僕は借りを作ってしまったようです
静江さんは稔がお付き合いを言い出す前に、お試しデートの継続をお願いし、帰ってしまいました。
僕は出ていってしまった静江さんを追いかけることもできず呆然としていた。告白しようとしたのに何が悪かったの? キスの仕方ががっつき過ぎた? 薫姉さんもお似合いだって言ってくれたし、何が問題だったのかが本当にわからない。電話をしたいけど聞くのも怖い……そうだ、電話!
『稔どうしたの? 今日は最悪連絡こないんじゃないかなって思ってたわ。今日のデートは上手くいかなかったの?』
「美玲に聞きたいことがあって電話したんだ」
薫姉さんだとアホやなで終わりそうだけど、友達になった黒崎さんなら何か答えをくれるかもしれない。
『3サイズなら教えないわよ? そういうのはムード出して触ってもらわないと……』
想像しちゃったじゃん! 黒崎さん、言っていることが刺激すぎだよ!
『もう……冗談よ。黙られると、どうしていいかわからないじゃない?』
あ……冗談だったんだ。そうだ、本題に入らないと。
「ごめん。美玲はデートの結果を知りたいって言ったよね」
『確かに言ったけど?』
黒崎さんは僕の事を好きだって言ってくれてるのに、相談しちゃだめかもしれないけど、頼れるのが黒崎さんしかいないんだ。
「デートで映画に行って、その後に一緒に家で食事を作ったんだ」
『え? 家に連れ込んだの! 藤堂さん隣にいるんじゃないでしょうね?』
黒崎さん、僕を尋問した時に静江さんの名前教えたけど、覚えてるんだ……すごいな……
「藤堂さんは帰ったんだ。その……キスをしたけど、今のお試しの関係を続けたいって……」
『それで私に電話かけたの? たしかに稔を一度振ったけど、今は好きだって言ってるのに他の女とのキスの話は酷くない?』
確かに酷いよね……ごめん……
「ごめん。でも、黒崎さんしか相談する人がいなくて……」
『はぁ……もう! とりあえず、話してみて?』
「二人でご飯を作って、薫姉さんと一緒に3人でご飯を食べた」
『なんで社長が出てくるかはわからないけど……それで?』
まあ、そうだよね。薫姉さんが出てくるのは変だよね。
「薫姉さんにお似合いだといわれて、薫姉さんが帰った後にお互い恥ずかしい感じにはなったけど、目が合って……そして、惹かれるようにキスをした。その後、藤堂さんに今のお試しの関係を続けて欲しいと言われて出ていかれた……」
『うーん。聞いててイチャイチャぶりを当て付けられるのが悔しいけど、稔が悪いことはないわね』
え? 僕に悪いことはないの? じゃあ何で?
『どうせ、何でとか考えているんでしょう? 藤堂さんは今の関係を続けたいと言ってるんだし、別にフラれたわけじゃないんだから良いじゃない』
「でも、僕はどうしていいのか……」
『明日』
「え?」
『……どうせ暇でしょ? 明日は私に付き合いなさい。稔が変な相談したバツよ』
◇
僕は黒崎さんに呼び出されて喫茶店にいる。黒崎さんチュニックにパンツスタイルだ。オシャレだよなぁ。
「美玲、どこか行きたいところがあったの?」
「稔って本当に鈍いのね。女性は好きな人と一緒にいたいものなの。昨日、別の女の話を聞いたら、なおさらよ?」
うわー。やっぱり怒っているのかな? 相談したら駄目だったのか……
「昨日の話の続きなんだけどね。本当は嫌だけど、アドバイスあげるわ。これは貸しよ」
「え? 美玲……」
「今日、藤堂さんに電話して、『今の関係のままで大丈夫だから、また遊びにいきましょう』って言えばいいわ。って、なんで私が敵に塩を送るようなことを言わないといけないのかしら……」
黒崎さんの事、惚れ直しちゃいそうだ。すごく優しいや……
「はぁー、私からのお話は終わり! もういいわ。出てきなさいよ」
「お兄ちゃん……」
え? 由美ちゃん? なんでここにいるの?
「稔は由美ちゃんのこと、嫌いになったの?」
「いや、そんな事はないよ。昨日はちょっとビックリしたけど……」
「稔との電話の前に由美ちゃんが私に電話かけてきて、泣きながら相談してきたのよ。だから言ったでしょう? 稔はそんなことで由美ちゃんを嫌いにならないってね」
僕……混乱してるんですけど? 黒崎さんは由美ちゃんの相談も受けてたってこと?
「じゃあ、私は帰るわね。あと二人で甘いケーキでも食べながら、よく話し合いなさいよ。稔、これも貸しだからね」
黒崎さんは帰ろうとしたけど、途中で何か気付いたように戻ってきた。
「そうだ! 稔、忘れていたわ」
なっ! 黒崎さんの唇が僕の口に……黒崎さんの手が僕の顔をしっかり持っていて逃げ出せない……いや逃げたくないような……
「ふぅ。ごちそうさま。稔は藤堂さんともキスしたんでしょう? だから、私も対等じゃないとね。じゃあ、バイバイ」
黒崎さんは颯爽と帰ってしまった。キスが気持ちよかったなぁ……って視線を感じる? あ! 由美ちゃんが涙目で見ている……
「お兄ちゃん、酷い……誰とでもキスするんだ。……お兄ちゃんのエッチ!」
黒崎さんがどんどん男前(女前?)になっていきますね。惚れた男に尽くしてしまう感じなんだと思います。




