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僕は何かまずいことやっちゃったのかもしれない

 薫姉さんは実はソフトウェア開発のベンチャー企業の社長でした。稔は不摂生ではありましたが、前に務めていた大手ソフトウェア開発会社ではエースと言われていた存在でした。

「これらから会社のみんなに貴方を紹介するわ。仕事場を回る感じにして、その時に自分ができそうな仕事を見つけるといいわ」


 完全に猫かぶりモードの薫姉さんが社長室を出ながら僕に言う。ん? なんだろ? あそこで、困った顔して人が集まってる。


「稔さん、ちょっと待ってね?」


 薫姉さんはそう言うと集まってる人のところに歩いていく。


「どうしたの? みんなで集まって?」


「すみません社長。プロジェクトデルタの追い込みをしてるんですが、重要な部分が変な動きをするんです。どうもオープンソースの部分が悪さしてるみたいでわからないんですよ。回避するコードを入れてみても逃げれないし……」


 コードみてもいいのかな? まあ、これから社員になるんだし、ちょっと見ても良いよね……ん?


「あっ、そのオープンソース、使い方によってはバグが発生しますよ? ちょっと見せてもらっていいですか? えーと、バックアップはしていますか?」


 リーダーっぽい人が驚いた顔で振り向いてきたけど、もう声かけちゃったから直しちゃおう。薫姉さんは自分に出来そうな仕事を見つけろって言っていたし……


「は、はい。システム構造設計書は……」


「あ……いいですよ。コードみたら大体やりたいことわかりますし。権利関係が難しくない別のオープンソースをダウンロードさせてもらいますね。」


 とりあえず、椅子に座らせてもらって……うん、やっぱり! こいつは、この使い方するとダメなんだよね。よし、別のをダウンロードして、その間にコードを確認と……へぇー綺麗なコードだなぁ。さすがは勢いのあるベンチャー会社だ。おっ、ダウンロード終わった。さて、これを組み込んでと……あ……ここもこう変えたほうがいいかな? へへ、楽しいな!


 なんか、後ろがザワついてる。「まじかよ」とか言われてる。まずい事しちゃってるのかな? でも、差分チェックすれば何が変わったのかは分かるから大丈夫だよね。あとちょっとで終わるし、こういうのは一気にやったほうがいいし……


「はい。終わりました。ちょっと多めに変えちゃったけど、チェックしてみてください。って、ええ?」


 振り返ると僕の後ろに人だかりができてる。なんかヤバイの? よし、こんな時は微笑んで薫姉さんの陰に隠れよう。目立っちゃうのも良くないし……

 僕はニッコリと微笑んで薫姉さんの後ろに戻ると、プロジェクトリーダーらしき人が画面を確認してる。


「すごい! 全部直ってる。それだけじゃなくて、動きが悪かった部分も良くなってる……社長、その人はいったい?」


 そんな中、薫姉さんはドヤ顔で前に出る。


「みんな! 今日から入社してもらう星田稔さんよ! 私がスカウトしてきたの! 重要な部分だからもう一度言うわ。私がスカウトしてきたの! そうね、彼のランクはアーキテクトよ!」


 ランクって何? こんな簡単な事で薫姉さんが自慢してる? 周りは「あれを見せつけられたら……」「助かった……」とか言ってる? どうなってるの?


「これから彼との契約があるから、質問はあとでね。じゃあ解散!」


 よくわからないけど、薫姉さんの後ろについていって社長室に入ると、いきなり肩を叩かれた。痛い……


「やるやん! 稔! みんなの度肝抜くなんて、おもろさの腕上げたやん!」


 なんかよくわからないけど、薫姉さんは喜んでいるようなので、まぁいっか……


「社長。地を出すのはその辺までにして下さい。しかし、いきなりアーキテクトとは……まあ、あれを見せられたら仕方ありませんね」


「そやろ! そやろ! ええ買い物したわ! これでお客さんも喜ぶ!」 


 僕がよくわからない顔をしてると、秘書の凛子さんがメガネを指一本で正しながら僕の前にでてくる。その仕草をする人はじめて見たよ。


「社長から履歴不問でフリーのプログラマーを雇うと言われたのでどうしようかと思いましたが……星田稔さん。改めまして私は秘書兼人事をやっている林凛子です」


 凛子さんがさっと書類を一枚とって僕に手渡してくる。


「この会社では実力制で給与ランクを決めてます。稔さんのランクはアーキテクト。仕事はプロジェクトの問題対応およびレビューの実施。いわゆるなんでも屋です。契約に不満がなければサインをお願いします」


 へー。面白い制度だなぁ。前の会社とは全然違う。前の会社でもなんでも屋だったし大丈夫かな。契約書かぁ……こんなの前の会社で書いたかなぁ? えーと、アーキテクトは……ね……年収1500万円?

 僕が固まっていると凛子さんはメガネを下にずらしながら上目遣いで恐る恐る聞いてきた。微妙に仕草が可愛いんですけど……


「もしかして、ご不満がお有りでしょうか? しかしながら、まだ実力の一端しか見せていただけてないですし、成果が上がれば契約書に記載どおり成果歩合もつけさせていただきますので安心してください」


 僕は前の会社の年収を知ってるはずの薫姉さんの方を向く。薫姉さんはニヤニヤと笑っていた。

 今回は稔のプログラミング無双の回でした。どこの会社でもエースと言われていた人は仕事が出来るようです。

 用語としてプログラミングで出来たものをコードと呼んでいます。プログラミングコードとかソースコードとか呼びますが、音の旋律みたいな表現であるコードという言い方が良いかなと考えました。

 オープンソースは善意ある人が無料で公開しているコードのことをいいます。バグは虫ではなく、不具合のことです。不具合が発生すると無駄にお金と時間が費やされていきます。

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