育内容など時間の無駄なく的確に
タケシは説明案内した、そんなタケシを見て、マリは薄ら笑いをして、タケシに対して、
とても興味が湧いてきていた。