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僕は会社をやめることになりました

 自殺をおば様に食い止めてもらった稔は、おば様に家に連れて帰ってもらって、そのまま寝ていたようです。

 僕は目を覚ます。昨日の酒が残っているのか、頭が痛い。あ……誰かいる……黒崎さん? 来てくれたんだ……あれ? 黒崎さん僕の家を知ってたっけ? うーん……


「って! 誰!」


 僕は驚いて飛び起きる! そこには私服姿のちょっと若作りをしたスタイリッシュなおば様がいる。おば様は不気味な笑いをしてきた……こ……怖い……


「誰はないやろ……そうや! 名前言ってなかったな? 自分は『まいたかおる』や。薫姉さんと呼んだらええ。」


「まいた……かおる……ほ……芳香剤?」


 いきなり叩かれた! いい音が鳴った、けど、あんまり痛くない。


「ちゃうわ! でも、おもろいやん! 湿気たツラしていたのにギャグかませるまで元気になったか! で、あんたの名前は?」


 え? 俺の事知ってる人じゃないの? 混乱してきた……


「ほ……星田稔です」


 じ……状況を整理しよう。頭が痛いから、飲み過ぎなのは確かだ。でも、朝から目の前にお互いの名前を知らなかったオバ様である薫姉さんが立ってる。ん……朝?


「か……会社!」


 急いで立ち上がろうとしたら、いきなり叩かれた。痛い……


「あほか! 稔! 昨日会社を辞めるって言ったやろ!」


 え? 昨日? 昨日は……ああ、思い出した! 黒崎さんにフラれたんだった。うわー……死にたくなる……


「なんや? 表情コロコロかえよってからに? おもろい奴やな稔は。これ、稔のスマホやろ? あ……待ちや、自分も電話かけへんとあかんわ。」


 いや、か……薫姉さんだったっけ? なんかいきなり電話かけて「今日休むわ」っていってるし、電話の向こうから悲痛の声が聞こえるし、大丈夫なんかな?


「ほれ? 今度はお前の番や。休むんちゃうぞ、辞めるんやぞ!」


 僕は差し出された自分のスマホで会社に電話をかける。上司でいいんだよね?


「ほ…、星田です。すみません……事情があって会社辞めさせてください……」


 うわー。なんか上司が色々言ってる……どうしよう……勢いでかけちゃったし……


 僕が困っていると薫姉さんが僕のスマホを奪う。


「申し訳ありません。稔の母でございます……昨晩夫が倒れてしましまして……」


 ええ! なにその豹変? どこから声が出てるの? いや……どんどん話進んでるし……「荷物は送ってください」とか言っている。あれ? 終わった? なんかニンマリしてるよ……怖い……


「終わったで! 年休が貯まっとったみたいやから、辞めるん2ヶ月後や。それまで家賃補助つくらしいで。会社のデスクの荷物もここに届く。もう、会社行かんでええようにしといた。2ヶ月もあれば生まれ変われるやろ。そしたら、稔の仕事の面倒を自分がみたる」


 なんかもう、いろんな意味でこの人は凄いよ。まあ、面倒な手続きをしなくて済んだけど……


「ところで、薫姉さん? どうして会社を休まれたんですか?」


「そんなもん決まっとるやんけ。お前の生まれ変わりの手伝いや! 自分もいつもは仕事があるから初日は付いとったるが、あとは指示とチェックだけやで。もう、一度死んどるんやから自分の言うこと聞けや?」


 確かに薫姉さんに助けて貰ってなかったら死んでたし……生まれ変わりか……どうするんだろ?


「とりあえず、かかる費用は稔で出しや! どうせ死んでたら使えなかった金や! 2ヶ月後には仕事にもつけるしな! さあ、朝飯や! なんか作ってんか?」


「え? 作れませんけど?」


「なんや稔、料理できへんのか? 料理できる男はポイント高いんやぞ! まあええわ。出かけるからシャワー浴びて着換えや。昨日の服のままやぞ?」


 あ……そうだった。あれ? 薫姉さんは着換え済み? そういえば同じマンションだったっけ? とりあえず、シャワーを浴びよう……



「外出の準備できました。これからどうするのですか?」


 って何? 薫姉さんのゲスを見るような僕に対する目は?


「今すぐ自分の持ってるシャツとパンツ、全部ここに持ってこい!」


 僕が急いで衣服を持ってきて渡すと、薫姉さんはすごい勢いで衣服を振り分けていく。


「右の山から適当に着てこい! 左の汚物はあとで廃棄や!」


 ええ? 汚物! せっかくイベントとかで買ったものもあるのに……って、なんか薫姉さん、怒ってるみたいだから早く着替えよう。

 本当は会社を辞めるためには、厚生年金や健康保険などの手続きが必要になるのですが、それは小説のご都合主義な部分である程度割愛しています。

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