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僕は仕事にありつけるみたいです

稔は会社を辞める宣言をして2ヶ月が経ちました。稔は生まれ変わりで努力してきましたが、彼自身がその変化に気付いていないようです。つまり、唐変木の完成です。

「おー勇者、稔よ。よくぞ頑張った。長い修行を経て、汝は生まれ変わったのだ。」


 朝から薫姉さんはテンションが高いよ。朝の散歩から戻ってきて薫姉さんが家にいるのは何でだろう……てか、最近毎日朝ごはん食べに来てない?


 あれから、薫姉さんにダンベルも買わされてトレーニングさせられたし、恋愛映画を何十本も見させられたし、結構大変だったなぁ……って生まれ変わった?


「あのー……薫姉さん?」


「なんや? 稔? せっかく自分が褒めてやったのに文句でもあるんか?」


「いえ、なんか……ゲームのラストシーンみたいな台詞を言っていますが、どうしたんですか?」


「アホか、2ヶ月経ったやろ! 約束通り仕事斡旋したるって言ってんねん。無職のままでいるつもりか?」


 あ……確かに貯金は減ったけど、自炊もしてるし、前の会社から給与もはいってたから、全然気になってなかった。そういえば、僕は無職だったよ。


「じゃあ出かけるで!」


 あれ? 薫姉さん? 会社は? って今日は日曜日か……最近、曜日感覚がなくなってきて怖いよ。



「順子! 来たで!」


薫姉さんは、髪が少し伸びた僕を再び美容師の順子さんの店に連れてきてくれた。


「あら、いらっしゃいま……せ?」


 あれ? 順子さん? 止まってますよ? どうしたんですか? なんか僕をガン見してるし、変な格好してるのかな? 大丈夫のはずなんだけど……


「み……稔さんでしたっけ? ずいぶん変わられましたね?」


 わー。順子さんは優しいなぁ。僕の事おぼえてくれてくれたんだ!


「前はありがとうございます。順子さんのおかげで少し自信が持てるようになってきました。今日は順子さんが似合うと思うカットでお願いします!」


 爽やかマニュアル発動! こういうときは相手の名前を言って、感謝を素直に出しながら微笑むんだったよね。


「私が似合うと思う感じでいいのね! 頑張っちゃおうかな!」


 順子さん嬉しそうだな。僕も嬉しくなっちゃうよ!



「だいぶ、男前になったやんか、稔! 会社はビジネスカジュアルやから服選びに行くで!」


「それならあの店がいいかも!」


 順子さんが楽しそうに言ってる。なんか薫姉さんと順子さんで盛り上がってる? 「どうやったの……」とかいってるけど、僕が何かしたのかな? あ! 薫姉さんは店出ちゃった。僕も順子さんにお礼を言って、お会計を済ませて外に出なきゃ。


「稔! こっちも特訓の成果を見せてもらうで! 変なもん選んだら承知せえへんで!」


 おしゃれなアパレルショップに着いたけど、卒業試験みたいなものなのかな? でも大丈夫だよ。薫姉さんに仕込まれたもんね。対人マニュアル発動! 見ててよ薫姉さん!


「すみません。ちょっとよろしいですか? ビジネスに使えそうな服を探してるんですけど?」


「あっ……はい。それなら、こちら……」


 あれ? お店のお姉さん? 固まってるけど笑顔足りなかったかな? 会話が進まないと僕が対応できないから、こっちから話しかけちゃおう。


「あ……この辺りですか? 凄い良さそうのが多いですね。僕はあまりセンスに自信がないので一緒に選んでもらっていいですか?」


 ふふ、こういう時は、本職にお願いすれば間違えないし、お姉さんも仕事できるし一石二鳥のはず。我ながら完璧の作戦だよ。


「そっ……そうですね。お客様は体格も良いので、ちょっと触って確かめますね」


 あれ? お姉さん? 僕の体を触って……くすぐったいな。なんかうっとりしてるけど、どうしたんだろう? 「うふふ、細マッチョ」とか言ってるけど大丈夫かな?


「お客様なら、この辺りの服が似合うと思いますよ。ご予算はどれぐらいですか?」


 リップサービスまでしてくれるんだ。良いお店だな。そうだ、持ってるビジネス用の服は、ほとんどサイズが合わなくなったから、4、5着はいるよね?


「仕事着としても使いたいので数着買おうと思っています。色々と一緒に見てもらえると助かります。」


 なんかお姉さん、目が血走り出して「金持ちイケメン」とか言ってるけど、大丈夫かな? どこにいるんだろう金持ちイケメン……僕、無職だし……



「なかなか、ええ生まれ変わりやったぞ稔! 明日は出社や! 手続きはこっちでやっといたるから、明日はサインだけや。」


 買い物が終った後、薫姉さんは夕飯で僕の作った料理をツマミにビールを飲んで上機嫌だよ。喜んでもらったなら僕も嬉しいな。大変だったけど薫姉さんの言うとおりに行動してよかったな。色々理不尽を感じたけど、今は薫姉さんに感謝だよ。


 まあ、薫姉さんは腕立て伏せ1000回やれとか言っていたけど、普通の人じゃできないからね……しかし、薫姉さんは僕にどんだけ人間の限界を求めたかったんだろう? たぶん普通の人なら腕立て伏せは100回ぐらいだよ? 僕が100回ぐらいしか出来ないんだから……



 薫姉さんが僕に会社を斡旋してくれるということで、ビジネスカジュアルを着て会社に向かってる。薫姉さん……なんか綺麗なビルに入っていくし? ん? ここってプログラムスタイル? たしか、勢いのあるベンチャー企業で有名なところじゃないのかな?


 薫姉さん! だめだよ。そんなズカズカ入っちゃったら! ほら、怖そうなメガネお姉さんがこっちに来るし……


「社長? この方ですか? 本日から来られると言っていた方は?」


「そうや……じゃないわ。そうよ。凛子さん。こちらが話をしていた。星田稔さんよ」


 ん? 薫姉さんが猫かぶりモードに入った? 凛子さんって言ったっけ? なんか赤くなりながら「細マッチョ」とか言ってるけど、その言葉が流行ってるのかな? って、社長?! 薫姉さん、社長なの?

 普通の人は腕立て100回も大変です。唐変木さを出すのが難しいです。いま、気付いたのですが、ラブコメといいながら、恋愛成分が少ないような気がしています……

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