僕は人を巻き込んでの保身に走りました
薫姉さんは、稔の家に3人(静江、凛子、美玲)を集めようと提案をしました。
僕はもう一度状況を整理してみたよ。薫姉さんは週末に静江さんを家に呼べと言っている。そこに黒崎さんも凛子さんも来るって事だよね。僕は3人とキスをしてるから少なくとも好意を持ってくれていると判断できる。ここから導き出される答えは……修羅場! 絶対に修羅場だよね。うん、無理だ。
「薫姉さん、強制は良くないと思います。そもそも、二人も嫌がると思いますし……」
ここは素直にお断りしよう。3人いるところでどうすれば良いのかわからないよ……
「稔……別に自分は強制をしようとしてるわけやない。でも、稔にとってワイはどういう存在や?」
「もちろん、薫姉さんは僕の恩人ですよ」
「そやろ。そんな恩人の薫姉さんが稔にお願いをしているんやで? 老い先短い年寄りのわがままを聞いてくれてもええんやないか?」
薫姉さん……貴女はまだ40才ぐらいですよね……どう考えても80才までは生きますよね? いや100才かなぁ。まだ人生の折返しにも到達してないじゃないですか……
「どこが年寄りですか! そもそも、僕が良くても二人の意思の問題もあります!」
「私は良いわよ。静江って人に一回会ってみたいし……それに稔の家にも行きたいの」
黒崎さん?! 後ろから援護じゃなくて刺してきたよ!
「美玲さんが行くなら、私も行きます!」
ええ! 凛子さんまで?! そんなぁ……
「と、言うわけやから。稔は電話をしいや!」
これは逃げられない……僕は覚悟を決めてスマホを取り出して、静江さんに電話をかける。出ないで欲しいなぁ、忙しいよね……って、電話に出ちゃったよ……
「静江さん、今電話大丈夫でしょうか?」
『はい、大丈夫です。こんなお時間にどうされました?』
そうなるよね。覚悟を決めるしかないよ。
「すみません。えーと……今週末にお時間を頂けないかと思いまして……」
『え? は……はい。時間は空いています』
「それでですね……」
話をしようとしたら、薫姉さんにスマホを奪われたよ……
「静江か? 薫姉さんや! 元気にしとるか?」
ちょっ薫姉さん! って、手で制されたよ。まあ、薫姉さんと静江さんは面識あるからいいけど……
「また、一緒にご飯食べたくてな。昼の3時ぐらいから……ああ、そや。それでな……他にも会社のメンバーも連れて行くけどええよな? ああ……そうそう……」
「今週で決まったで、二人は大丈夫やろ?」
薫姉さんは、しばらく楽しそうに会話をしてから通話を切ってから僕にスマホを返してくれた。僕の修羅場は今週になるのか……何か死刑台に登る気分だよ……
「ところで社長? 何故、静江さんとご面識があるのでしょうか?」
「そうね。私も聞きたいわ? リンリン、社長の次のご予定は詰まってないわよね?」
え? 二人共、そこに指摘ポイントがあるの? これはある意味チャンスだよ。この場は薫姉さんを生贄にして出てしまおう。
「ちょい待ち! この流れはなんやねん? どちらかというと褒められる立場ちゃうんか?」
僕は社長室をそっと出た。後ろで「逃げんな、助けろや!」とか聞こえたけど、触らぬ神に祟り無しだよ。クワバラクワバラ……
席に戻る前にコーヒーでも買いに行こうとしたら休憩所に、田辺さんと吉田君がいたよ。そうだ! 週末は他の男性も呼べばいいんだ。
「あっ、田辺さんに吉田さん、今週末お時間ありますか? 僕の家に一緒に夕飯でもどうですかね?」
「星田さん、珍しいですね。またホームパーティを開くんですか?」
よし、田辺さんが答えてくれた。いい流れだよ! これで二人を誘えば、僕への集中攻撃もなくなるはず……
「ええ、今回はある程度メンバーが決まっていますが、よかったら一緒にどうかと思って……」
「ちなみに、そのメンバーは誰ですか?」
田辺さん鋭い! でも、嘘は駄目だ……信頼関係を失ってしまう……
「えっと……社長と黒崎さんと凛子さんと……それと前にお見合いをして知り合った子も……」
「お断りします」
え? 田辺さん……そんなぁ……
「いま、助けてって顔をしてましたよ。そんな地雷を踏んでくださいっていう場所にいく人はいませんね」
やっぱり、そうだよね……
「俺、行って良いっすか? 凛子も来るんっすよね?」
吉田君! 君は勇者だよ! これで僕一人が攻撃を受けることにならないはずだよ。吉田君には物理的な攻撃が来るかもしれないけど……そんなことは言ってられない!
「あ! お兄ちゃん、ここに居たんだ!」
「お? 由美ちゃんも休憩っすか? あ、そうだ! 今週末、星田さんがホームパーティを開くっすよ。一緒にどうっすか? 黒崎さんや凛子も来るって……って、星田さん、誘っていいっすよね?」
由美ちゃんの顔が一瞬こわばったけど、笑顔になったよ?
「あと、確かもう一人来るっていってたっすね。たしか、星田さんが前にお見合いをした人でしたっけ? なんか変なメンツっすよね? でも、誘われたんで俺は行くっすよ!」
「ふーん。お兄ちゃん、私もそのホームパーティに出席してもいいよね?」
詰んだ……由美ちゃんの笑顔が怖すぎる。吉田君……君は悪魔だったんだね、一緒に地獄に落ちようか……
このプロットはもともと存在しているのですが、どのように集めるかを考えていなかったので、上手く繋げられてよかったです。




