9.不思議少女
9.不思議少女
しづこのスマホに連絡が入った。どうやら田舎の友達が来たらしい、たしか、しづこは山梨県出身だった。しづこの友達も山梨県から東京上野までこの大学に入るために来るとは、よほどこの大学が気にいっているのだろう。どんな子か会うのが楽しみだとタケシは思った。
大学の入り口に一人の少女が立っていた。おもむきは、どこにでもいるようなごく普通の女性で身長は165cm程度で、人の良さそうな感じだった。
「マリー、久しぶり元気だった」しづこはいつもと違う雰囲気で声を掛けた。
「久しぶりね」
随分、年の割には渋い声を出した。
「え~とね、こちらが同じバイトでこの大学の俊介さんとタケシさん二人とも日本画専攻で、すごく絵がうまいのよ。」
少女は目が大きく、ギロっとした、するどい目つきでこちらを見て
「今日はよろしくお願いします。」
「私、しづこと同じ高三で、今度の受験でこの大学に入りたいと思っています。色々と教えてください。」
「任せて、大学の案内もそうだけど、受験のアドバイスなんかもできるだけ教えてあげるよ」俊介はマリがおとなしそうで、ちょっとかわいい感じが、かなり気にいったようだ。
「タケシはね、途中から編入してきたからね、受験は僕に聞いたほうがいいよ」
「タケシさんは無試験で入れたんですか?」
単刀直入に聞いてきたマリに少し驚いたように
「え~とね、」
しばらく考えてタケシは
「僕はね、編入試験を受けて入ったんだよ」
少女はまるで心を見透かしたように
「なるほど、色々と事情があるようですね」
と少し微笑みながら話してきた、そんなマリにタケシはもっとこの子と色々な話をしてみたいと俊介とは違う興味が湧いてきた。
「ところでさ、門のそばに妙な服を着た人たちがたくさんいるけど、何かのサークルかな
朝はいなかったよね。」
俊介は不思議そうに、その人たちを見に行った、よく見ると洋服の胸にmarinesと書いてあった。
「マリーンズだって、あんなサークルあったっけ」
タケシも不思議そうに
「そんなサークルあったかな、多分なんかのイベントとかじゃない」
「まあ、気にしないで、大学を廻ろう」
しづこはマリに会えたのがよほど嬉しかったのか、学園祭、そっちのけで、マリに色々な話をしていた。
「マリ、三年ぶりだね、あの時は、本当にいろいろ助けてくれてありがとう。直接会って
お礼を言いたかったけど、マリはなかなか会ってくれないから、今回、連絡がきて、直接会えて、私本当にうれしい。」
急にしづこは泣き出した。
俊介はいつも気位が高く、年下のくせに偉そうにしているしづこが泣き出したことに驚いてしまい、固まっていた。
「しづこちゃん、大丈夫?」
タケシはこんな感じじゃ、学園祭どころじゃないと思い、
「俊介、ちょっと落ち着くまで、また、あの喫茶店に行ってもいいかな」
「マリちゃん、ごめん、ちょっとお店行くね」
「はい、どうぞ」
みんなでお店に向かった。