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僕は再会を果たしましたが……

 稔は静江さん探しを始めました。

 僕が静江さん探しを始めて2週間が経ったよ。定時で仕事を終わらせて、その後に静江さんとよく待ち合わせをしていた上北沢駅の周辺を散歩するのが日課になったよ。その後は時間があるから家まで走って帰る感じだ。探索っていう有酸素運動をしているから、体も更に締まってきた気がするよ。

 美玲と由美ちゃんにはフラれたって思ったけど、何故かメッセージはしてくれるんだよね? 僕と付き合いたくないって言っていたけど、女心ってよく分からないや。そういえば凛子さんも自撮り写真を送ってくれる。ちょっとエロいから吉田君に怒られないか心配だよ……


 今日は金曜日というのに雨が降ってるよ。金曜日に雨って飲み会に行くのも戸惑っちゃうよね。しかも、ちょっと寒いし。まあ、僕は静江さん探しで歩いてるから関係ないんだけど……流石に雨が降ってるから今日は終わりかな? この国道に沿って帰れば家にたどりつく。って、ここは薫姉さんに助けられた場所じゃないかな? 薫姉さんといえば、「アメリカの働き方をみてくるわ」って言って出張に行っちゃったんだよね……


 そんな事を考えて国道沿いの歩道を歩いていると、僕は目の前に傘もささないでフラフラしているポッチャリとした女性が目についたよ。なんか危ないなぁ……って、車道に飛び込もうとしてる?! 


「危ない! そんなことをしたら駄目だ!」


 僕はポッチャリとした女性のところに走っていって、腕を掴んだよ。


「は、離してください! 貴方にとって関係ないことじゃないですか!」


「貴女は馬鹿ですか! 目の前で人が死のうとしているのに止めない人がいると思ってるんですか!」


 その女性の両腕を取って、正面を向かせた……って、静江さん? ちょっとポッチャリしてるけど静江さんだよね? 静江さんも口をパクパクさせてる……


「静江さん?」


「だ、誰のことでしょうか……」


 えー。誤魔化してるよ?


「藤堂静江さんですよね?」


「そ、そんな人知りません……」


 強情だなぁ……


「では、僕の母から貴女の叔母さんに連絡を……」


「申し訳ありません。私が藤堂静江です」


 だよねー。ポッチャリしてるけど、どう見ても静江さんだよ……でも、すごくポッチャリしちゃったね……


「とりあえず、僕の部屋に行きましょう。このままでは貴女は風邪を引いてしまいます。ここからなら僕の家がすぐ近くです」



 今、静江さんは僕の家でシャワーを浴びている。もちろん、それは雨に濡れた静江さんに『体が冷えてるからシャワーを浴びなさい』と言ったのが僕だからだよ。

 結論、着替えの服の事を考えておりませんでした。狙ったんだろう? って僕の心の悪魔が言っていますが無視です。とりあえず、静江さんに僕のトランクスと厚手のTシャツ2枚とトレーニング用のジャージ一式とパーカーを浴室に置いておきました。男物のサイズなら、少しポッチャリしても大丈夫だよね!


 あ……静江さん出てきた。パーカーも着てもらってるけど、ポッチャリしちゃったから胸が……駄目だ、見ちゃいけない……落ち着いて話そう……


「静江さん、落ち着きましたか?」


「はい……申し訳ありません……」


 うーん。沈黙は厳しい……とりあえず、色々聞いてみようかな?


「仕事は?」


「辞めました」


 え? 仕事を辞めちゃったの? 


「病院は行っているんですか?」


「次の検査は1ヶ月後です」


 一問一答だね……でも、答えてくれてるからいいかな……


「家賃は払えるのですか?」


「一応貯金と失業保険でなんとかなるとは思いますが、数ヶ月で切れると思います」


 ストレスで食べるタイプなのかな……さて、状況を整理しよう。ここに無職で貯金が少ない静江さんがいる。僕としては静江さんに前のように元気になってもらいたい。でも、今の静江さんは生きる自信を失くしている……ん? 生きる自信……そうか!


「わかりました。貴女を雇いたいと思います」


「え?」


 ふふーん! 良いこと思いついちゃった。静江さんは案の定、驚いてるね。


「あのままだと、貴女は死んでいました。僕が貴女を生まれ変わらせたいと思います。再就職先も僕が面倒を見ます。それまでは僕が貴女を個人的に家政婦として雇います」


「……」


 あ……俯いちゃった……でも、また死のうとされても困るし、ここは強引に行くしかないよ。


「静江さん!」


「はっ、はい!」


 ビクってなっちゃったけど、少し強引な男は大丈夫って女性誌にも書いてあったから大丈夫のはずだ。一気に持っていくよ!


「もう、貴女は僕の家政婦として雇われました。あと、僕は貴女を助けましたので、貴女は僕の言うことを聞く義務があります。仕事は明日の朝食からです。明日は僕は休日なので8:00頃に来てもらえればいいです。あと、着てくる服とは別にジャージを持参してください」


「わかりました……そうですよね。私……あのままだと、死んでました……」


 うん? どこかで聞いたようなセリフだけど、とりあえず納得したみたいで良かったよ。


「とりあえず、今日はタクシーで帰って、明日の朝に僕の家に来てください。話はそれからです。あと、これを渡しておきます」


「これは……」


「この家の部屋の鍵です。平日に僕が仕事に行った後に、掃除洗濯をしてもらうので必要になります。詳しい話は明日にしましょう。寒かったらいけないのでコートもお貸しします」


 よし、完璧だ! とりあえず帰ってもらわないと、今の胸が強調されている静江さんの状態は、いくらポッチャリしたからといって、僕の精神安定上良くない……


「あのっ!」


「まだ、何か?」


 な……なにか、失敗しちゃったのかな? 大丈夫だよね。訴えられないよね……


「申し訳ありません。なにか袋のようなものを貸して頂けないでしょうか……そ……その……下着を浴室においたままなので……」


「そ……そうですよね! カバンを持ってきましょう!」


 うわーん。せっかく格好良く決められたと思ったのに……最後が締まらなかったよ……

 前回と前々回の話がちょっと重かったので、気分を悪くされた人が多かったのかなぁと心配しています。ただ、コメディなのでコメディギャップを作るのに、どうしても必要だったんです。

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